今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は、成年後見制度の審判の中で家庭裁判所が成年後見人候補者を選任する際の調査について解説します。家庭裁判所に成年後見人の候補者がいれば申立書と「後見人等候補者事情説明書」を提出することになります。今回はその調査について解説したいと思います。
今回の記事を読むことで成年後見人の選任される調査内容について知ることが出来ます。
成年後見人等候補者に対する調査
「成年被後見人(せいねんひこうけんにん)」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、成年後見制度を利用して保護または支援を受ける人(本人)を指します。そのため成年後見人は、本人に代わって、本人の財産を適切に管理します。契約を締結したり、預貯金の管理等をしたりすることによって、成年被後見人の財産上の利益を保護することが業務となります。成年後見人の業務が加減だと、思わぬ形で,本人の財産を損ってしまい,横領など不正問題にもなりかねません。そのため成年後見人の選任は重要なものとなります。
民法では
(成年後見人の選任)
第八百四十三条 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
と規定されています。
申立ての記載事項
では家庭裁判所が成年後見人等を選任する際の考慮すべき事情にはどのような事柄があるのかについて確認していきましょう。
①本人の心身状態ならびに生活および財産の状況
②成年後見人等の候補者の職業および経歴(成年後見人等が法人である場合ときには、その事業の種類および内容)
③成年後見人等の候補者と本人との利害関係の有無
④本人の意見
⑤その他の一切の事情
となっています。なお、申請書様式にあつ「申立事情説明書」にも①本人の状況について、本人の生活場所、略歴、病歴、福祉の認定の有無を確認する項目や②申し立てに対する本人の意見、③本人の推定相続人④支援を受けた福祉機関の有無⑤成年後見人等の候補者がいる場合にその人が後見人にふさわしい理由を記載することになっています。
また、後見人等候補者事情説明書にも①候補者の生活状況、健康状態、経歴など②後見人の欠格事由の該当の有無③候補者と本人の日常の交流状況、④候補者と本人との間で、金銭の賃借、担保の提供、保証、立替関係の有無、⑤候補者となった経緯や事情、⑥本人の財産管理と身上保護の今後の方針、計画、⑦成年後見の選任手続きについて、⑧成年後見人の役割および責任についてを確認することとなっています。
民法847条で定められた欠格事由に該当する場合、成年後見人となることはできません。
【欠格事由】
- 未成年者
- 裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
- 破産者
- 被後見人に対して訴訟をした人とその配偶者、直系血族
- 行方不明者
これらを踏まえて、家庭裁判所では成年後見人等の候補者にたいして、調査官による面接を実施するなどして調査を行います。
調査面談の内容
成年後見人等の候補者が現在どのような職業についているのか、また、これまでの経歴はどのようなものかについて把握する質問がなされます。さらに関連して収入状況などの経済面についても聞かれます。重要な後見事務を担うという職責を遂行できる人物かどうかといった信頼性と後見事務の内容に関して専門性を備えているのかといった適格性を面談を通して確認します。
次に、成年後見人等の候補者と本人および申立人や親族との利害関係、面識の有無について質問がなされます。例えば成年後見人等と本人との利害が対立していないか、利益相反の関係にないかなど説明が求められます。
さらに成年後見人等の候補者が後見事務に関してどのような意見をもっているのかについて質問がされます。例えば、後見事務を遂行可能な地域であるのか、時間的にどの程度事務が可能なのか、遂行する意志はあるのかなどです。
一方で成年後見人等の候補者からも後見事務に関して疑問点や不明点を質問することが出来ます。そのようなやり取りの中から成年後見人等の候補者自陣が後見事務に関してイメージし、その責務を自覚することが重要です。
このような内容の調査がされますが事案によってはさらに必要な事情に関して調査を受けることがあるそうです。そして、それらに基づき、家庭裁判所は候補者が成年後見人等に適任か否かを判断します。
まとめ
成年後見人は本人の財産の管理など利益を保護するために重要な役割となります。そのため、業務が疎かになると本人の利益を損なう恐れがあり、また成年後見人が不正を働くなどといった問題も起こりうるため、家庭裁判所が後見人等の候補者が本当に信頼できる人物かを調査することとなっています。場合によっては候補者と違う後見人が選任されたり、後見監督人がついたりして本人を守る対応がされています。
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