前回までの記事では社会保証制度についてご紹介してきました!その社会保障制度を活用出来ない状況となった場合、皆さんはどのような救済処置が思い浮かびますか?多くの方は「生活保護」を思い浮かべるかも知れません。しかし、生活保護を申請する前にさまざまな公的救済処置があります。今回は生活困窮者自立支援法についてご紹介したいと思います。この記事を読むことで、万が一の経済的不安が解消されます。
生活困窮者自立支援制度とは
生活困窮者自立支援制度は、経済的に困窮し最低限度の生活を維持することができなくなるおそれがある方へ包括的な支援を行う制度です。生活保護が最後のセーフティーネットと言われていますが、その前段階の救済処置として生活困窮者自立支援法があります。
支援の種類
生活困窮者自立支援法には生活を立て直すためのさまざまな支援があります。
①自立相談支援
②住宅確保給付金
③就労準備支援事業
④一時生活支援事業
⑤家計改善支援事業
⑥子供の学習・生活支援事業
自立相談支援事業
就労や住まい、家計管理などの生活の困りごとについて、支援員が相談を受けどのような支援が必要か相談者と一緒に考え、具体的な支援プランを作成し、寄り添うながら自立に向けた支援を行います。
流れとしては
①話す…相談窓口に配属されている支援員が対応します。窓口に来れない場合は自宅に支援員が訪問することもあるそうです。
②生活の状況を見つめる…生活の困りごとや不安を支援員に話します。生活の状況と課題を分析し、自立に向けて支援を検討します
③プランを作る…支援員と相談者の意思を尊重しながら、自立に向けた目標や支援内容を一緒に考え、支援プランを作成します。
④サービスの提供…支援プランに基づいたサービスを提供します。
⑤定期的なモニタリング…相談者の状態やサービスの状況を支援員が定期的に確認し、必要に応じてプランの再検討を行います。
⑥自立する…支援の結果、困りごとが解決し支援が終了します。その後一定期間、支援員によるフォローアップが行われます。
ひとりで悩まずに相談してみましょう。
住宅確保給付金
生活困窮状態になり住居を喪失した方又は住居を喪失するおそれがある方を対象して、家賃相当の給付金を支給するとともに、自室相談支援事業による就労支援等を実施し、住居及び就労機会の確保に向けた支援です。
支給要件は①~⑤すべてを満たす必要があります。
①離職等により経済的困窮し住居喪失者又は住居喪失のおそれがある。
②申請日において、離職等の日から2年以内である、または給料が減少し離職・廃業と同等の場合
③世帯収入合計が市町村民税の均等割りが非課税となる額の1/12と、家賃(上限あり)の合計額を超えていないこと
④申請時の預貯金合計が、各市町村が定める額(基準額の6月分。100万円を超えていないこと)
⑤求職活動を誠実かつ熱心に行うこと
収入合計や預貯金金額は住んでいる場所で金額が変わるため窓口に確認してみましょう。
申請に必要な物
①住宅確保給付金支給申請書
②本人確認書類(運転免許、個人番号カード、健康保険等)
③離職等から2年以内の者であることが確認できる書類の写し(離職票や給料振り込みの分かる通帳等)
④収入が確認できる書類の写し(給料明細書等)
⑤通帳
⑥ハローワークの発行する「求職受付票」の写し
支給額は市町村や人数で変化します。
就労準備支援事業
「社会に出ることに不安がある」「他人とうまくコミュニケーションできない」といった理由ですぐに職に就くことが難しい方には、6か月から1年を上限に、プログラムにそって、一般就労に向けたサポートや就労機会の提供を行います。
主に①生活習慣形成のための指導・訓練(日常生活に関する支援)、②就労の前段階としての必要な社会的能力の習得(社会自立に関する支援)、③事業所での就労体験の場の提供や、一般雇用への就職活動に向けた技法や知識の習得等の支援(就労自立に関する支援)の3段階があります。
Aさんの事例
Aさんは両親と3人世帯で過ごしていました。8年前まで10年程一般就労をしていましたが会社内でトラブルがあり解雇されました。その後アルバイトを転々としましたがどれも長く続かず2~3カ月で辞めてしまう状況でした。ここ2年ほどは仕事も出来ず両親の収入で生活をするようになっていました。この方は8年前の出来事で仕事に対して不安になり、他人とのコミュニケーションの取り方が分からなくなっていました。その上2年間も仕事のブランクが空いたため次のステップに行く勇気が持てないでいました。そこで今回ご紹介している「就労準備支援事業」に参加していただきました。就労支援準備では簡単な作業を行い、就労能力を判断しその後適切な就労支援をしていきます。今回Aさんは室内の清掃作業を1週間行うプランを取り組みました。久しぶりに体を動かし報酬を得たAさんは就労準備支援事業に取り組んだ後、清々しい表情をされていました。Aさんは「体を動かして何かを得ることが楽しいことだと思い出しました」と話していました。その後、同じような清掃の仕事を紹介してもらい今でも休むことなく継続した就労が続けられているそうです。
