被相続人のために頑張った分は相続請求できます!~行政書士試験合格者が解説~

民法

今回の記事も、相続にまつわる民法の知識について今までの記事で詳しく紹介していなかった内容について記事を書きたいと思います。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
ではさっそくですが、今回は相続時における寄与分の請求と特別寄与料について説明していこうと思います。寄与料は相続人が被相続人に対して特別な貢献をしたことによる相続財産に加算させることができます。次に特別寄与とは相続人ではない被相続人の親族で,被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者が相続人に対し,寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができるというものです。

寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した人が、その度合いに応じて相続分に加えて受け取れる相続財産のことです。

例えば、父Aには子BとCがいたとします。父Aは認知症を患い、子Bが長年自宅介護していました。父Aが亡くなり遺産1000万円が残りましたが、法定相続通りだと子BとCは500万円ずつ分けなければいけません。

しかし、子Bが父Aの介護をしていたのに、遺産は半分ずつ分けるのは不公平であるため、寄与分として相続財産にプラスしてもらうことができます。

寄与分を請求できる要件

寄与分を請求するには7つの要件が必要となります。

①寄与行為が相続開始前であること

認められる寄与行為は被相続人の生前に限ります。葬儀代や不動産の維持管理費などは含まれません。

②その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠だったこと

被相続人が介護の必要となり、人の手を借りないと生活できないため家族が介護をしていたなど、寄与行為がないと成り立たない状況であった必要があります。

③特別な貢献であること

寄与行為は身内の助け合いのレベルを超えて、特別な貢献でなければいけません。

④被相続人から対価を受け取っていないこと

寄与行為を無償で行っていたことも寄与分の必要条件です。

⑤寄与行為が一定期間以上であること

寄与行為は一時的ではなく継続性がないと認められません。明確な期間はありませんが、数ヶ月程度ではなく数年以上あったことが必要です。

⑥片手間ではなくかなりの負担があったこと

寄与行為が多大な手間と労力がかかっていた必要があります。具体的には「介護のために仕事を辞めた・勤務時間を大幅に減らした」など、自分の生活を崩してまで貢献していた状況が必要です。

⑦寄与行為と被相続人の財産の維持・増加に因果関係があること

寄与行為のおかげで被相続人の財産を減らさずにすんだ、または財産が増えた事実がないと寄与分は認められません。

特別寄与料とは

特別寄与料制度とは、被相続人の介護などを無償ですることによって相続財産の維持・増加に貢献していた相続人以外の親族が、相続人に対して寄与に応じた金銭を請求できる制度です。
なお、特別寄与は親族に限られていますので、内縁の夫や妻などについては対象となりません。 

特別寄与料が認められる要件

特別寄与料を請求するための要件は以下の3つです。

①請求権者が被相続人に対して療養看護などの労務提供をしたこと

被相続人の介護をしたり、被相続人の事業を手伝うなどが想定されます。単に被相続人に対して生活費を渡していただけでは足りません。

②被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をしたこと

単に財産の維持・増加に寄与しただけでは足りず、毎日献身的に介護をしていたために老人施設の費用を支出せずに済んだ場合など、親族に通常期待される程度を超える特別な貢献をすることが必要です。

③無償であることです。

例えば対価を得て介護していた場合などは、既に寄与料を得ていることになるので、特別寄与料は請求できません。ただし、労務提供に対する対価として著しく低い利益しか得ていなかった場合は、特別寄与料は請求できます。

特別寄与料の計算方法

被相続人Aが亡くなり、相続人である子BとCに対し、Aを3年間毎日介護してきたAの弟Dが特別寄与料を請求した場合、特別寄与料の金額は家庭裁判所が決定となりますが、療養看護型では「日当額×療養看護日数×裁量割合」という式で計算されることになります。

日当額は、介護保険制度を参考として要介護度に応じて5000円~8000円とされることが多いと言われています。裁量割合は、親族にはもともと扶養義務があることから、職業介護者と比べて費用を低額にするために考慮されるものであり、寄与分における計算と同様0.5~0.7とされるものと思われます。

仮に日当を5000円、裁量割合を0.7として計算すると、弟Dは、子BとCに対し、5000円×365日×3年×0.7=380万円程度を請求できることになります。

ただし、特別寄与料の額は、Aが死亡した時に有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません。

特別寄与料は、被相続人が亡くなった後、相続人に対して請求します。請求を受けた相続人は、法定相続分に応じて特別寄与料の額を負担します。

特別寄与料の請求手続き

相続人との協議を行なう場合と、家庭裁判への調停申立を検討することができます。

相続人との協議

まずは相続人との間で協議を行ないます。自分がどの程度療養看護などをしてきたかなどについて、具体的に説明する必要があります。そのため、普段から介護状況について日記にメモするなどの証拠があるといいでしょう。話し合いがまとまれば合意書を作成します。

家庭裁判所への申立て

相続人との協議がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に対し、特別の寄与に関する処分調停を申し立てを行います。調停では調停委員が間に入って協議を行ないますが、調停でも協議がまとまらない場合には、審判に移行し、最終的に裁判官が金額を決定します。 

特別寄与料の請求期限

特別寄与料は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始時から1年を経過したときは請求できなくなります。

まとめ

今回は被相続人に生前貢献したことに対しての寄与分請求について解説しました。相続人には相続財産が加算分配され、相続人以外の親族は特別寄与料の請求が可能です。しかし、他の相続人の相続分が減るため、揉めることもあるようです。その場合は、弁護士に相談しましょう^ ^

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