今回の記事も会社設立業務について記事を書いていきます。今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、会社設立業務に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。今回は行政書士試験にも出てくる商法についての記事となります。商法を意識せずに事業を行っている方も多いとは思いますが、商業をする上では知っておくべき法律となります。前回に続き民法と商法の違いについての記事となります。一度目を通してみてください。
民法と商法の関係性
民法は、市民生活や私たちの人間関係に関連する法律を取り扱うのに対し、商法は、商業活動や企業の運営に関連する法律を取り扱います。また、民法は、個人の権利や契約の成立など、個人と個人の関係を規制することを目的としていますが、商法は、企業の設立や経営、取引の方法など、商業活動全般を規制することを目的としています。
民法と商法は、それぞれ異なる目的と範囲を持っていますが、法律の分野で重要な役割を果たしています。民法は、市民生活における法的なルールを定めることで、個人の権利や義務の保護を図ります。
そして商法は、一般法である民法の特別法に当たります。したがって、民法と商法が重複する部分については、商法が優先的に適用されます。
商人間の売買
商人間の売買契約については、取引の安全・売主の保護という観点から、民法の売買契約に関する規定とは異なる特則が定められています。
売主による目的物の供託・競売
民法では買主が売買の目的物を引き取ってくれない場合、 売主は、その目的物を供託することができます(民法494条1 項1号)。また、売買の目的物が供託に適さない場合、裁判所 の許可を得て、競売することができます(民法497条)。しかし、裁判所の許可には時間がかかり、売主にとって不利となります。そこで、商人間の売買においては、供託のみならず競売もすることができるものとされ、競売の際に相当の期間、裁判所の許可を得る必要はありません。相当の期間を定めて催告をすれば、裁判所の許可は必要ありません (524条1項前段)。
また、 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、催告をしないで競売に付することができます(524条2 項)。
そして、売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その 代価を供託しなければなりませんが、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げないとされています(524条3 項)。
定期売買の履行遅滞による解除
民法では、定期売買の時期を経過したため契約を解除する場合には、相手方に対して解除の意思表示をしなければなりません(民法540条1項、542条1項4号)。しかし、解除の意思表示を必要とすると、解除の意思表示がされるまで売主は不安定な地位に置かれることになります。
商人間の売買においては、相手方が直ちに履行の請求をしない限り、当然に契約を解除したものとみなすこととして、 解除の意思表示を不要としています(525条)。
買主による目的物の検査・通知
民法上の売買契約においては、引き渡された目的物が種類・ 品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約内容不 適合)、買主は、売主の担保責任を追及することができます (民法562条1項)。
商人間の売買契約においては、契約内容不適合があっても、受け取った目的物を遅滞なく検査し、契約内容不適合を発見した場合には直ちに売主に対して通知をしなければ、売主の担保責任を追及することができません(526条1項、 2項前段)。
買主による目的物の保管・供託
民法では、売買の目的物に契約内容不適合が存在したため契約が解除されたとしても、買主は、その目的物の返還義務を負うにすぎず(民法545条1項本文)、目的物を保管・供託する義務はありません。
しかし、買主が目的物を適切に保管等しないと、売主は転売の機会を失ってしまいます。
商人間の売買において は、売買の目的物に契約内容不適合が存在したため契約が解除された場合でも、買主は、売主の費用で、売買の目的物を保管・供託しなければなりません (527条)。また、品違いや数量 超過分についても同様とされます(528条)。
ただし、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、保管・供託する義務はありません (527条4項)。
まとめ
今回は売買契約時の商法と民法の違いについてまとめました。売買契約時においても民法と商法では目的が変わるため、対応の仕方が変わります。トラブルになった際には民法より特別法である商法が優先されることになりますので注意してください。