【生活保護の申請はどうしたらいい??】申請先や申請要件を解説します~現役福祉職公務員が分かりやすく解説~

救済処置支援

前回までは生活保護とはどんなお金が出るのかをお伝えしました。今回は生活保護を受給するための方法と申請の要件を解説していきたいと思います。生活保護を受給するためには、最低生活以下の収入や預貯金となっており、親族からの支援も受けれない状態であることを確認していく必要があります。そんな状態を説明するために必要な条件を解説していきますのでご確認下さい。
この記事を読むことで生活保護の受給要件が分かりますので、保護申請を検討されているかたには事前に確認することでスムーズな申請が出来ます。

生活保護の申請先

生活保護の申請先はお住いの市町村役場です。生活保護は住民票住所で判断するのではなく、実際にお住いの居所となります。申請後に調査員の家庭訪問がありますので、実際にそこに住んでいるのか確認されます。空き家を契約しただけで荷物はなく住んでいる様子が伺えなければ、生活保護をそこで受けることは出来ません。

実施責任とは??

生活保護には実施責任という考えがあります。生活保護を実施する責任はどこにあるのかという問題です。申請先の市町村に住んでいる場合は問題ありませんが、住所がない場合や病院に入院している、特別養護老人ホームに入所している場合など、家ではない場所にいる際に起こる問題です。結論としては、住所がない場合は何処の市町村でも構いません。病院の場合は入院期間によって判断されます。申請前に一度市町村に連絡し確認してみることをオススメします。

申請者は??

生活保護制度には代理人での申請を認めていません。しかし、本人以外でも申請が可能です。
①三親等以内の親族
②成年後見人(保佐人、補助人は出来ません)

誰も身寄りがいない場合には、調査員が出張面接をしてくれます。生活保護制度には本人の申請の意思が必要になりますが、急迫保護という考えがあり、困窮状態で保護する必要があると判断すれば職権にて保護することとなっています。

申請時に準備しておいた方がいいもの

基本的には申請時に必要な物はありません。しかし、事前に準備しておくとスムーズに話が進みますので何点かご紹介します。

①通帳(現在の残高が記帳されている)
②生命保険証券
③土地・建物の権利書
④物件の賃貸契約書(持ち家は必要なし)
⑤直近三ヵ月の給料明細
⑥年金通知はがき、または年金証書
⑦国民健康保険証、健康保険証
⑧介護保険証
⑨その他資産状況や収入の分かる書類

くまくまさん
くまくまさん

人によって資産や収入が変わるため絶対に必要なものは決まっていません。申請時に準備してほしい物を伝えられると思います。

申請から決定までの期間

生活保護の申請から7日以内に家庭訪問調査があり、14日以内に結果が出ます。調査がさらに必要な場合には最大30日以内に結果を出すこととなっています。決定されれば保護申請日から保護が適用されるため、申請期間中の生活費が日割りで支給され、医療費などは病院から返還されます。なお、お金が無く食べるものがない場合は、申請先の市町村に連絡すれば非常食などがもらえます。

要件について

生活保護の申請した後に確認される要件について解説します。少し内容が細かいかもしれません。

世帯認定

生活保護制度は一緒に住んでいる方をひと世帯として判断します。3人家族で会った場合でも1世帯ですし、10人家族も1世帯です。自分だけは保護を受けたくないと言うわけにはいきません。世帯区分で生活保護が必要か判断を行いますので、世帯員全員の収入や預貯金が調査の対象となります。世帯の考え方としては①同一住居②生計同一であることが必要です。別居している夫婦は別世帯と思われますが、夫婦は民法で生活保持義務があるので同一世帯と判断されます。DVで避難している場合等、状況によって細かく判断が変わることがありますので相談してみてください。

資産活用

資産は大まかには土地・家屋・事業用品・生活用品・生命保険・有価証券・車などさまざまです。

①土地・家屋について
持ち家については居住しているかどうかで判断が変わります。持ち家だと保護を受けれないと思われがちですが、資産価値が低く住み続けるほうが自立助長に繋がると判断されれば持ち家に住み続けることが出来ます。しかし住宅ローンがある場合には注意が必要です。住宅ローン付き住宅は保護を受けることが出来ません。理由としては最低生活費を住宅ローン返済に充てる可能性があるからです。国からの補助を活用し資産形成になることは認められていませんので、売却し転居後に申請となるでしょう。
その他の資産については処分価値がある場合は売却し生活費に充てるよう求められますが、処分価値が低い場合は容認される傾向が多いです。

②生命保険について
高額な生命保険や貯蓄性のある生命保険、解約返戻金が高額な生命保険がある場合は資産活用を求められます。しかし掛け捨てで掛け金が安い生命保険は保有が認められます。単身世帯でおおよそ5,000円~10,000円の範囲の生命保険は保有を認められることが多いです。

③有価証券について
原則処分になります。

④車について
車は住んでいる地域によって違いが出るところです。都会に住んでいる場合は保有認められにくいでしょう。地方の場合は通勤用や障害者の通院送迎用のみ認められることがあります。しかし、生活用としての使用は認められないので注意が必要です。
例外として半年以内に生活保護を脱却できる場合には車の使用は認められませんが処分指導を保留されることがありますので、ご相談してみてください。

