今回の記事も地方自治体で働いている私の視点から行政と事業者が連携しビジネス展開するための情報についての記事を書いていきます。
今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、経営をしているの知識が増えてもらえればと思います。
今回の記事は、行政書士試験にも出題される行政不服審査法について説明します。行政不服審査法とは行政が下した判断に対して取消や変更を求めることが出来る制度です。自治体ビジネスを展開する上で、損害が生じそうになった時にどのように解決するのかが重要となります。そのため行政不服審査法に当てはまるのかということを検討するために必要な知識ですので参考にしてください。
行政不服審査法とは
行政不服審査法とは、行政庁の違法又は不当な処分等に対して、国民の権利利益の救済を図り、行政の適切な運営を確保することを目的とした法律です。
行政不服審査法第1条(目的等)
この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
不服申し立ての種類
行政不服審査法では、以下の「不服申立て制度」が規定されています。
①審査請求
②再調査の請求(※個別法に規定がある場合のみ)
③再審査請求(※個別法に規定がある場合のみ)
ただし、実質的に不服申し立てする際はほぼ①審査請求になります。
なぜなら、②再調査の請求と③再審査請求については、法律(個別法で)にその請求を認める旨の規定がある場合のみ行使できるからです。
「審査請求」とは、処分(又は不作為)をした行政庁(処分庁・不作為庁)又は行政庁以外の行政機関(上級行政庁や第三者機関)に対して不服申立てをするものです。
・処分=行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為
・不作為=法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと
審査請求はどこにするのか?
処分庁(処分をした行政庁)は、不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、申し立て先や期間を教示しなければならないとなっているため、書面で不服申し立てる場所を確認しましょう。
どのような方法で、いつまでに審査請求できる?
審査請求は、書面(審査請求書)に必要事項を記載して審査請求先に提出します。
処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に行います。審査請求先とされている行政庁に対してしなければなりません(再調査の請求も同様。)
ただし、再調査の請求についての決定を経た場合の審査請求は、その決定があったことを知った日の翌日から起算して1月以内にしなければなりません。
再審査請求については、審査請求についての裁決があったことを知った日の翌日から起算して1月以内にしなければなりません。なお、処分又は裁決があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、その後に処分又は裁決があったことを知った場合であっても、原則として、不服申立てをすることができません。
手続きの流れはどのようになる?
審査請求の審理手続は、原則として「審理員」が行います。審理員が「審理員意見書」を取りまとめて、審査庁に提出します。原則書面で行われますが、申立てをすることで、審査請求人や参加人は、審理員に、証拠書類や証拠物を提出することができます。
審査の結果、以下の「裁決」が行われます。
- 認容(処分の全部又は一部の取消しなど)
- 棄却(審査請求に理由がないとき)
- 却下(審査請求が法定の期間経過後にされたものであるなど不適法である場合)
行政不服審査が出来ない場合
行政不服審査法で規定されている審査請求に対象にならない例外事項=適用除外事項があります。主に国の決定や慎重な捜査が必要になるような事項に関しては行政不服審査の適用除外となっています。
1.国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分
2.裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分
3.国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分
4.検査官会議で決すべきものとされている処分
5・当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの
6・刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分
7・国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは8・税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分
9・学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、10.講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分
11.刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分
12.外国人の出入国又は帰化に関する処分
13.専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
14.この法律に基づく処分(行政不服審査会の設置及び組織に関する規定を除く。)
まとめ
行政書士試験にも出題される行政不服審査法の概要について説明しました。実際には原告適格や審査後の流れ、裁決などの細かな決まりがありますがそこまで専門的になる必要はありませんので、概要だけ知ってもらえればと思います。
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