今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は成年後見制度の類型変更について解説します。成年後見制度には本人の判断能力に応じて後見・保佐・補助と区分けされており、その度合いによってあ代理権や同意権が変わってきます。認知症の場合ですと、歳を重ねるにつれて補助から保佐に、保佐から後見にと判断能力が落ちるかもしれません。精神症状ですと、治療の進歩によって、本人の判断能力が回復し、後見から保佐に、または補助にと変わるかもしれません。その状態にあった適切な支援が必要になるため、類型の変更が必要になります。
今回の記事を読むことで法定後見の類型変更について解説します。
成年後見制度の判断能力の区分け
成年後見制度の区分けについて再度復習しましょう。
成年被後見人
成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けたもの」です。
成年被後見人が単独で行った法律行為は原則として取り消せます。しかし日用品の購入その他日常生活に関する行為は単独で行うことが出来ます。(婚姻も単独でできます)
成年後見人は家庭裁判所で選ばれます。成年後見人には3つの権限があります。①代理権②取消権③追認権です。同意権がないのは判断能力を欠く常況にあるからです。
被保佐人
被保佐人は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者」です。
被保佐人は原則としては法律行為を単独でできます。しかし、財産上重要な行為をするためには保佐人の同意が必要です。主に民法では以下のように決まっています。
民法13条1項
(1)元本を領収し、又は利用すること。
(2)借財又は保証をすること。
(3)不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
(4)訴訟行為をすること。
(5)贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
(6)相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
(7)贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
(8)新築、改築、増築又は大修繕をすること。
(9)第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
(10)前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
この他にも家庭裁判所に請求することによって特定の法律行為を保佐人に代理権を付与することが出来ます。ただし、本人の同意が必要です。
保佐人とは家庭裁判所で選ばれます。4つの権限があります。①代理権②同意権③取消権④追認権です。
被補助人
被補助人とは「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者」です。
被補助人は原則としては法律行為を単独でできます。ただし、先ほどの民法13条1項の中から家庭裁判所が定めた特定の一部の行為については補助人の同意を得る必要とすることが出来ます。
補助人とは家庭裁判所で選ばれます。4つの権限があります。①代理権②同意権③取消権④追認権です。
類型変更とは
類型の変更には、審判開始前に家庭裁判所が調査の段階で考慮して類型を変更するよう申立人に促すこと (補助の申立てを保佐の申立てに変更するなど)も考えられますが、ここでは補助・保佐・後見の審判後の変更について解説します。例えば、補助あるいは保佐開始の審判を受けた後、何らかの理由により被補助人の認知症や精神上の障害がさらに進行したり重度化し、事理を弁識する能力が「著しく 不十分」(保佐)になったり、「欠く常況」(後見)になることも考えられます。また、 後見開始の審判を受けた後に成年被後見人等の精神上の障害が回復することも想定できます。このような場合、本人の意思能力の変化に応じて類型を変更し、その状態にあった法的支援を受けることが望ましいといえます。
この変更を行うには、本人の状態にあった類型となるように申立てを行うことが必要です。特に類型が軽くなる場合は本人情報シートを有効に活用しましょう。
また、保佐の場合、民法第13条第1項所定の行為以外の同意権や付与されていない代理権の行使が必要になることが考えられます。補助の場合も、付与された特定の法律行為以外の同意権や代理権を行使する必要が生じることも考えられます。このよう な場合は、新たに同意権・代理権を追加する申立てを行うことが必要です。
補助から後見に変更する場合
認知症があり補助類型となり、補助人が選任されている高齢者が、さらに認知症が 進行した場合、申立権者が後見の申立てを行います。申立てにあたって は成年後見人等選任審判時と同様、診断書が必要です。後見開始の審判がなされれば、 それまでの補助開始の審判は家庭裁判所の職権で取り消されます。
後見から保佐に変更する場合
精神障害があり、後見が開始された人が、定期的な通院と服薬、デイケアなどの定着により、以前に比べて判断能力に回復がみられたとします。本人の意思能力をでき るだけ尊重するという観点から、保佐(あるいは補助)開始の審判の申立てを検討す べきです。申立てにあたっては成年後見人等選任審判時と同様、診断書が必要であり、 かつ本人情報シートを有効活用しましょう。
いずれにせよ、家庭裁判所の審判を経て変更するか否かの決定がされますので、申 立てに際しては、変更する理由とその内容について説明できるだけの明確な根拠が必 要不可欠です。
代理権・同意権を追加する場合
知的障害があり、補助が開始された人が、補助人選任後に親族が亡くなり、相続が 発生したとします。補助開始時には相続に関する同意権・代理権が付与されておらず、 本人が単独で相続に関する法律行為を行うことができない場合、相続に関する代理権の行使が必要になります。この代理権を行使するために、代理権の追加の申立てをし なければなりません。権限の追加の申立てがなされると、家庭裁判所は本人の同意を確認したうえで新たな代理権付与の審判を行います。
まとめ
今回は類型変更についてご紹介しました。本人の状態に合わせた後見制度を利用できるように、適宜判断する必要があります。後見制度を利用することによって本人の生活をサポートできることが重要です。
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