【市民法務:契約書の作成/トラブル時の契約不適合と損害賠償に関する条項】~行政書士試験合格者が解説~

市民法務関係

今回の記事も行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回は、契約の中身でトラブル時の契約不適合と損害賠償に関する条項について記事を書きたいと思います。前回はトラブルに備えた契約解除に関することについて説明しました。今回は契約を解除しても必要となる損害の賠償に関する条項について説明します。この記事を読むことで契約書の作成にトラブルを想定し事前に備えることが出来ます。

契約不適合とは

物や権利等を供給する契約(売買契約や請負契約など)において、供給される物や権利が、当初の契約の内容に照らして、種類、品質、数量が十分でない場合を「契約不適合」といいます。 そのとき、供給者(売主・請負人)が負うのが契約不適合責任です。
提供された目的物や権利に契約不適合がある場合、民法では買主・注文者は、①履行の追完、②代金減 額、③損害賠償、④解除を請求することができます。契約不適合責任には、法律上行使できる期間が決まっています。
まず、契約不適合責任(目的物の「品質や種類」に関する事項)については「買主が不適合を知ったと き」から1年以内に通知しなければ、 権利が消滅すると規定されています。さらに、商人間の売買契約には、商法526条による期間制限があります。買主は受領した目的物の検査をする義務があり、そこで発見される契約不適合は直ちに通知しなければ以後責任を追及できません。その後に見つかった契約不適合も6カ月以内に通知しないと責任を追及できなくな ります。また、民法上の消滅時効も適用される場合があり、「権利を行使することができることを知ったときから5年」または「権利を行使することができるときから10年間」のいずれか早い時点で権利が消滅します。

契約書での契約不適合責任

民法に規定された内容の契約不適合責任で十分の場合には、契約書に契約不適合責任に関する定めをおかなくても問題ありません。契約書に記載する必要があるのは、 契約不適合責任の内容を民法の規定から変更したい場合です。民法に定められた契約不適合責任の内容を受領者に有利に拡充したり、反対に供給者に有利に縮減したり、ひいては責任をなくしたりするために条項を定めることができます。

例:契約不適合責任を負わない特約
本契約において売主は買主に対して、目的物を現状有姿で引き渡せえば足りるものとし、売主は買主に対して契約不適合を追わないことを確認する。

例:契約不適棒責任の履行方法を買主が指定できる条項
売主の引き渡した目的物の種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである時は、買主は自己の選択により、売主に対し目的物の修補、代替物の引渡し若しくは不足分の引渡しによる履行の追完または代金減額請求をすることができる。

損害賠償請求とは

民法では、契約をした相手方が契約で定めた債務を履行しない場合や相手方の故意または過失がある場合などいわゆる債務不履行がある場合に、その損害を被った側が契約をした相手方に対して、損害賠償請求をすることができると定めています。なお、契約不適合のある目的物や権利を渡すことも、 債務不履行の一種と考えられており、契約不適合責任追及の1つの方法としても買主は損害賠償請求権の行使が出来ます。
損害賠償の場面で問題になるのは損害額の算定です。裁判となった場合、被害を受けた当事者が損害額を立証する必要があり、 立証に成功した損害額について損害賠償が認められます。しかし、損害額の立証は難しいことも多くあります。そのため、裁判においてそのような立証をする手間を省き確実に損害賠償を獲得できるようにするために、あらかじめ契約書に当事者の一方に債務不履行があった場合の損害額を定める条項、あるいは、債 務不履行により損害が生じた場合に損害額の算定ルールを定める条項を設けることが出来ます。

契約書での損害賠償請求

損害賠償責任を負う場合、債務を履行する側は、債務不履行の内容によっては連鎖的にさまざまな損害が発生し、場合によっては際限なく損害賠償責任を負うことになりかねません。そこで、債務を履行する側を保護するため、契約書に損害賠償の上限額に関する規定を定める場合があります。 これにより債務の履行者は自分の負う責任の範囲を事前に見積もることが容易になります。契約書に、代金額を損害賠償の上限として、仮に債務不履行があっても自分が受け取った代金以上の損害賠償は支払わないとする条項を設けるがあります。

例:不履行の違約金
売主が本契約第〇条で定める期限までに買主へ目的物を引き渡さない場合、売主は買主に対して、当該期限の翌日から引渡し完了するまで、一日あたり○○円の損害を支払わなければならない。

また債務不履行があった場合に間接損害・逸失利益を免責す規定を契約書に定めるこもがあります。
間接損害とは直接の被害者ではない者に派生して生じる損害(被害会社の グループ会社に生じた損害など)を意味します。逸失利益とは「債務不履行がなければ、得られたはずの利益」を意味します。例えば、AがBにある商品を売買する契約において、Aが期限までに商品を引き渡さずにBが商品を転売できず、利益を得ることができなかったという損害が「逸失利益」です。民法の損害賠償の規定に基づく場合、 間接損害や逸失利益についても損害賠償の対象となってしまうことがあります。間接損害・逸失利益を損害賠償に含めると損害賠償額が大きくなるため、 債務を履行する側を保護して、これらを損害賠償の範囲から除くと規定する条項が実務上よく見られます。

例:損害賠償の上限を定める条項
各当事者の負う責任は、金○○円を上限とする。ただし、損害賠償を負う当事者の故意または重過失がある場合には、この限りではない。

例:間接損害・逸失利益を除外する条項
契約の当事者の一方が本契約に基づく債務を履行しない場合、相手方は直接かつ現実に生じた通常の損害(間接損害・逸失利益等を除く)に限り、損害賠償請求をすることができる。

まとめ

今回は契約に不適合が生じたときにどうするかについての条項を説明しました。契約不適合時の責任や損害賠償額を定めることによって安心した契約をすることが出来るようになります。

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