【地域移行支援とは】~行政書士試験合格者が解説~

福祉業務

今回の記事も現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。今回は障害者総合支援法にある地域移行支援について説明していこうと思います。地域移行支援は、障害者支援の中で重要なキーワードです。今回の記事も知識の紹介記事となります。

地域移行とは

 「地域移行」とは、住まいを施設や病院から単に元の家庭に戻すことでは なく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らし い暮らしを実現することを言います。

何故必要か(精神障害の場合)

精神病床に入院している患者は、
・ 新規入院者のうち約9割は1年未満で退院している一方、入院期間が1年以上になると退院が難しいため、入院患者約31万人のうち入院期間が1年以上の患者が21.1万人(68%)に上り、高齢長期入院者への対応が課題となっている。
・厚生労働省では、平成16年9月の「精神保健福祉施策の改革ビジョン」以来、「入院医療中心から地域生活中心へ」の基本理念の下、施策を進めてきた。精神障害者地域移行・地域定着支援事業は、平成18年の創設以降、精神科病院からの退院促進のための事業として役割を担ってきた。
・障害者基本法の「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと」(第3条第2号)という理念を実現するためには、精神障害者の病院からの地域移行の取組を進めることは今後も非常に重要である。
※厚生労働省ホームページ参照

精神障害者の地域移行は長期入院患者(特に社会的入院患者)を地域で暮らせるように支援する退院促進の方法として地域移行支援がされています。
長期入院は本人が退院できる状況であっても、家族など引き取り手側に拒否されて退院できない、本人が病院での生活に慣れてしまい退院する意欲がない、不安を感じるなど「社会的入院」による入院の長期化してしまう問題が生じています。そのため地域移行支援により、不安や問題を解消する支援が必要となります。

また、知的障害の場合は施設入所が長期化し施設内だけでの生活になってしまい、精神科病院のように社会から孤立した生活になっている状態があります。そういった長期入所の方に対して、地域で生活できるように地域移行支援が行われています。

対象者

次の方のうち、地域生活への移行のための支援が必要と認められる方。
(1) 障害者支援施設、のぞみの園、児童福祉施設または療養介護を行う病院に入所している方
※ 児童福祉施設に入所する18歳以上の方、障害者支援施設等に入所する15歳以上の方も対象。
(2) 精神科病院に入院している精神障害のある方
※直近の入院期間が1年以上の方が対象(原則)。ただし、直近の入院期間が1年未満であっても、措置入院者や医療保護入院者で住居の確保などの支援を必要とする方や、地域移行支援を行わなければ入院の長期化が見込まれる方も対象となります。
(3) 救護施設または更生施設に入所している障害のある方
(4) 刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所)、少年院に収容されている障害のある方
※指定一般相談支援事業者による効果的な支援が期待される方が対象です。
(5) 更生保護施設に入所している障害のある方または自立更生促進センター、就業支援センターもしくは自立準備ホームに宿泊している障害のある方

サービスの内容

退院・退所に向けて様々な支援が行われます。

住居の確保その他の地域生活に移行するための活動に関する相談・地域移行支援計画の作成

利用者が具体的にどのように地域移行支援サービスを利用したらよいかの会議を開き計画を立てます。

地域生活への移行のための外出時の同行

退所退院後の生活の場や日中活動を行う際に、必要となるサービスの市役所などでの手続きに同行しサポートします。

障害福祉サービス(生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援に限る)の体験利用・体験宿泊

地域生活開始に向けて、利用することとなる障害福祉サービスなどの体験利用や、アパートやグループホームたどの体験宿泊を行うサポートをします。

地域移行支援の利用期間

地域移行支援の利用期間は、原則1年間となっています。期間内でのサービス利用回数制限はありません。

地域移行支援の利用料金

利用者は料金を無料で利用できます。
地域移行支援でサービス計画作成でかかった費用などは、事業所側に対して地域移行支援給付金が支払われます。ただし、サービス利用に伴う、食事代や外出時の交通費などは自己負担です。

まとめ

今回は地域移行支援事業について説明しました。精神科病院での長期入院や知的障害者施設での長期入所は社会的問題となっています。その問題に対して支援を行うのが地域移行支援となります。少しずつ改善はしていますが、高齢化も伴いより一層支援が重要となってきている現状です。

タイトルとURLをコピーしました