今回の記事も地方自治体で働いている私の視点から行政と事業者が連携しビジネス展開するための情報についての記事を書いていきます。
今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、経営をしているの知識が増えてもらえればと思います。
今回の記事は、行政の処分が不服だった場合に不服申し立てを裁判所に行う、行政事件訴訟法についてご紹介します。自治体ビジネスを展開する上で、損害が生じそうになった時にどのように解決するのかが重要となります。
行政事件訴訟法とは
行政事件訴訟法は、行政機関による違法な行政行為を裁判で争い、国民の権利利益を保護するための法律です。行政行為の適法・違法を判断対象とするものであり、原則、当・不当は対象とはなりません。
訴訟類型 | 説明 | 例 |
---|---|---|
抗告訴訟(主観訴訟) | 行政庁の決定に不服がある場合に起こす訴訟 | 営業許可の取消処分、税金の賦課処分、建築許可の不許可処分など |
当事者訴訟(主観訴訟) | 行政と国民、または国民同士が、法律上の権利や義務について争う訴訟 | 国有地の売買契約に関する紛争、公務員の人事に関する紛争など |
民衆訴訟(客観訴訟) | 国や地方公共団体の違法な行為を正すための訴訟 | 市長が税金を使って豪華な海外旅行に行っていた場合など |
機関訴訟(客観訴訟) | 国や地方公共団体の機関同士が、権限の範囲などを争う訴訟 | 国と都道府県が、ある政策の権限について争っている場合など |
抗告訴訟
「抗告訴訟」とは、行政機関による公権力の行使に対して不服がある場合に提起する訴訟のことをいいます。行政と国民が非対等な立場で争うものです。
- 処分の取消しの訴え
- 裁決の取消しの訴え
- 無効等確認の訴え
- 不作為の違法確認の訴え
- 義務付けの訴え
- 差止めの訴え
処分の取消しの訴え・裁決の取消しの訴え
「取消訴訟」とは、行政機関による違法な行政処分の取消しを求める訴訟のことをいい、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」に分類されます。
「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為の取消しを求める訴訟です。
「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決や決定等の行為の取消しを求める訴訟です。
行政事件訴訟法
第3条2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3項 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
無効等確認の訴え
「無効等確認の訴え」とは、行政庁の処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟のことをいいます。取消訴訟と異なり、出訴期間の制限がありません。
行政事件訴訟法
第3条4項 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
第36条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。
不作為の違法確認の訴え
「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしない場合について違法の確認を求める訴訟のことをいいます。
行政事件訴訟法
第3条5項 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
第37条 不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。
義務付けの訴え
「義務付けの訴え」とは、行政庁に一定の処分又は裁決をするよう求める訴訟のことをいいます。「義務付けの訴え」には、①非申請型義務付け訴訟(1号義務付け訴訟)と②申請型義務付け訴訟(2号義務付け訴訟)の2種類に分類されます。
①非申請型義務付け訴訟(1号義務付け訴訟)は行政庁が一定の処分をすべきにもかかわらず、これがなされない場合に提起できる訴訟です。
②申請型義務付け訴訟(2号義務付け訴訟)は国民からの法令上の申請に基づいて行政庁が一定の処分又は裁決をすべきであるにもかかわらずこれがなされない場合に提起できる訴訟です。
行政事件訴訟法
第3条6項 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
差止めの訴え
「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきではないにもかかわらずこれがなされようとしている場合に提起する訴訟のことをいいます。
行政事件訴訟法
第3条7項 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。
第37条の4 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
まとめ
今回は行政事件訴訟法の概要と抗告訴訟の種類についてご紹介しました。次回も行政事件訴訟法についてご紹介します。
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