【行政不服審査の代理人:特定行政書士とは】~行政書士試験合格者が解説~

行政書士業務

今回の記事も地方自治体で働いている私の視点から行政と事業者が連携しビジネス展開するための情報についての記事を書いていきます。
今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、経営をしているの知識が増えてもらえればと思います。
今回の記事は、前回紹介した行政の不服申し立てなどややこしいことは出来ないと言った場合に、許認可手続きから一貫して不服申し立てまで出来る特定行政書士について説明します。自治体ビジネスを展開する上で、損害が生じそうになった時にどのように解決するのかが重要となります。そのため行政不服審査が出来る特定行政書士の存在は必要となります。

特定行政書士とは

従来は、行政不服審査法に基づく行政不服審査手続きを業として行えるのは、弁護士に限られていました。しかしながら、行政書士法が改正されて(平成26年6月27日公布)、弁護士だけでなく、行政書士にも行政不服審査法の代理権が付与されることになりました。この行政不服審査法の代理権を有する行政書士を【特定行政書士】といいます。

【行政書士法 第一条の三 二項】
行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。

【特定行政書士ができること】※行政書士が代理で申請した手続きに限る。

 審査請求とは

「審査請求」とは、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為によって不利益を受けた国民が、不服を申し立て、行政庁が審査する手続です。基本的には、処分庁の最上級行政庁が審査請求先となります。不服申立ての原則は、この「審査請求」です。

再調査請求とは

「再調査請求」とは、審査請求をする前に、処分庁に対して直接、再調査を請求する手続きです。「再調査請求」は、法律に特別の定めがある場合のみ、行うことができます。

再審査請求とは

「再審査請求」とは、「審査請求」に対する裁決に不服がある場合、「審査請求の裁決」又は「処分」を対象に、再度審査を請求する手続きです。「再審査請求」についても、法律に特別の定めがある場合のみ、行うことができます。

特定行政書士

特定行政書士になる前提条件は「行政書士の資格を保持している者」であること。
そのうえで、特定の研修を受ける必要があります。
 
1.都道府県で行われる「特定行政書士法定研修」へ参加する(平日4日間または土曜4週)
2.10月に開催される試験を受ける
3.2カ月後に結果発表が行われ、合格者は「特定行政書士」の認定を受ける
研修は1コマあたり1時間、4回で全18時間となります。
10分以上中座をしてしまうと再受講が必要になりますので、注意しましょう。
 
試験は全30問、毎年の合格基準ラインは「正答率6割」です。受験者の合格率は約7割というデータもあります。

1.都道府県で行われる「特定行政書士法定研修」へ参加する

令和5年度の特定行政書士法定研修の概要は下表のとおりです。実務経験は求められていないため、1年目の行政書士でも、申込さえすれば研修を受講することができます。

受講資格行政書士(申込時点において、
行政書士名簿に登録されている者)
受講料8万円(テキスト代含む)
講義時間18時間
※ビデオ・オン・デマンドシステム
 による受講
受講期間2023年8月1日(火)〜9月20日(水)
講義科目行政法総論(1時間・1コマ)
行政手続制度概説(1時間・1コマ)
行政手続法の論点(2時間・2コマ)
行政不服審査制度概説(2時間・2コマ)
行政不服審査法の論点(2時間・2コマ)
行政事件訴訟法の論点(2時間・2コマ)
要件事実・事実認定論(4時間・4コマ)
特定行政書士の倫理(2時間・2コマ)
総まとめ(2時間・2コマ)
(参考:日本行政書士会連合会 令和5年度特定行政書士法定研修 募集要領

2.10月に開催される試験を受ける

考査は、マークシートによる30問択一式問題で行われます。考査の合格基準点は、例年「およそ6割程度」だとされています。

特定行政書士になるメリット

この章では、特定行政書士になるメリットについて解説します。特定行政書士になると、例えば以下のようなメリットがあります。

業務領域が広がる

特定行政書士になるメリットの1つ目は、業務領域が広がります。特定行政書士になると、「不服申立て」の手続きといった通常の行政書士にできない業務についても、取り扱うことができるからです。
例えば、許認可申請をメインとして取り扱っている行政書士が、「万が一、申請が不許可となった場合は、不服申立ての手続きまで一貫してサポートします」などとアピールすることで、クライアントは安心して依頼することが出来ます。

他の行政書士と差別化ができる

特定行政書士になるメリットの2つ目は、他の行政書士と差別化ができます。
例えば、日本行政書士会連合会の「行政書士会員検索」によると、行政書士(個人)全体の登録人数は「52,067人」(令和6年3月1日時点)となっています。一方で、特定行政書士の人数は「5,212人」となっており、全体の「およそ10%」程度しか存在していません。まだまだ希少性が高いといえます。

まとめ

今回は行政書士の中でもまだまだ数の少ない特定行政書士についてご紹介しました。私も行政書士として活動する際には是非目指したい資格です。

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