今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。福祉事業を行う上で作成しなければならない、個別支援計画について紹介したいと思います。
個別支援計画とは
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」の中で個別支援計画書の作成が義務付けられています。
(障害福祉サービス事業者の一般原則)第三条
障害福祉サービス事業を行う者(以下「障害福祉サービス事業者」という。)(次章から第八章までに掲げる事業を行うものに限る。)は、利用者の意向、適性、障害の特性その他の事情を踏まえた計画(以下「個別支援計画」という。)を作成し、これに基づき利用者に対して障害福祉サービスを提供するとともに、その効果について継続的な評価を実施することその他の措置を講ずることにより利用者に対して適切かつ効果的に障害福祉サービスを提供しなければならない。
参考様式
・個別支援計画参考様式
・【別添】生活介護における個別支援計画書参考様式[18KB](出典:厚生労働省)
・個別支援計画会議録(エクセル:24KB)(出典:宮城県)
個別支援計画作成までの流れ
個別支援計画の作成が必要なことは分かりましたが、どのように個別支援計画を作成していくのかを説明します。
➀アセスメント
利用者と面談し、聞き取りをします。原則、 サービス管理責任者が面談します。見学 体験時に行う場合もあります。本人の障害特性を把握し、現状の課題や本人、家族のニーズを整理します。
➁個別支援計画の原案
アセスメントを元に、個別支援計画原案を作成します。利用者の生活に対する意向や総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、提供するサービスの目標と達成時期、サービスを提供する上での留意事項などを盛り込みます。独自のフォーマットを使用しても構いませんが、必ず記載しなければならない内容がいくつかあります。
- 利用者や保護者の希望や、考える課題
- 短期目標と長期目標(GHであれば、健康面・衛生面・経済面など。就労系であれば作業面・対人関係や社会生活面など)利用者に頑張ってもらうことなど
- 具体的な支援内容(利用者が思う支援してもらいたい内容などを含む)
- 支援期間
- 優先順位
上記が挙げられますが、市町村によっては「こういう内容を入れてください」と指摘されることもあります。詳細は市町村に問い合わせてみたほうが間違いないでしょう。
③サービス担当者会議
施設職員で作成した個別支援計画の原案の内容について担当者会議を行います。アセスメントと現状のずれがないかを把握し、話し合いを元に、短期目標、長期目標など計画の詳細な内容を作成します。
➃計画の修正、利用者の同意と署名
担当者会議を元に修正した計画を、実際の計画書を示しながら利用者に説明、交付した上で、同意と署名を貰います。押し印が慣例となっていますが、自治体によっては署名のみという自治体もあるようです。
➄サービス提供(モニタリング)
個別支援計画に基づき、サービスを提供します。また、経過をモニタリングとして記録しておきます。
⑥更新
6か月以内に、 個別支援計画を更新します。更新の際にも、同意と署名が必要です。
個別支援計画書作成に必要な書類
サービス担当者会議録
アセスメントシート
面接記録
個別支援計画原案
担当者会議録
個別支援計画書(作成者、利用者の署名)
支援記録
モニタリング
個別支援計画の作成のポイント
相談支援事業者が作成したサービス等利用計画がある場合はそれを基に作成します。サービス利用計画の目標が個別支援計画の目標と異なってはいけません。
個別支援計画書の不備は処罰の対象となる
個別支援計画書の作成に不備があった場合、就労支援系や放課後デイ、児童発達支援等の障害福祉サービスにおいて、「個別支援計画未作成減算」が適用され、報酬を減算されます。また、作成されているかどうかだけではなく、正しいプロセスで作成されているかどうかも判断のポイントとなります。また、長期にわたり個別支援計画が作成されていない等の場合は、行政指導の対象となったり、最悪指定取り消しになる可能性もあります。個別支援計画書は、正しいプロセスに沿って速やかに作成することが重要です。
まとめ
今回ご紹介した個別支援計画はサービスを提供するうえで必要となる計画です。利用者一人ひとりに合わせたオーダーメイドで作成する必要があり、一度作成したからといってそのままで置いておくわけにはいきません。最低でも半年に1回作成が必要となりますので注意しましょう。また、利用者に計画相談員を利用している場合は、計画相談員との連携も必要になります。
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