【成年後見人の入院・医療契約について】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は成年後見制度の入院・医療行為の同意について解説します。医療行為の同意については悩まれている成年後見人さんも多いと思います。なぜなら法的な権限がなく、解釈も曖昧なままである問題だからです。
今回の記事を読むことで成年後見人の判断基準の助けになればと思います。

入院契約について

成年被後見人等が病院への入院が必要になった際に、成年後見人等ができることと、しなければならないことについて考える必要があります。病院との入院契約締結を有効に行うためには、入院契約に関する代理権が必要です。 この点、法定後見における成年後見人には包括的な法定代理権が帰属しますので特に問題はありませんが、保佐人および補助人については、まずこの代理権の有無が問題となります。そこで、仮に保佐人および補助人が家庭裁判所から入院契約に関する法定代理権を付与されていないときには、家庭裁判所に入院契約に関する法定代理権の付与を申し立て、その付与を受けたうえで、入院手続を進めることになります。なお、法律的には、この代理権さえあれば、家族の意向にかかわらず、有効に入院契約を締結することができます。したがって、家族が入院に反対であったり、家族と連絡が取れない場合であったとしても、入院が客観的にみて本 人の利益となり、かつ、本人が入院を拒絶していない限り、成年後見人等の判断で入 院契約を締結することは可能です。
保佐人ないし補助人が入院契約に関する代理権をもっていない場合に、被保佐人や 法律的には緊急事務管理(民法 被補助人を緊急に入院させる必要が生じたときには、 第698条)として、入院手続きを行うことは可能です。ただし、以後の法律関係を明確化するためにも、事後的にでも本人の同意のもと、 家庭裁判所に医療契約に関する代理権の付与を申し立てるべきでしょう。

医療同意について

成年被後見人等の家族と連絡が取れないまま、 成年被後見人等が手術を受けなければならない事態になったとき、成年後見人等としては、どのように対処すればいいか、手術についての同意書にサインしてもいいかといった問題があります。
成年後見人等がその職務の一環として成年被後見人等に対する医療行為にかかわる場合、法律的には、 ①病院または医師との医療契約の締結に関する問題と、 ②個別具体的な「医的侵襲行為」への同意に関する問題とを区分して考える必要があります。 なぜなら、わが国では、成年後見人等の法的権限(代理権)は、①のみを対象とした もめであり、②にまでは及ばないものとされているからです。「医的侵襲行為」に対する同意権限は、法律上成年後見人等には認められていないのです。

医療的襲行為について

ここで「医的侵襲行為」というのは、各種の検査、治療行為(投薬、注射など)などの個別具体的な医療行為(事実行為)のことを指しており、「手術」も当然に含まれます。したがって、法律の解釈としては「成年後見人等は成年被後見人等の手術に同意することはできない」、もう少し正確にいうと、「同意する法的権限はない」ということになります。もっと具体的にいえば、同意能力のある成年被後見人等が手術に明確に反対している場合には、成年後見人等が勝手にその手術に「同意」 して、手術を成年被後見人等に「強制」することはできないということです。もっと も、実務上では、成年被後見人等が疾病の影響のために極めて理不尽な反対をしている場合(例えば、精神障害の事案)や、成年被後見人等に同意能力やそもそも意思を表示する能力がなくなっている場合(例えば、意識の混濁状態や植物状態)なども想 定できます。しかし、立法者は、こうした事態に対しては、「当面は社会通念のほか、 緊急性がある場合には緊急避難(民法第720条第2項、刑法第37条第1項)・緊急事務管理(民法第698条) などの一般法理に委ねることをせざるを得ない 」と述べるにとどまっています。
また、 法的拘束力はありませんが、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決ガイドライン」「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 の内容をあらかじめ確認しておく、いわゆる エンディングノートを作成しているかの確認もしておく必要があるでしょう。

成年被後見人等が手術を受けなければならない 事態になったとき

成年被後見人等の同意能力の有無によって、その対応も異なることになります。まず、成年被後見人等に同意能力がある場合です。同意能力については、現在のところ、法律上明確な定義があるわけではありませんが、本人の意思が最優先になります。
逆に同意能力がない場合は法の不備があり、成年後見人等の行動に対する明確な法的基準は残念ながら存在していません。「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」の内容に準拠しつつ、「後見事務のガイドライン」の意思決定支援の基本原則に則って意思決定支援を尽くし、それでも本人の意思が確認できない、または本人から表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な 影響を生ずる可能性が高い場合には代行決定の検討に移ります。

まとめ

今回は成年被後見人が入院したときや、入院後の医療的同意について説明しました。医療行為の同意については未だ決められていない部分が多く判断に迷うところだと思います。後見事務のガイドラインや身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決ガイドラインを参考に進めていくしかありません。

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