【遺言書の財産目録とは】~行政書士試験合格者が解説~

相続

今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回は相続人にどのような遺言書を残すことが出来るのか、財産をどのように分配するのかを決める遺言書について解説しました。今回はその遺言書などに添付する財産目録について焦点を当てて解説したいと思います。
この記事を読むことで自筆遺言書に添付する財産目録の書き方について知ることができ、自分で財産目録を作成できるようになります。

財産目録とは、遺言書の添付資料で被相続人の財産の内容がわかるよう一覧にしたもののことをいいます。現預金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産についても記載することとなっています。財産目録には、相続財産の名称だけでなく、種類、数量、所在、価額など特定できるような情報を書き出します。
財産目録を作成すると、遺言書の作成、遺産分割協議の円滑化、相続税の申告書に添付することができます。

財産目録の作成は義務ではありません
遺言書の作成に「長男Aに預貯金を相続させる」「友人Bに金銭を遺贈する」でも問題ありません。しかし遺言書のない財産はすべて、相続人が遺産分割協議で話し合って分割する範囲を決めることになります。ここで財産の状況全体を相続人それぞれが確認できなければ、話し合いができません。
また、相続税の申告書でも必要です。遺産総額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額を上回ったら、相続税の申告が必要です。この相続税の申告書には、プラスの財産とマイナスの財産をもれなく記載する必要があります。
そのため、財産目録があれば、遺産分割協議を速やかに行え、相続人の相続税処理の負担を軽くすることができます。

財産目録には、法律上特別の定めはありません。相続財産の状態を具体的に明らかにできればいいのですが、ここでは2点ポイントをご紹介します。

財産目録には被相続人のプラスの財産とマイナスの財産をもれなく記載します。複数の財産があるケースでは、細かく情報を載せないと特定できないおそれがあります。例えば不動産ならば地番や家屋番号、預貯金なら金融機関名、支店名、口座番号など具体的に示せるものは具体的に書き、特定しやすくします。

相続税の申告で必要なのは相続税評価額です。つまり、財産の持ち主の死亡時点での評価額を使います。ただし、作成時点が生前なら、記載するのは生きている間の評価額となるはずです。生前に評価したものなのに、評価時点を明確にしないと、間違えた申告や遺産分割をしてしまうことになりかねません。

財産目録の例

実際の財産目録の記載例を見てイメージをつけましょう。

細かく見てみましょう。まず誰がいつ作成したのかがかかれています、

次に不動産の土地建物について、所在地などの登記簿で確認できる情報が記載されています。また、評価額がいつ時点のものなのかが分かります。

最後に預貯金や有価証券、動産についても書かれています。

財産目録をつくるときは、次の点に注意しましょう。

定期的に見直しをしましょう。定期預金の解約や不動産の名義変更や売却などで財産の価値が変わっていることがあります。状況に応じて見直しをしないと、相続のときの争いのもとになりかねません。

「財産目録があると相続税の申告の手間が省けたり、遺産分割協議を行いやすくなったりする」というメリットがあります。ただし、注意したいのが評価額です。特に不動産は注意しなくてはなりません。
建物や土地といった不動産は、相続税の申告では、路線価や固定資産税評価額を基準に評価します。この評価額は通常、公示価格の5割から8割程度です。一方、実際の取引価額は、公示価格よりも高かったり低かったりします。つまり、相続税で申告する金額と実際の取引価額に違いが生じます。
財産目録を相続税の申告と遺産分割協議の両方で使うのならば、相続税評価額の他、実際の取引価額も参考にメモしておくとよいかもしれません。

名義預金とは、口座の名義こそ子や孫であるものの、実質的には親や祖父母が管理している預貯金のことをいいます。よかれと思って親族名義で口座をつくっても、通帳や印鑑を管理しているのが被相続人であれば、その預貯金は名義人のものではなく、被相続人のものとなります。被相続人本人名義以外の預貯金の口座があるなら、それも財産目録に含め、きちんと遺産分割協議を行いましょう。

株の記載に注意

株を分割相続する際、株券を〇〇ずつ相続すると記載すると、共有持分を〇〇ずつ保有することになります。それでは分割出来ないため困ります。株は株数を〇〇ずつ分割すると記載しましょう。そうすることで、均等に分割することが出来ます。また端数が出る場合は誰に端数を相続するかも記載するといいでしょう。

なお、株券の名義変更して相続するか、株券を換金して分配するかは税金負担の面で変わるため、税理士に相談することをお勧めします。株の名義変更後に相続する方が良い場合が多いと思われます。

まとめ

相続時の財産目録がないと、相続人たちは一から財産を調査することになります。そのため、できるのであれば生前に財産目録を作成し、定期的に見直ししてもらえていると、いざ相続が発生した際に分割の協議や相続税の申告がスムーズになります。また、被相続人は自分の資産を改めて見直す機会になるかもしれませんね。

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