今回の記事は行政書士のメイン業務である許認可についていくつかご紹介していきたいと思います。今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、会社設立業務に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。
行政書士の行う許認可業務は多岐にわたり存在し、取り扱う書類の数も1万種類あると言われています。許認可業務の数が多くありますが、行政書士業務の花形業務と呼ばれている建築業許可についての記事を書いていきたいと思います。今回は前回ご紹介した一般建築業と特定建築業の要件について説明します。
要件
一般建築業と特定建築業の要件について説明します。
一般建設業に必要な要件
適正な経営体制を有する
「適正な経営体制を有する」とは、経営業務の管理責任者を設置していることを指します。これは建設業の経営が他の産業の経営とは著しく異なる特徴を有するため、適正な業務運営のため必要とされる要件です。
取締役や事業主など、一定の立場で建設業の経営を5年以上(一部補助業務について6年以上)の実務経験を有する者等がこれに該当します。
「適切な社会保険に加入している」とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険等の各種社会保険に関して適用事業の事業所に該当するすべての事業所について加入することが要件となっています。健康保険・厚生年金保険について、株式会社は基本的に加入が必須です。
専任技術者の配置
「営業所ごとに専任技術者を設置する」とは、一定の資格または経験を有した者を営業所ごとに設置する要件です。建設工事に関する請負契約の適正な締結をするためには専門の知識が必要とされます。
見積、入札、請負契約等の建設業の業務は各営業所で行われることから、各営業所での設置が義務付けられています。
一般建設業の許可取得の場合の専任技術者の概要は下記のとおりです。
- 指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務経験を有する者
- 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
- 許可を受けようとする建設業に関する建設工事に関して、10年以上実務経験を有する者
- 国家資格者(業種により1級または2級)
- 複数業種に係る実務経験を有する者
不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと
「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれがないこと」は誠実性の要件です。契約の締結や履行に際して不正または不誠実な行為をすることが明らかである場合には建設業を営むことができないため、許可申請をすることができません。
財産的基礎又は金銭的信用を有している
「財産的基礎又は金銭的信用を有している」とは円滑な業務運営ができる状態にあるかを財産的な観点から審査をするための要件です。建設工事を行うにあたっては、資材の購入や、労働者の確保、必要機材の購入などの一定の準備資金が必要です。
建設業の許可が必要となる工事の受注ができる体制にあるのかを財産基盤をもとに審査するための許可要件です。
一般建設業許可の欠格要件
欠格要件は下記のとおりです。
- 許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合。
- 法人にあっては、当該法人、当該法人の役員等、法定代理人、支店又は営業所の代表者、個人にあってはその本人又は支配人等が、建設業法8条に掲げる要件に該当する場合。
建設業法8条
- 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
- 第29条第1項第五号又は第六号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 第29条第1項第五号又は第六号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日から当該処分があつた日又は処分をしないことの決定があつた日までの間に第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から5年を経過しないもの
- 前号に規定する期間内に第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出があつた場合において、前号の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等※若しくは政令で定める使用人であつた者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であつた者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
- 第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
- 許可を受けようとする建設業について第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
- この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から5年を経過しない者
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(13において「暴力団員等」という。)
- 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号(法人でその役員等のうちに第一号から第四号まで又は第六号から前号までのいずれかに該当する者のあるものにかかる部分に限る)のいずれかに該当するもの
- 法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第九号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第29条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの
- 個人で政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第九号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第29条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第12条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第29条の四の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配する者
特定建設業許可はさらに厳格な要件が求められる
一般建設業と特定建設業では許可要件に共通の部分もありますが、特定建設業では、より厳格な要件が求められます。
専任技術者の要件を満たす国家資格の難易度が高い
建設業の許可で必要とされる専任技術者ですが、特定建設業では一般建設業よりも要件が厳しくなっています。例えば、一般建設業で認められていた専任技術者が一部認められなくなります。
具体的には、一般建設業で認められていた2級国家資格者が認められず1級のみ、実務経験者についても指定建設業以外の業種で、かつ、元請として4500万円以上の工事に関し2年以上の指揮監督的な実務経験を有する者とされています。特定建設業の専任技術者として認められるための要件は下記のとおりです。
- 国家資格者(1級施工管理士、1級建築士 等)
- 一般建設業の専任技術者となり得る技術資格要 件を有し、かつ、許可を受けようとする建設業に 係る建設工事に関して、発注者から直接請け負 い、その請負代金の額が4500万円以上であるものについて2年以上の指導監督的な 実務の経験を有する者
資格要件に関しては、業種毎に専任技術者になるための資格が定められていますので、詳細に関しては国土交通省のホームページをご確認ください。
財産的基盤は資本金2000万円以上必要
特定建設業の許可を受けようとする場合は、財産的基盤等の要件が一般建設業よりも厳しく設定されています。一般建設業は3つの要件のいずれかに該当することが要件ですが、特定建設業は3つの要件すべてに該当することが必要となっています
一般建設業は下記のいずれかに該当することが求められます。
- 自己資本が500万円以上であること
- 500万円以上の資金調達能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
特定建設業は、下記のすべてに該当していなければなりません。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4000万円以上であること
これは、特定建設業者は多くの下請負人を使用して工事を施工すること、健全な経営が要請されること、また、発注者から請負代金の支払いを受けていない場合であっても下請負人には工事の目的物の引渡しの申し出がなされてから50日以内に下請代金を支払う義務が課せられていること等の理由によるものです。
まとめ
一般建築業と特定建築業の要件をみればしっかりとした事業が行われていることが重要であると分かりますね。許可を受けることで一定の質の担保がされ安心して業務を依頼することが出来るようになります。
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