今回の記事も会社設立業務について記事を書いていきます。今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、会社設立業務に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。今回から特殊なNPO法人についての記事を書いていきます。まずはNPO法人とはどんな組織かについて説明したいと思います。
NPO法人とは
「NPO」(Non Profit Organization)とは、さまざまな社会貢献活動を行ない、団体の構成員に対し収益を分配することを目的とし ない団体の総称です。収益を目的とする事業を行なうこと自体は認められますが、事業で得た収益は、さまざまな社会貢献活動に充てることになります。
このうち、「特定非営利活動法人」つまり「NPO法人」とは、 特定非営利活動促進法にもとづき法人格を取得した法人です。「特定非営利活動促進法」は、平成10年(1998年) 12月に施行された法律で、通称「NPO法」と呼ばれています。この法律により、 民間の非営利組織が法人格を取得し、社会のなかで活動を行なったり、組織として契約を結ぶことができるようになりました。
NPO法人の特徴と役割
NPO法人は、「民間」が行なう 「非営利」で「公益」を目的とする法人です。ボランティアなどは任意団体でもできますが、法人格を取ることで、社会的な認知を得るにも有効です。また、不動産なども法人名義とすることができます。
NPO法人は、福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力 などの広い分野で、社会の多様化したニーズに応える重要な役割を果たすことが期待されています。ここで「非営利」とは、収益を上げてはいけないという意味ではなく、組織の活動費・運営費として利用しなければなりません。
NPO法人の役割として社会には、高齢者問題や地方の過疎化、 少子化問題等たくさんの課題があり、これらを解決するには、国、 地方自治体、企業、市民が協力しながら活動していかなければなりません。しかし、行政の財政も厳しく、収益性の低い事業に企業が積極的に関与するのは難しい現状もあります。これまで社会の課題というのは、政府や企業が中心となりサービ スを提供して対応してきました。しかし、いまの政府が提供してい るサービスでは、課題が解決されなくて困っているという人もたく さんいます。国や地方自治体が提供する均質的なサービスではカバ ーしきれず、企業においては、マーケットが小さく、利益が少ないためにサービスが十分でない、または持続していくのが難しいためと考えられます。
NPO法人のメリット
NPO法人のメリットについて7つ上げていきます。
①社会的信用の増加
社会活動を行なう場合に考慮しなければならないのが、対外的な信用です。第三者からみて任意団体や個人では、財政状況や経営状況が把握しにくくなっており、取引先・提携先に対しても信用度が低くなります。それに対しNPO法人は、定款や登記簿謄本などによって個人と法人の会計が明確に区分されており、所轄庁へ毎年、決算書類の提 出が求められているので、財務面・活動面ともに透明性が高いとい えます。
さらに、社会的信用が高いため、任意団体や個人事業よりも採用の面でも有利といえ、優秀な人材を集めやすいというメリットがあ ります。
②団体名による契約や登記が可能
任意団体の場合、団体名では契約も登記もできません。その結果、 団体名で事務所を借りられなかったり、銀行口座がつくれなかったり、電話などの公共料金の契約ができないため、契約は代表者個人名で行なうことになります。その場合、何らかの事情で代表者が代わるたびに、その変更をしなければならず、非常に手間がかかりま す。
また、任意団体の場合だと、団体で損害賠償や債務不履行(未払い等)などのさまざまな問題が発生したときには、責任はすべて名義を貸した個人の責任となってしまいます。しかし、法人格を取得すると、法人として行なった活動によって発生した損害は、原則として法人が賠償することになります。
また、団体名で銀行口座がつくれたり、不動産の所有など、法人名で財産を所有することができるので、お金のトラブルを防ぐことにもつながります。法人口座にすることで、個人が団体の資金を勝手に流用することも防ぎやすくなります。
③組織を永続的に維持できる
任意団体では、代表者が管理している財産は法律上、代表者個人のものとなってしまうので、代表者本人が死亡すると、その任意団 体の財産はすべて代表者に関する相続の対象となり、本来の持ち主である任意団体には帰属しません。しかし、NPO法人であれば、代表者は理事長でも、すべての財産は法人に属するため、万一、代表者である理事長が死亡しても他の理事を代表に選任すれば問題はありません。
④経費の認められる範囲が広い
任意団体や個人事業の場合は、税務申告をする際に、必要経費として認められないというケースがよくあります。これは、費用処理した支出のどこまでが個人のもので、どこまでが事業用(団体用) のものなのかがハッキリとわからないためです。ところが、NPO法人の場合には、個人の支出とNPO法人とし ての支出が明確に区分されるため、任意団体や個人事業では認めら れない経費でも認められることになります。
たとえば、自宅を事業所にすると、一定の条件のもとで住宅費や光熱費は経費で落とすことができるようになります。また、自動車を個人事業主が事業用として購入した場合、特別の事由がない限り全額を経費として認められることはありませんが、 NPO法人だと、全額経費として認められます。
⑤官公署から事業委託・補助金を受けやすい
通常は、行政からの事業の委託や補助金は、責任の所在を明確にするために、対象者を法人に限定しています。
⑥金融機関からの融資も可能
NPO法人向けの金融機関融資も行なわれはじめています。融資により、個人では不可能な資金量を調達できるようになります。
⑦税金面で有利に
任意団体や個人事業の場合、売上による収入は所得税の課税対象となり、累進課税なので所得の額 (売上から原価や経費を差し引いた額)が高くなればなるほど税率もアップします。一方、NPO法人の場合、収益事業をしない団体であれば、税金の減免申請を毎年行なえば税金はまったくかからないので、会費や 寄附金を中心に事業を運営している場合には、税金面では有利といえます。
まとめ
今回はNPO法人の特徴に焦点を当てて説明しました。任意団体ではなく、法人化することで様々なメリットやリスク回避をすることが出来ます。
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