今回の記事も行政書士の補助金業務についての記事を書いていきます。コロナ時期には様々な補助金があり各種士業が新たな業務として取り入れました。最近では、補助金申請を代行することに規制がかかり始めましたが、補助金申請コンサルは未だに可能です。
今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、経営をしているの知識が増えてもらえればと思います。
今回の記事は補助金を取得する際に知っておかないと怖い「補助金適正化法」についてご紹介したいと思います。
補助金適正化法とは
補助金適正化法とは、補助金の不正受給や不適切な使用を防止するための法律です。補助金の申請から交付、使用、報告までの一連の流れについて規定しており、違反した場合は補助金の返還や刑事罰、社名公表などの厳しい処分があります。
第1条(この法律の目的)
この法律は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とする。
補助金の対象
補助金適正化法の対象となる「補助金等」は、第2条で次のように定義されています。
第2条(定義)
この法律において「補助金等」とは、国が国以外の者に対して交付する次に掲げるものをいう。
一 補助金
二 負担金(国際条約に基く分担金を除く。)
三 利子補給金
四 その他相当の反対給付を受けない給付金であつて政令で定めるもの
補助金の申請と決定
法第5条~10条は補助金の申請と決定で、行政側の行為であるため割愛します。
- 事業の目的と内容、必要経費や記入項目など、申請に必要な基本的手続きについて規定されています(第5条)
- 補助金交付の条件規定で、事業内容の変更や中止などの際に発生する報告義務が規定されています(第7条)
法のポイント
補助金の用途は必ず守らなければいけなりません。法11条には補助金の公募には必ず利用目的があり、支給決定がされた場合はその利用目的で使用をしないといけないと規定されています。違反すると3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
・補助金等の交付決定の取消(第17条)
・補助金等の返還(第18条)
・加算金・延滞金の納付(第19条
が併科されます。
法11条
第十一条 補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、**善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用(利子補給金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより、補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。
補助金適正化法における「補助金等の取消」(第10・17条)
補助金適正化法において「補助金等の交付決定の取消」となるケースには、第10条、17条の2つがあります。
第10条では、「交付決定後、天災地変などで補助事業等の全部又は一部を継続する必要がなくなった場合」に、事情変更による交付決定の取消等が行えるとしています。ただし、補助金等の交付の決定の取消によって、「特別に必要となつた事務・事業」に対しては、補助金等が交付されます。
第17条では、補助事業者が次のような「義務違反」を行った場合には、補助金等の交付の決定の全部または一部を取り消せるとしています。
- 補助金等を他の用途へ使用したとき
- 補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容またはこれに附した条件に違反した
- 法令またはこれに基く各省各庁の長の処分に違反した
なお、補助金の返還には「加算金」が付加され(第19条)、さらに罰則規定が適用されることもあります。
補助金適正化法における「補助金等の返還」(第18条)
補助金適正化法では、補助金等の交付決定を取り消した場合で、すでに補助金等が交付されているとき交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているとき場合に「各省各庁の長は、期限を定めて返還を命じなければならない」と定めています(第18条)。
第18条
各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
2各省各庁の長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
3各省各庁の長は、第一項の返還の命令に係る補助金等の交付の決定の取消が前条第二項の規定によるものである場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、返還の期限を延長し、又は返還の命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
補助金適正化法における財産処分の制限(第22条)
補助金適正化法では第22条において、次のように「補助事業等によって取得した財産処分の制限」を規定しています。
第22条(財産の処分の制限)
補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。
補助金適正化法に違反したときの罰則
法のポイントで紹介した法第11条以外にも以下のような罰則があります。
補助金を不正受給した場合の罰則(第29条)
補助金適正化法の違反では、「補助金を不正受給した場合(偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者)」の罰則は5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金となります。
一時停止命令などの義務違反をした場合の罰則
下記の違反行為を行った場合には、3万円以下の罰金が処せられます(第31条)。
- 補助事業等の遂行の一時停止命令に違反した
- 補助事業等の成果の報告をしなかった
- 各省庁の職員による立入検査等について、規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした
まとめ
今回は知らないとトラブルになりかねない補助金の適正化法についてご紹介しました。通常の使用目的に変更がなければ罰則などはないので、補助金の趣旨を理解し申請しましょう。
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