今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。今回は障害福祉事業の3年に1回行われる運営指導についてご紹介します。運営指導時の確認されるポイントを押さえておきましょう。
運営に関するポイント
指定権者は、主に以下の項目について確認を行います。ただし、あくまでも一般的な目安となります。
運営に関する基準
①契約書及び重要事項施悦明書(書面確認)
重要事項説明書に記載すべき内容として次の項目があります。
① 事業者、事業所の概要(経営者の名称、主たる事務所所在地、連絡先など)
② 運営規程の概要(目的、方針、事業の主たる対象とする障がいの種類、営業日時、利用
料金、通常の事業の実施地域、提供するサービスの内容及び提供方法など)
③ 管理者氏名及び従業者の勤務体制
④ 提供するサービスの内容とその料金について
⑤ その他費用(交通費など)について
⑥ 利用料、その他費用の請求及び支払い方法について
⑦ 秘密保持と個人情報の保護(使用同意など)について
⑧ 事故発生時の対応(損害賠償の方法を含む)
⑨ 緊急時の対応方法
⑩ 苦情解決の体制及び手順、苦情相談の窓口、苦情・相談の連絡先(事業者、市町村窓口
(支給決定の自治体)、運営適正化委員会など)
⑪ 提供するサービスの第三者評価の実施状況(実施の有無、実施した直近の年月日、評価
機関名称、結果の開示状況)
⑫ 虐待防止について
⑬ 事業者、事業所、利用者(場合により代理人)による説明確認欄
⑭ サービス提供開始予定年月日
ポイント①:利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記載した重要事項説明書の内容は、事業の運営についての重要事項を規定した運営規程の内容と整合するものでなければなり
ません。記載内容については見直しの都度更新を行ってください。なお、運営規程の内容を変更
した場合は、変更届の提出が必要です。
ポイント②:重要事項説明書、契約書等については、利用申込者の障がいの特性に応じて、通常使用する書類とは別に、ルビ版、拡大文字版、点字版、録音テープ版等いろいろな障がいの人が理解できるものをあらかじめ作成するなど工夫する必要があります。
②サービスの提供の記録(書面確認)
利用者及び事業者が、その時点でのサービスの利用状況等を把握できるようにするため、事
業者は、サービスを提供した際には、当該サービスの提供日、提供したサービスの具体的内容
(例えば、身体介護と家事援助の別等)、実績時間数等の利用者に伝達すべき必要な事項を、サ
ービス提供の都度記録しなければならないとともに、記録した内容について利用者の確認を得
なければなりません。また、個別支援計画の見直しなど、今後のサービス提供に活かすことができるようサービス提供記録には、利用者の心身の状況等を詳細に記録する必要があります。
③提供拒否の禁止(ヒアリング)
原則として、利用申込みに対して応じなければならないことを規定したものであり、特に、障
がい支援区分や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものです。
提供を拒むことのできる正当な理由は、一般的には以下のものがあります。
① 当該事業所の従業者の勤務体制からは利用申込みに応じきれない場合
② 利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合
③ 当該事業所の運営規程において主たる対象とする障がいの種類を定めている場合であ
って、これに該当しない者から利用申込みがあった場合、その他利用申込者に対し自ら適
切な指定居宅介護を提供することが困難な場合
④ 入院治療が必要な場合
④勤務体制の確保等(書面確認)
・勤務予定表が事業所ごとに作成されていない。
・すべての従業者(管理者、医師、看護職員等を含む)が記載された勤務予定表となっていない。
・人員の基準(常勤換算等必要条件)が満たされているか、確認を行っていない。
・勤務予定表に従業者の日々の勤務時間、常勤・非常勤の別、職種、兼務関係等が明記されていない。
・加算の対象となる従業者の勤務時間が明記されていない。
・加算の要件を満たす人員配置となっているか、毎月確認していない。
・法人代表や役員が従業者として勤務した時間を把握していない。
➄事故発生時の対応
・事故・ひやり・はっと事例に関する記録様式(報告書、台帳等)が作成されていない。
・事故が発生した際に、利用者の家族、支給決定を行う市町村、都道府県等への連絡がされていない。
・事故の内容で「その後の経過」、「再発防止のための取組み」が記録されていない。
・事業所として、「再発防止のための取組み」が行われていない。
⑥会計の区分
・指定事業所(施設)ごとに経理が区分されていない。
・事業の会計とその他の事業の会計が区分されていない。
⑦個別支援計画の作成
・サービス管理責任者が、計画の作成や見直しに係る一連の手続きに関与していない。例えば、計画の作成に係る会議(個別支援会議)を開催し、計画の原案の内容について意見を求めることなど。
・個別支援計画が作成されていない。(提供するサービスの内容について、利用者又はその家族に対する説明が行われておらず、同意も得られていない。)
・個別支援計画を利用者に交付していない又は、利用者の同意及び交付を得た旨の署名等を得ていない。
・モニタリングの結果を記録していない。
令和6年度改正による項目
①業務継続計画の策定等
感染症や災害が発生した場合でも、必要な障がい福祉サービスが継続的に提供できる体制を構
築する観点から、全ての障がい福祉サービス等事業者を対象に、運営基準において、業務継続に
向けた計画等の策定や研修の実施、訓練の実施等が義務になりました。
②衛生管理等
感染症の発生及びまん延の防止等に関する取組の徹底を求める観点から、全ての障がい福祉サー
ビス等事業者を対象に、運営基準において、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シ
ミュレーション)の実施が義務になりました。
③虐待の防止
施設・事業所における障がい者虐待防止の取組を徹底するため、障がい者虐待防止措置を未実施
の障がい福祉サービス事業所等について、虐待防止措置未実施減算(所定単位数の1%の減算)
が創設されました。
④身体拘束等の禁止
令和 6 年度から身体拘束等の適正化の徹底を図るため、施設・居住系サービスについては、 身
体拘束廃止未実施減算の減算額が5単位から所定単位数の 10%に引き上げられ、訪問・通所系
サービスについては、減算額が5単位から所定単位数の1%に見直されました。
これらの項目については、実際のサービス提供現場の視察や職員へのヒアリングなども行われます。
まとめ
今回は運営指導時の行政が確認する運営状況の確認についてピックアップしました。人員基準や書類の確認などが行われますので、整備しておきましょう。
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