今回の記事も現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。今回は障害福祉事業にとって重要な障害者虐待防止について説明していこうと思います。今回の記事も知識の紹介記事となります。
障害者虐待防止法
第一条 この法律は、障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み、障害者に対する虐待の禁止、障害者虐待の予防及び早期発見その他の障害者虐待の防止等に関する国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による障害者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
被虐待者
・「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」
・障害者手帳を取得していない場合も含まれる
・18歳未満の者も含まれる(養護者虐待の通報や通報に対する虐待対応については、児童虐待防止法が
適用)
虐待者
・家庭=養護者による障害者虐待
・施設=障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
・職場=使用者による障害者虐待
障害者虐待の種類
① 身体的虐待
障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
身体拘束に関する義務
① 身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録すること。
② 身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
③ 身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。
④ 従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
※上記を満たしていない場合、基本報酬を減算(身体拘束廃止未実施減算
5単位/日
② 性的虐待
障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
③ 心理的虐待
障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的な言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
④ ネグレクト(放棄・放置)
障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、他の利用者による①から③までに掲げる行為と同様の行為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
⑤ 経済的虐待
障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること
早期発見義務・通報義務
障害者福祉施設、学校、医療機関、保健所その他障害者の福祉に業務上関係のある団体並びに障害者福
祉施設従事者等、学校の教職員、医師、歯科医師、保健師、弁護士その他障害者の福祉に職務上関係のある者及び使用者は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、障害者虐待の早期発見に努めなければならないとされています。
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、市町村に通報する義務があります(第 16 条)。「障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した」場合とは、障害者福祉施設従事者等から明らかに虐待を受けた場面を目撃した場合だけでなく、虐待を受けたのではないかと疑いを持った場合は、事実が確認できなくても通報する義務があることを意味しています。
通報後の通報者の保護
障害者福祉施設等の虐待を発見した職員が、直接市町村に通報する場合、通報した職員は、障害者虐待防止法で保護されます。
障害者虐待に関する通報をしたことを理由として、解雇や不利益な取扱いに該当する法律行為が行われた場合においては、当該行為は民事上無効と解されます。
虐待防止に向けて
虐待防止措置未実施減算
以下の要件を満たしていない場合に1%の減算となります。
① 虐待防止委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ること。
② 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
③ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
実地指導に向けて虐待防止を整備しましょう。
以下の措置を実施出来ているかを確認しましょう。
・虐待防止責任者の選任記録
・虐待防止委員会の設置規程
・虐待防止委員会の議事録
・虐待防止マニュアル
・虐待防止研修の研修記録
・実施した虐待防止チェックリスト等
まとめ
今回は虐待防止法について説明しました。虐待防止は施設が必ず整備しなくてはなりません。そのため、市町村や都道府県の研修に参加し知識を深め、従業者の虐待を発見したら速やかに市町村へ相談してくださいね。