相続トラブル事案【甥に全ての財産を渡したい】~行政書士試験合格者が解説~

相続

今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回も相続時のトラブル事案をご紹介したいと思います。事案を知ることでよりリアルな相続問題とトラブル解決のイメージが付くようになると思います。(今回の事案は個人情報のため少し加工をしております。)
この記事を読むことで相続の事例を通してより具体的なイメージが付ければと思います。

甥にすべての財産を承継させたい

相談者は生涯独身で、相続人は兄弟だけですが、自宅不動産と預貯金を合わせるとそれなりの財産があるということで、誰に財産を残すか悩んでいました。相談者は数年前に大病を患ってから頻繁に通院しており、病院の送迎は弟の長男である甥がしてくれていました。また、掃除や買い物などは甥の妻が面倒を見てくれているそうです。夕食などを一緒にすることも多く、できれば甥に全ての財産を相続させたいという希望がありました。兄は日頃から交流はなく、そのくせ、自分の財産を狙っている気がすると、しきりに気にしていました。そこで弁護士や税理士に相談することにしました。

弁護士と税理士のアドバイス

弁護士からは、兄弟には遺留分がないため、甥と養子縁組をしたうえで公正証書遺言を残すことを勧められました。

税理士からは相続税が甥は相続人ではないため、2割加算となり、かなりの相続税がかかりますが、養子縁組をすることで加算を受けずに済むことが分かりました。その他、一時払い終身保険の加入や生前贈与なども活用してはどうかとの提案もありました。これらの提案を相談者に話したところ、その場では甥に相談してみると言われ一旦保留となりました。

その後の経過

それから1年を過ぎたころ、甥夫婦が養子になることを承諾してくれたので、公正証書遺言を勧めたいと連絡がありました。ただ、不動産に関しては、甥には子供がおらず、甥本人が父や叔父に遺留分がないからと言って、全ての財産を自分が相続してしまうと、叔父や従兄弟たちと折り合いが悪くなるので避けたいと言っているようです。兄とは確かに折り合いが悪いが、甥の立場を悪くするのであれば、不動産は兄に相続させようと決心したとのことでした。結果、甥夫婦は伯父の養子となり、公正証書遺言で併用住宅は兄に、その他の預貯金などは甥に残す内容となり、一時払い終身保険にも加入し、受取人を甥の妻とする内容となりました。

今回の相談内容のポイント

今回の事案では様々な相続に関する知識が必要となりますので、ポイントを絞って解説したいと思います。

①法定相続人は誰なのか??

法定相続人とはまず配偶者は絶対的に入りますが①子供、②祖父母、③兄弟姉妹の順位となります。今回の場合は通常通りに行けば兄と弟が相続人となるはずです。しかし、養子縁組をすれば、養子は法律上の子供であるため相続人となります。

②公正証書遺言とは?

証人2人以上の立ち合いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口授(口頭で伝える)し、これを公証人が筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせた上、遺言者、証人が各自、署名押印する方式です。
公証人が関与するため信用性が高く、偽造、変造されるおそれはありません。また、遺言の原本が公証人役場で保管されます。遺言を残すことで法定相続分に関わらずに、相談財産を自由に分配することができ、兄に不動産を相続することが出来ます。

③遺留分は兄弟姉妹にはない?

一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。 亡くなった方(被相続人)は、自身の財産の行方を遺言により自由に定めることができますが、被相続人の遺族の生活の保障のために一定の制約があります。 これが遺留分の制度です。しかし、兄弟姉妹を除くこととなっています。

④相続税は法定相続以外は2割加算

相続税の2割加算→被相続人の配偶者および1親等の血族以外の人(兄弟姉妹等)が相続や遺贈によって財産を取得した場合、各相続人の産出額に2割加算されます。

⑤生命保険は相続財産になるのか?

生命保険の死亡保険金は受取人が請求することができ相続財産の対象とはなりません。つまり受取人が指定されている場合には、受取人固有の財産となり、遺産分割の対象にはなりません。
遺産分割協議への記載が不要であり、相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることが出来ます。
ここで注意しなればならないのは、相続税を算出津須場合のみなし相続財産として含まれるため金額によっては相続税が発生することがあります。

まとめ

今回の事案では相続財産を法定相続人以外の甥に相続させたいという相談者の気持ちがすごく大切なことが分かります。その上で、相続に関する知識を駆使して相続者の願いを叶えることが出来るようになりました。また甥の意見を聞くことにより、関わりの少ない兄に対しても相続分配ができ、親族トラブルが回避でき円満な相続分配が可能になったように思います。

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