今回の記事は行政書士のメイン業務である許認可についていくつかご紹介していきたいと思います。今回の記事を読んでいただくことで、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、会社設立業務に興味がある方の知識が増えてもらえればと思います。
行政書士の行う許認可業務は多岐にわたり存在し、取り扱う書類の数も1万種類あると言われています。許認可業務の数が多くありますが、行政書士業務の花形業務と呼ばれている建築業許可についての記事を書いていきたいと思います。今回は営業所の場所によって変わる許可の指定先の違いについて説明します。
知事許可と大臣許可
許可行政庁(大臣許可と知事許可)
建設業許可は、どこがその許可を出すのかで、まず大きく2種類に分かれます。それぞれ「大臣許可」と「知事許可」と呼ばれており、その違いは営業所がどこにあるかという点です。
- 大臣許可:2ヵ所以上の都道府県に営業所を設けている場合
- 知事許可:1つの都道府県に営業所を設けている場合
大臣許可と知事許可を区別する条件は上記のみであり、例えば全国どこでも工事をするが営業所は1つしかないというのであれば知事許可、逆に1つの都道府県でしか工事はしないが2ヵ所以上の都道府県に営業所があれば大臣許可、複数の営業所があるがすべて同じ都道府県にある場合は知事許可となります。
営業所とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいいます。「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とは請負契約の見積り、入札、契約締結等に係る実態的な行為を行う事務所をいいます。登記上の本店、単なる事務連絡所、工事事務所、作業所は営業所に該当しません。営業所は少なくとも次の要件を備えていなければなりません。①契約締結に関する権限を委任されていること。②建設業の営業を行うべき場所を有し、電話、机、各種事務台帳等を備えていること。したがって、実質的な契約行為を行っている事務所は、建設業法上の営業所の届出をしなければならないことに注意してください。上記の要件を満たし、かつ専任技術者が常勤していることが必要です。
申請手続きの違い
「大臣許可」と「知事許可」では、申請手続きにおいても異なる点を申請方法、提出先、必要書類、審査基準、更新手続きの違いについて説明します。
申請方法と提出先の違い
大臣許可の申請は国土交通大臣が許可権者であるため、申請書類は建設業を管轄する地方整備局などを通じて国土交通省に提出します。
知事許可は、営業を行う都道府県の知事が許可権者です。たとえば大阪府内のみで営業を行う場合、大阪府知事の許可を受けるために、大阪府庁の担当部門へ申請書類を提出します。
必要書類の違い
大臣許可と知事許可で必要とされる書類には共通するものも多いですが、大臣許可の方が一般的に求められる書類や情報が多く、準備に時間を要することになります。両者に共通して必要な書類には、次のようなものがあります。
- 会社の基本情報(登記簿謄本や代表者の住民票など)
- 業務内容や財務状況を示す書類
- 従業員の資格や経験を証明する書類
- 許可を取得しようとする建設業種ごとの技術的能力を証明する資料
特に大臣許可の場合は、複数の都道府県にわたる業務展開を計画しているため、都道府県ごとの営業所情報や支店の所在地も細かく記載する必要があります。
許可の有効期間と更新手続きの違い
いずれの許可も、許可の有効期間は5年と定められています。5年ごとに更新手続きを行う必要があり、更新を怠ると許可が失効してしまうため注意が必要です。更新手続きの際も、許可申請と同様に書類を整える必要がありますが、更新審査は新規申請に比べて比較的簡易的です。ただし、大臣許可の場合、複数の都道府県にまたがる営業を行っているため、更新の際も広域的な視点での審査が行われます。更新手続きに必要な書類も多く、特に各都道府県に設置している営業所の状況を報告する書類が加わるため、準備には一定の時間がかかります。
許可申請の期間
申請から許可が下りるまでの期間は、通常2〜4ヶ月程度です。特に大臣許可は複数の都道府県をまたぐ営業を前提とした審査となるため、準備する書類や情報が多く、審査も厳しくなります。
許可の変更
大臣許可または知事許可の変更には新たな申請手続きが必要となり、現在の許可を返納した後に再度の許可取得となります。たとえば、大阪府で知事許可を取得していた業者が京都府でも営業を開始したい場合、大臣許可への切り替え申請が必要になります。
まとめ
今回は営業所の場所によって変わる許可指定先について説明しました。営業所が都道府県内で終えるのであれば知事許可ですが、複数の都道府県にまたがる場合は大臣許可が必要となりますので、確認しておきましょう。
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