⑤その他の貴金属や生活用品
その他の資産については処分価値がある場合は売却し生活費に充てるよう求められますが、処分価値が低い場合は容認される傾向が多いです。

生活保護の扶助の種類

生活保護の種類には大きく分けて8種類あります。

①生活扶助…食べるもの、着るもの、光熱水費などの日常生活の費用
②教育扶助…学用品費、給食費など義務教育に必要な費用
③住宅扶助…家賃、地代など住宅の費用
④医療扶助…ケガや病気の治療するための費用
⑤介護扶助…介護サービスを受けるための費用
⑥出産扶助…出産のための費用(助産制度が活用できる場合は支給されません)
⑦生業扶助…仕事をするために必要な資金や技能の修得費、高校の修学費用
⑧葬祭扶助…葬儀のための費用

①の生活扶助に状況に応じて加算があります。
代表的な加算
①冬季加算…冬季の暖房代(地域によって変わります)
②妊産婦加算…妊婦・産婦の方への加算
③障害者加算…障害の程度によって変わります
④児童養育加算…児童を養育する方への児童の年齢や人数によって変わります。
⑤母子加算…母子、父子家庭へ児童の人数に応じて加算があります。

補足:④医療扶助と介護扶助は現金としては支給されず、病院や介護事業所に直接支払われます。
   ⑧の葬祭扶助は葬儀を行う生活保護以外の家族がいる場合は支払われません。

くまくまさん
くまくまさん

色々な扶助の中にも細かな支給対象項目があります。例えば転居費用代や引っ越し代、通院の交通費、家の修繕費など状況によって細かく規定されています。

保護費の計算のイメージ

生活保護費は必要な費用のみ支給される制度です。下図にイメージがありますが、世帯ごとの最低生活費を国の基準に基づき計算されます。基本的には収入が最低生活費を超えているため生活保護が必要ないのですが、年金収入が少なかったり、就労収入が少ない場合は、最低生活費に足らない部分を生活保護費が補うという制度になっています。

実際の事例は??

令和5年の東京都1級地の1
単身世帯の場合(20歳~40歳)
生活扶助費76,310円+住宅扶助費53,700円=130,010円が現金で支給されます。
収入が50,000円あった場合は、130,010円-50,000円=80,010円が支給されることになります。

複数世帯の場合 夫(20歳~40歳)妻(20歳~40歳)子ども(6歳~11歳)
生活扶助費149,796円+児童養育加算10,190円+教育扶助2,600円(給食費除く)+住宅扶助69,800円=232,386円

高齢者単身の場合 (70歳~74歳)
生活扶助費74,220円+住宅扶助費53,700円=127,920円
年金収入が月50,000円あった場合は127,920円-50,000円=77,920円

仮りの計算のため若干金額が変わります。また地域によって生活扶助費や住宅扶助費の金額が変わりますので、実際にお住いの市町村にお問い合わせください。

収入の種類

次に生活保護から引く収入は種類によって計算方式を変えています。所得税の計算でも収入の質によって計算方式を変えますが、生活保護でも収入の種類によって計算方式が変わります。

①就労収入 就労収入-必要経費(交通費、社会保険料、組合費等)-基礎控除(収入によって変更。15,000円~231,000円、以降4,000円ごとに控除加算あり)
(20歳未満にはさらに控除があります。)

例 就労収入50,000円-必要経費10,000円-18,400円=21,600円の収入があると判断します。

②自営業収入 自営業収入-必要経費=収入-基礎控除(収入によって変更。15,000円~231,000円、以降4,000円ごとに控除加算あり)
例 自営収入 50,000円-必要経費10,000円=40,000円-17,600円=22,400円

③年金収入 年金収入を全額認定 年額÷12ヵ月又は収入÷2か月で月々の年金額を計算します。
例 年額600,000円÷12ヵ月=50,000円/月、又は偶数月に100,000円÷2か月=50,000円/月

④仕送り、財産収入 収入を全額認定
例 仕送り50,000円=50,000円を収入と判断します。

⑤その他の収入(動産や不動産の処分、保険金など臨時収入)8,000円を超える額を認定
保険金50,000円-8,000円を超える額=42,000円を収入と判断します。

くまくまさん
くまくまさん

就労収入に基礎控除があるのは、働くと色々な見えない生活費が増えるからです。例えば選択回数が増えたり、食費が増えることがあると思います。

収入とみないもの

先程さまざまな収入の判断をしましたが、場合によっては生活保護費の調整がかからない収入があります。
収入認定を行わない項目は全部で18項目ありますが、大まかに言うと国からの恵与金(臨時給付金)や自立更生に充てられる費用(車の免許を取るための積立等)、災害の保険金見舞金などです。詳しくは個々の判断になるため、状況を詳しく報告しましょう。

不正受給に注意

収入を隠す又は何度も申告漏れが続くと不正な生活保護費の受給を疑われ控除がなく全額返還が生じます。例えば働いた就労収入の報告を忘れていると就労収入50,000円から基礎控除を引いて計算されますが、不正と判断された場合は50,000円全額の返還となり損をすることがあります

まとめ

今回は生活保護を申請先や申請する際に必要な物、申請要件などを解説しました。生活保護制度は最低生活以下の状況であると判断するため様々な状況確認がなされます。資産活用について、持ち家でも生活保護を受けれるなど意外に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
生活保護決定の要件は項目が多くありますので、次回に引き続き解説していこうと思います。

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