【市民法務:契約書の作成/賃貸借契約書前半】~行政書士試験合格者が解説~

市民法務関係

今回の記事も行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回は、契約書の中で最も良く使われている賃貸借契約について記事を書きたいと思います。この記事を読むことで賃貸借契約書の必要な知識が得られます。

賃貸借契約とは

賃貸借契約とは、賃貸人が賃借人に 目的物を使用・収益させ、これに対し て賃借人が賃貸人に使用・収益の対価 たる賃料を支払うことを合意する契約 です。賃貸人は、目的物を使用・収益 させる義務のほか、目的物の修繕義務 および費用償還義務を負います。一方、 賃借人は、賃料支払義務のほか、契約 終了時の原状回復義務を負います。

借地借家法

借地借家法が 適用される賃貸借契約は、建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約、建物の賃貸借契約など不動産賃貸借契約にあたります。

存続期間

借地契約の場合、存続期間は原則30 年ですが、これより長い期間を定めた ときは、当該期間になります。

一方、借家契約の場合は、契約で定 めた期間が存続期間になるのが原則で すが、存続期間を1年未満とする借家契 約は、「期間の定めがない建物の賃貸 借」とみなされます(29条1項)。この 場合、解約申し入れが行われない限り、 そのまま存続期間が継続することにな ります。賃貸人が解約の申し入れを行 う場合、6ヵ月前にこれを行わなければ ならず(27条1項)、かつ、「正当の事由」があることが必要です(28条)。

更新

借地契約・借家契約のいずれについ ても、賃借人が期間満了後に目的物の 使用を継続している場合には、賃貸人 がこれに対して「正当の事由」がある 異議を述べない限り、契約が更新され ます。いわゆる「法定更新」です。「正 当の事由」については、賃貸人・賃借 人の自己使用の必要性のほか、賃貸借 に関する従前の経過や土地・建物の利 用状況・現況に加え、立退料を総合的 に考慮して判断されます。

借地契約については、合意による更 新の場合も、法定更新の場合も、最初 の更新期間は20年となり、その後の更 新期間は10年となります。一方、借家 契約については、合意による更新の場 合は契約で定めた期間が更新期間とな り、法定更新の場合は「期間の定めが ない建物の賃貸借」になります。

賃貸借契約書の具体的な条項

○○株式会社(以下「甲」という)と株式会社××(以下「乙」という)とは、次のと おり建物賃貸借契約(以下「本契約」という)を締結するものとする。

契約の締結

第1条甲は、乙に対し、下記の物件(以下「賃貸物件」という)を賃貸し、乙はこ れを賃借する。

●所在東京都●●区・・・

家屋番号

種類

事務所

構造

鉄骨鉄筋コンクリート造地上12階建

床面積

1階 ○○.00㎡

2階 ○○.00㎡

(以下省略)

賃貸物件 4階の添付図面の赤囲み部分(○○.00㎡)

上記のように賃貸借の目的物を明確に定めます。

使用目的

乙は、賃貸物件を事務所として使用するものとし、その他の目的で使用し てはならない。

賃貸借物の使用目的を記載しましょう。目的以外の使用があった場合は契約違反となります。

賃貸借期間

第3条 本契約に基づく賃貸借期間は、○○年○○月○○日から○○年○○月○○ 日までとする。

2 前項に定める賃貸借期間の満了と同時に本契約を終了させようとする場合に は、甲又は乙は、相手方に対して、期間満了の6か月前までに、その旨を書面に より通知しなければならないものとする。

3 前項に定める通知がなされない場合には、本契約は同一条件で1年間更新され るものとし、以降も同様とする。

賃貸借期間を定め、解除や更新を盛り込みましょう。

賃料

第4条乙は、甲に対して、賃料として、月額金○○○円を支払う。

2 乙は、前項の賃料について、毎月末日までに翌月分を甲の指定する銀行口座に 振り込む方法により支払う (振込手数料は乙が負担する)。なお、1か月に満たな い期間の賃料については、当該月の日割計算によるものとし、1円未満の端数は切 り捨てる。

3 甲及び乙は、経済事情の変動、土地建物に対する公租公課その他経費の増減、近 隣の土地建物賃料の相場との比較等により、賃料が不相当と認められるに至ったと

賃貸借期間中であっても、双方協議の上、賃料を改定することができる。

有償契約の場合は賃料を定めます。いつ、何を、どのように支払うのか明示しましょう。

共益費

第5条 乙は、共用部分の維持管理に要する水道光熱費、設備管理費等を負担す るものとし、前条の賃料とともに共益費として、月額金○○○○円を甲に支払う。 21か月に満たない期間の共益費については、当該月の日割計算によるものとし、 1円未満の端数は切り捨てる。

共益費とは共用部分の維持管理に要する費用です。

まとめ

今回は賃貸借契約の一部をご紹介しました。次回も賃貸借契約書の残りの条項を解説します。

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