このような、簡単な作業からステップアップし就労へ再復帰を目指せる支援を行います。その他にも各自治体によって様々なプログラムが行われていますので、気になる方は一度相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。
一時生活支援事業
一時生活支援事業は主にホームレスの方を対象とした住居支援の制度です。例えば住み込みの仕事をしており会社を辞めたため家を失ったり、ネットカフェ宿泊や知人の家を転々とし住居が無い方などが対象です。利用するには収入の基準額より少なく、また預貯金も単身であれば50万円以下程度と市町村によって決まりがあります。一時生活支援事業には緊急的に一定期間(原則3カ月以内)、宿泊場所や衣食を提供します。その後の生活に向けて就労支援なども行っていきます。
無料で宿泊できます。場所はホテルやマンションの1室を借りていたりします。
家計改善支援
家計状況の「見える化」と根本的な課題の把握を行い、相談者が自ら家計を管理できるように支援します。状況に応じた支援計画の作成や相談支援、関係機関へのつなぎ、必要に応じて貸付のあっせんなどを行い、早期の生活再生をサポートします。主に「相談時家計表」「家計計画表」「ライフイベント表」「キャッシュフロー表」などを作成し家計の立て直しを行っていきます。
家計改善支援には、支援の5つの基本的な柱があります。
①家計の現状を理解してもらう支援②行政窓口に同行し、給付制度の利用や税金、公共料金等の滞納を解消する支援③法律相談に同行し、借金や家賃滞納など債務に関する支援④生活の健全化を図るために必要な貸付をあっせんする支援⑤相談者自身が家計を自ら管理できるようにする支援
この他、家計改善支援だけで解決できない、障がいや依存症(ギャンブル、アルコール)などの課題を抱える人への支援は、自立相談支援事業所や医療機関などと連携を行います。
子供の学習・生活支援事業
ひとり親家庭や貧困家庭等のこどもが抱える特有の課題に対応し、貧困の連鎖を防止する観点から放課後児童クラブ等の終了後に、ひとり親家庭や貧困家庭等のこどもに対し、児童館・公民館・民家やこども食堂等において、悩み相談を行いつつ、基本的な生活習慣の習得支援・学習支援、食事の提供等を行っています。この制度は市町村でさまざまな取り組みがあります。子ども食堂はニュースで取り上げられているので一度目にしたことがあるのではないでしょうか。
学習支援のA市の事例
(中学生学習支援プログラム)
A市では、NPO 法人の運営するフリースクールで中学生を対象とした学習支援を実施。最初は夏休みに 10 日開催したところ、参加した子どもたちから「楽しいので、学校登校期間も開催してほしい」という声が上がったため、学校登校期間も毎週火・木曜日 16:30~19:00 に開催するようになる。学習指導はマンツーマンで、学校の宿題が基本。ただし、学校の授業についていけない場合は小学生向けのドリルや独自教材を使って学び直しをしたり、特別な学習支援を必要としない中 3 の場合は入試問題を解く場合もある。
学習支援だけでなく、居場所としての機能を重視し、友達同士のつながりや雑談の時間も大切にしている。また、自主性、協調性、社会性の向上を意識して、擬似社会としての小集団の中で挨拶、片付け等の生活習慣が身につくよう心がけており、夏休み、冬休み期間は、皆で買い物に行って昼食を作る場合もある。昼食については、実費を徴収している。
子ども食堂のB市の事例
B市の子ども食堂では、子供が家族以外の大人とコミュニケーションをとる機会になるとともに、学生や地域のボランティアが子供の相手をしてくれたり、お年寄りが赤ちゃんを見てくれたりすることで、その間に親がゆっくり食事を取れるなど、親にとって息抜きの場にもなっています。また、食事だけでなく、食べ終わった後には子供たちはトランプで遊び、親同
まとめ
今回は生活困窮者自立支援法の「自立相談支援事業」「住宅確保給付金」「就労準備支援事業」「一時生活支援事業」「家計改善支援事業」「子供の学習・生活支援事業」についてご紹介しました。どのような支援があるかは各市町村の窓口に一度問い合わせてみてくださいね。また、相談窓口が市町村役場でなく、社会福祉協議会が行っている場合もありますのでご注意ください。悩んだ時はひとりで抱え込まずに相談してみてはいかがでしょうか。
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