【行政行為について②】~行政書士試験合格者が解説~

行政書士業務

今回の記事は行政書士のメイン業務である許認可に必要な行政裁量と行政行為の効力についての知識をご紹介します。今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、許認可業務に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。

行政裁量とは

法律で行政の活動すべてを規定することができないため、行政機関には一定の範囲において裁量(行政庁自身で判断し処置すること)が認められています。
これが「行政裁量」です。行政行為に裁量が認められるとしても、範囲はどこまでも認められるわけではありません。そしてその裁量は、以下4つに分類できます。

・法律「要件」の部分に裁量を認めるのか(要件裁量
・法律「効果」の部分に裁量を認めるのか(効果裁量
効果裁量において、
→そもそも行政行為をするかしないかの裁量(決定裁量
→どのような行為を選択するのか(選択裁量

行政裁量に対する司法審査は、「裁量権の逸脱又は濫用」がある場合に限られています。

「裁量権の逸脱」:与えられた権限を越えること
「裁量権の濫用」:与えられた権限の範囲内ではあるものの、妥当性に欠けること

「裁量権の逸脱又は濫用」があると、行政裁量は認められないということになります。

行政行為の効力

行政庁が行った行政行為は、 特殊な効力を有しています。効力には、公定力、不可争力、自力執行力、不可変更力があります。なお、これらの効力は、すべての行政行為に対して一律に認められるものではありません。

公定力

公定力とは、仮に違法な行政行為がなされた場合でも、それ が無効な行政行為でない限り、取り消されるまでは有効な行為として扱われる効力をいいます。公定力を正面から認めた規定はありませんが、行政法関係の安定性の維持、国民の信頼保護の観点から認められる効力です。

不可争力

不可争力とは、行政行為がなされてから一定期間が経過すると、もはや国民のほうからその効力を、不服申立てや取消訴訟によって争うことができなくなる効力をいいます。行政行為は多くの人々に影響を与える行為であるため、早期にその効力を安定させる必要があります。その観点から認められる効力です。なお、行政庁自身は職権でいつでも取り消すことができます。

自力執行力

自力執行力とは、 行政行為の内容を行政庁が自力で強制的に実現できる効力をいいます。自力執行力は非常に強力な効力であり,行政権濫用のおそれがあるため、法律の根拠がある場合にのみ認められます。例え ば、税金の取立ては、国税徴収法,地方税法によって自力執行力が認められています。

不可変更力

不可変更力とは、行政庁自身も、もはやその行政行為を取消し・変更できなくなる効力をいいます。審査請求における裁決などの準司法的な行政行為にのみ認められる効力です。この効力は、紛争解決という目的を達成するために認められます。なお、裁判所は取り消すことができます。

行政行為の瑕疵

違法な行政行為はもちろん是正されるべきですが行政行為には「公定力」があるためいったんは一応有効なものとして取り扱い、権限のある行政機関や裁判所により取消しされることによってはじめて、その効力が否定されます。
しかし、この重大かつ明白な瑕疵がある場合(もうどう考えてもめちゃくちゃな場合)には、公定力が生じず無効と判断されることがあります。

行政行為の取消と撤回

何らかの瑕疵が認められた際に行うといった共通点があるものの、その時期が異なり、行政行為の「取消し」の場合、成立時に何らかの瑕疵が認められ、その成立時にさかのぼり効力が消滅するものとなります。
その一方、行政行為の「撤回」の場合、成立時に何らかの瑕疵が認められ、その時点から将来に向い効力が消滅するものとなります。

行政行為の瑕疵の取り扱いの例外:瑕疵の治癒・違法行為の転換・違法性の継承

行政行為に瑕疵があったとしても、必ずしも取消されない場合があります。

瑕疵の治癒

「瑕疵がある行政行為ですが軽微なものなので後で取り消してしまうよりは是正をすることによりその効力を維持しよう」という考えです。

違法行為の転換

「瑕疵ある行政行為を別の行政行為としてみた場合に、それが有効であると扱っておこう」という考えです。

違法性の承継

数個の行政行為が連続して行われている場合、先行行為と後行行為が連続して行われ、結合して一つの効果の実現をめざし、これを完成させるという場合に、先行行為の違法性が後行行為に承継されるという考え方もあります。違法な行政行為は当然、行政庁等が「取消し」することがあります。

まとめ

今回は行政の裁量とその効果、瑕疵があった場合の対応についてまとめました。試験にも出ている内容ですので改めて復習になればと思います。

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