【任意後見について】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回は様々な後見人について説明しました。今回はその中で契約の種類として紹介した任意後見について詳しく解説していきます。
この記事を読むことで任意後見人について理解が深まります。

任意後見とは

任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、将来的に任意後見人になる人との間で、公正証書で任意後見契約を締結するところから始まります。やがて本人の判断能力が低下し、任意後見人の後見事務を監督する「任意後見監督人」が選任されたら、任意後見がスタートします。
つまり任意後見契約は、将来、判断能力が低下したときの備えとして結ぶ契約です。

手続の流れ 4つのステップ

任意後見制度の手続きの流れを、4つのステップに分けてご紹介していきましょう。

1.任意後見受任者を決める

任意後見人になるためには資格は必要ありません。家族や親戚、友人、弁護士や司法書士等のほか、法人と契約を結ぶこともできます。
また、任意後見人は複数選ぶことも可能です。ただし、以下に該当する人は任意後見人になることができません。

・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
・破産者
・行方の知れない者
・本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
・不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

 2.任意後見人にしてもらいたいことを決める

次に、本人に代わって任意後見人にしてもらいたい契約内容を決めましょう。
契約内容を考える際には、たとえば、身体が動かなくなったら○△施設に入所希望、かかりつけ医は○×病院、墓参りは年○回行きたいなど、将来の生活に関する具体的な希望や金額等を記載したライフプランを作成するとよいでしょう。任意後見人にどのような事務を依頼するかは、契約当事者同士の自由な契約によります。
任意後見契約で委任することができる(代理権を与えることができる)内容は、財産管理に関する法律行為と、医療や介護サービス締結といった療養看護に関する事務や法律行為です。

3.任意後見契約は「公正証書」で締結する

任意後見受任者、任意後見契約の内容が決まったら、本人と任意後見受任者の双方が、本人の住居の最寄りの公証役場に赴き、公正証書を作成します。事情により本人が直接公証役場に出向けないときは、公証人に出張してもらうことも可能です。
公正証書とは、公証役場の公証人が作成する証書のこと。公正証書によらない任意後見契約は無効となりますので注意しましょう。また、公正証書の作成に係る費用は、以下のとおりです。

公正証書作成の基本手数料11,000円
登記嘱託手数料1,400円
登記所に納付する印紙代2,600円
その他本人らに交付する正本等の証書代、登記嘱託書郵送用の切手代など
【参考】厚生労働省「任意後見制度とは(手続の流れ、費用)」詳しくはこちら

4.任意後見監督人の申し立てをおこなう

本人の判断能力が低下して後見人の活動が必要になった場合、本人の住所地に所在する家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申し立てをおこないます。
任意後見監督人の役割は、本人が指定した後見人が任意後見契約の内容に従い適正に役割を果たしているかを監督することです。家庭裁判所は任意後見監督人に後見人の活動をチェックさせることにより、間接的ではありますが本人の保護もおこないます。
なお、任意後見監督人に関しても、本人や親族の希望する候補者を選ぶことが可能です。しかし、必ずしもその希望が通るわけではないので注意して下さい。
申し立てが可能なのは、本人か配偶者、4親等以内の親族、もしくは任意後見受任者です。ただし、本人以外の申立てには本人の同意が必要となります。
申し立てをおこなう際は、申立ての手数料として収入印紙800円分と登記手数料として収入印紙1,400円分その他郵便切手が必要です。また申立書とあわせて、以下書類の添付が求められます。

・本人の戸籍謄本(全部事項証明書)、住民票
・任意後見契約公正証書の写し
・本人の成年後見などに関する登記事項証明書
・本人の診断書
・本人の財産に関する資料(通帳の写し・不動産登記事項証明書など)
・任意後見監督人の候補者がある場合にはその住民票もしくは戸籍附票
など

【参考】厚生労働省「任意後見制度とは(手続の流れ、費用)」詳しくはこちら

任意後見監督人が選任されると任意後見契約の効力が有効となり、後見人による支援が開始されます。

任意後見人へ支払う報酬はいくらかかる?

報酬の額、支払方法、支払時期などは、本人と任意後見受任者との間で自由に決めることができます。法律上、特約のない限り任意後見人は無報酬です。そのため、報酬を支払うためには、公正証書に報酬規定を盛り込んでおく必要があります。
また、報酬の支払時期は、規定がなければ任意後見事務終了後となりますので、報酬を定期的に支払うためにはその旨を規定に盛り込んでおきましょう。
報酬の相場は、任意後見人が第三者の場合月5,000円程度から3万円程度が一般的です。
なお、任意後見事務を行う際に必要となった交通費等の経費や、本人に代わって支払う医療費、介護サービス利用料などは、本人の財産から支払うことができます。

任意後見契約が終了するとき

任意後見契約は、本人または任意後見人が死亡・破産すると契約は終了します。また、任意後見人が認知症などで被後見人等になったときも同様です。また、任意後見人に不正行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は任意後見人を解任することができます。
解任請求ができるのは、任意後見監督人、本人、その親族または検察官です。

契約内容の変更や契約をやめたくなったときは

任意後見契約の内容を変更することは可能です。どこを変更するかにより手続は異なりますが、どのような場合でも公正証書で契約します。
また、任意後見契約の解除は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前か後かで、手続きが異なるので覚えておきましょう。
選任前:本人または任意後見受任者は、いつでも契約を解除することができます。ただし、公証人の認証が必要です。
選任後:正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、契約を解除することができます。申立てができるのは、本人または任意後見人です。

まとめ

今回は法定後見とは違い、判断力が低下する前に結ぶ、任意後見制度についてご紹介しました。自分の資産を適切に管理してもらえるように事前に協議を進め、細かな契約を結ぶことで安心して老後を迎えることが出来るようになります。

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