今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。障害福祉事業の制度改正と改正までの流れをご紹介します。3年に1回の改正ですが、改正がどのようにされるのかを確認することが事業を安定されるために必要ですので是非参考にしてください。
報酬改定・制度改正とは
障害福祉サービスなど障害者総合支援法に基づく事業は、その報酬や指定基準などが3年ごとに見直されます。これを「報酬改定」「制度改正」と呼びます。障害者総合支援法は、就労や地域生活におけるニーズの変化や医療的ケアの必要性など、障害のある人を取り巻く支援課題は変わり続けています。また社会情勢によって事業所運営や職員を取り巻く課題も変わり続けているため、変化に合わせるため、事業の報酬体系や指定基準などは定期的に見直され続けています。見直しの頻度は3年ごとですが、必要に応じて臨時で実施されることもあります。
制度改正の流れ
障害福祉サービスの報酬改定・制度改定は、下記の流れで進められています。
2023年5月
障害福祉サービス等報酬改定検討チームより、今後の検討の進め方について発表
7~8月
49の関係団体にヒアリングを実施。その後、ヒアリング内容が整理され、主な論点(案)が発表
9~10月
報酬内容などの個別検討
11月
サービス全体の横断的事項についての検討
12月
基本的な方向性の整理・取りまとめ
2024年2月
報酬改定案のとりまとめ
2月~3月上旬
パブリックコメントでの意見募集
3月
関係告示の改正、通知の発出
4月
改定内容が施行
2024年制度改正の考慮項目
2024年の制度改正に考慮された項目についてご紹介します。
- 障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
- 社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
- 持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し
障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
障害者が、自分の望む地域で自分らしく安心して生活できるよう、充実した支援を目指すものです。
1.障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実
地域移行に関する本人の希望の実現や地域生活支援拠点の整備、支援に対する評価の適正化などがポイントとして挙げられます。
2.医療と福祉の連携の推進
医療と福祉の連携についても焦点が当てられます。主な取り組みとしては、「福祉型短期入所サービスにおける医療的ケア児者の受入れ促進」「相談支援における医療等の多機関連携のための各種加算の拡充」などが挙げられます。
3.精神障害者の地域生活の包括的な支援
精神障害者が安心して生活を送ることができるよう、多職種が連携した包括的な支援を充実させるものです。
社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
障害児の健やかな成長や、障害を持った人が活躍できる社会の実現を後押しするためには、障害福祉サービスの充実が欠かせません。「障害児に対する支援」と「障害者の就労」の2軸で改定が行われます。
1.障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築
障害を持つ児童の成長を支援するための、質の高いサービス提供に関する内容です。「児童発達支援・放課後等デイサービスにおけるサービス提供時間に応じた評価の導入」「支援ニーズの高い児童への評価拡充」などが挙げられます。
2.障害者の多様なニーズに応じた就労の促進
障害者が希望する働き方やキャリア形成を実現するための支援を目指し、評価項目や報酬体系などが見直されます。
持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し
「現行の処遇改善加算の一本化」「各種様式の簡素化・標準化」など、業務の質や生産性を向上させるための改定が実施されます。
改定案に意見を伝えたい場合
制度改正が行われることで、障害サービス事業所にとって不都合な事態になる可能性があります。そうなる前に事前に意見を出す機会や調査がありますので、そこで改正前に意見を出していきましょう。
パブリック・コメントに意見を出す
パブリック・コメントは、国民が省令や告示に対して意見を述べられる数少ない機会です。パブリック・コメントに寄せられた意見が実際に解釈に影響を及ぼした例もありますので、基準や報酬に関する改正内容に疑問や懸念があれば意見を出すといいでしょう。
障害福祉サービス等経営実態調査に協力する
「障害福祉サービス等経営実態調査」は事業所の経営状況を把握するものです。この調査で回答した内容が、社会保障審議会(障害者部会)や障害福祉サービス等報酬改定検討チームが使用する大切な検討資料になります。
まとめ
今回は障害サービスの改正の流れについてご紹介しました。次回は2024年の障害サービス改正内容についてご紹介します。
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