今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。障害福祉事業の報酬改定がにより、今まで監査で指導されていた内容が、していないことにより減算対象となりました。そのため、知らずに減算による返還を求められないようにチェックしていきましょう。
令和6年度報酬改定
障害福祉サービスなど障害者総合支援法に基づく事業は、その報酬や指定基準などが3年ごとに見直されます。これを「報酬改定」「制度改正」と呼びます。障害者総合支援法は、就労や地域生活におけるニーズの変化や医療的ケアの必要性など、障害のある人を取り巻く支援課題は変わり続けています。また社会情勢によって事業所運営や職員を取り巻く課題も変わり続けているため、変化に合わせるため、事業の報酬体系や指定基準などは定期的に見直され続けています。令和6年4月に改正された項目から、減算項目をピックアップしたため、各事業所の状況をチェックしましょう。
虐待防止措置未実施減算の概要
令和4年度から義務化された障害者虐待防止措置を未実施の障害福祉サービス事業所等に対して、基本報酬が減算されます。
虐待防止措置未実施減算の対象事業者
全サービス
虐待防止措置未実施減算の算定要件
- 虐待防止委員会を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に周知徹底を図ること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと
虐待防止措置未実施減算の減算単位
基本報酬の1%を減算する
身体拘束廃止未実施減算の概要
2021年の報酬改定で身体拘束等の適正化のさらなる推進のため、運営基準において、施設・事業所が取り組むべき事項が追加され、同時に減算要件の追加も行われました。
下の記事で紹介していますが、記録や指針の整備、研修の実施等が満たせない事業所などは減算の対象となります。そして2024年の報酬改定では、身体拘束等の適正化の徹底を図る観点から、減算額が引き上げられました。
身体拘束廃止未実施減算の対象事業者
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、療養介護、生活介護、短期入所、施設入所支援、共同生活援助、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、福祉型障害児入所施設、医療型障害児入所施設
身体拘束廃止未実施減算の算定要件
下記のいずれか1つでも満たせない場合。
- 身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録すること。
- 身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。(令和3年度は努力義務化、令和4年度から義務化)
- 身体拘束等の適正化のための指針を整備すること。(令和3年度は努力義務化、令和4年度から義務化)
- 従業者に対し、身体拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。(令和3年度は努力義務化、令和4年度から義務化)
身体拘束廃止未実施減算の減算単位
施設・居住系サービス | 所定単位数の10%を減算 |
訪問・通所系サービス | 所定単位数の1%を減算 |
業務継続計画未策定減算の概要
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な障害福祉サービス等を継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症又は非常災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。その際、一定程度の取組を行っている事業所に対し経過措置が設けられました。
業務継続計画未策定減算の対象事業者
全サービス
業務継続計画未策定減算の算定要件
以下の基準に適応していない場合、所定単位数が減算されます。
- 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること。
- 当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること。
令和7年3月31日までの間、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」及び「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合には、減算を適用しない。
業務継続計画未策定減算の減算単位
所定単位数の3%を減算
療養介護、施設入所支援(施設入所支援のほか、障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設
所定単位数の1%を減算
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く。)、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く)
情報公表未報告減算の概要
利用者への情報公表、災害発生時の迅速な情報共有、財務状況の見える化の推進を図る観点から、障害福祉サービス等情報公表システム上、未報告となっている事業所に対する「情報公表未報告減算」が新設されました。
情報公表未報告減算の対象事業者
全事業者
情報公表未報告減算の算定要件
障害者総合支援法第76条の3の規定に基づく情報公表に係る報告がされていない場合
情報公表未報告減算の減算単位数
所定単位数の10%を減算
療養介護、施設入所支援(施設入所支援のほか、障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設
所定単位数の5%を減算
居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く。)、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く)
まとめ
いかがでしたでしょうか?令和6年の制度改正が行われてから半年が過ぎました。体制は確保できているか確認し、減算を回避しましょう。
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