【自動車登録:相続および合併】~行政書士試験合格者が解説~

行政書士業務

今回の記事も行政書士のメイン業務である許認可についていくつかご紹介していきたいと思います。今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、会社設立業務に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。
行政書士の行う許認可業務は多岐にわたり存在し、取り扱う書類の数も1万種類あると言われています。許認可業務の数が多いため、いくつか絞ってのご紹介となります。今回の記事も、許認可とは少しズレますが、行政書士が行う自動車関係の記事を書いていきたいと思います。今回の記事では自動車の相続についてご紹介します。

自動車の相続

自動車の相続についてご紹介します。自動車は動産のため相続人が複数いる場合共有相続されます。

相続財産の共有

共同相続の場合、遺産に属する個々の財産が現実に誰に属するかは、遺産分割の手続きを経て定めます。そのため遺産分割の手続きが終了するまでは、相続財産は、各共同相続人の共有に属することになります。つまり、遺産分割までの過渡的な状態として共同相続人は各自の相続分に応じて相続財産を共有することになるわけです。
物の共有所有については各共同相続人は自己の相続分に相当する持ち分の範囲で遺産分割前に遺産を処分することができ、また分割前の遺産の管理等については共有の規定に定めることにより処理されることになります。

通常の移転と、相続合併との違い

通常の移転の場合は、譲渡証明書を発行して誰に車両を譲ったか明確にし、印鑑証明書と委任状を提出します。しかし、相続や合併の場合は旧所有者は存在せず、 印鑑証明書、委任状、譲渡証明書は提出できません。したがって別の書類で権利の 移転を証明する必要があります。

相続を原因とした移転登録(遺産分割協議なし)

車の所有者が死亡した場合、車は相続人全員の共有となりますが、相続人が一人しかいない場合は一人で車を引き継ぐので遺産分割協議をする必要がありません。 また、相続人が複数いる場合でも配偶者と未成年の子どもだった時は、未成年者とその親では遺産分割協議はできないので、共有のまま登録することとなります。

必要書類は以下のとおりです。

・車の所有者の死亡が分かる戸籍謄本
・相続人の全員が分かる戸籍謄本
・自動車検査証(有効期限のあるもの。紛失の場合は事前に再発行が必要)
・新所有者(相続人複数の場合は全員分)の委任状(実印を押印)
・新所有者(相続人複数の場合は全員分)の印鑑証明書 (発行後3ヵ月以内)
・新使用者の委任状(所有者以外の者を別に定める場合のみ・省略可)
・新使用者の住所証明書類 (所有者以外の者を別に定める場合のみ・コピー化
・自動車保管場所証明書
・公共料金の領収証などの所在証明
・移転登録申請書 (運輸支局等で配布)
・手数料納付書(運輸支局等で配布)
・税申告書(自動車税事務所で配布)

ナンバープレートの管轄が変わる場合や、自分で好きな番号に変えたい場合は、古いナンバープレート (持込の場合は車ごと)、希望番号予約済証(希望番号を付ける場合)または、ナンバープレート代金が必要です。共有の場合は新所有者が複数になりますが、全員の印鑑証明書と委任状が必要です。所有者は代表者1名を通常の所有者欄に、また使用者を複数人設定することはできないので、使用者を1名にする必要があるのでご注意ください。

相続を原因とした移転登録(遺産分割協議書)

相続をした場合、多くのケースでは遺産分割協議により一人の人が承継します。 車が不要で売却する場合でも誰か一人が承継してから現金化するケースが実務上は 多いです。

遺産分割協議書を使った場合の必要書類は下記のとおりです。

・車の所有者の死亡が分かる戸籍謄本
・相続人の全員が分かる戸籍謄本
・遺産分割協議書 (相続人全員の実印を押印)
・その他共通の必要書類

遺産分割協議書は相続人全員の実印を押す必要がありますが、印鑑証明書の添付が必要なのは新所有者となる相続人のみとなります。

相続を原因とした移転登録(遺産分割協議成立申立書)

自動車用の遺産分割協議書に相続人全員の実印を押してもらうのは大変なケースもあります。そこで査定額100万円以下の自動車に限り、新所有者の 申立書を遺産分割協議書に代えて使用することができます。相続後に売却するケー スでは多く使われる手法です。相続人が自分で使用する場合は査定書の取得の方が手間がかかることもあるので、遺産分割協議書と使い分けてください。(100 万円以下の車であっても遺産分割協議書での手続は可能です)

遺産分割協議成立申立書を使用した場合の必要書類は下記のとおりです。

・車の所有者の死亡が分かる戸籍謄本
・新所有者が相続人であることが分かる戸籍謄本
・遺産分割協議成立申立書(新所有者の実印を押印)
・その他共通の必要書類
・100万円以下であることが分かる査定書など

なお、遺産分割協議成立申立書は遺産分割協議が成立しており、その他の相続人が遺産分割協議成立申立書を使用して自動車手続を行うことに同意することが必要です。何かトラブルが生じても全責任を負うことを誓約した内容になっているので遺産分割協議が成立していないにも関わらず勝手に遺産分割協議成立申立書を使用 して登録することがないように注意してください。

まとめ

今回は移転登録ではなく、相続が発生した場合についてご紹介しました。所有者が亡くなるため、相続といった特殊な手続きとなります。

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