今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。今回は前回ご紹介した特定技能の前段階である育成就労制度についてご紹介します。技能訓練制度が変更され育成就労制度へと変わりますので確認しておきましょう。
育成就労制度とは?
育成就労制度は、日本の人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする制度です。
この育成就労制度のもと、外国籍の方の活動を認める在留資格を「育成就労」といいます。育成就労制度は技能実習制度の代わりとして制定されました。具体的には、外国人材を3年間の育成期間で特定技能1号の水準にすることを目標にしています。
育成就労制度は以下の4つの方向性(技能実習制度と特定技能制度の在り方に関する有識者会議の最終報告書より)に沿って制度設計されています。
①技能実習制度を人材確保と人材育成を目的とする新たな制度とするなど、実態に即した見直しとすること
②外国人材に我が国が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させた上でその結果を客観的に確認できる仕組みを設けることによりキャリアパスを明確化し、新たな制度から特定技能制度へ円滑な移行を図ること
③外国人の人権保護の観点から、一定の要件の下で本人の意向による転籍を認めるとともに、監理団体・登録支援機関・受入れ機関の要件厳格化や関係機関の役割の明確化等の措置を講じること
④外国人材の日本語能力が段階的に向上する仕組みを設けることなどにより、外国人材の受入れ環境を整備する取組(注2)とあいまって、外国人との共生社会の実現を目指すこと
対象施設
以前の技能訓練の対象施設はさまざまです。その範囲は、児童福祉法、障害者総合支援法、老人福祉法・介護保険法、生活保護法にかかる施設及び、病院・診療所にいたっており、多くの施設や事業が該当します。
介護職種の職員を雇用している施設や事業所が対象施設及び事業になりますが、訪問型のサービスを行う事業所や、訪問型サービスの業務、もしくは事業所外にて行われる支援については、技能実習「介護」の対象含まれませんので、注意が必要です。
今後開始される育成就労制度の受入れ対象分野と職種は、特定技能制度の受入れ対象分野の設定分野、いわゆる「特定産業分野」に限定される予定です。現在、技能実習は90職種(165作業)での実習が可能ですが、これらも変更となる見込みとなります。
児童福祉関係の施設・事業
児童福祉法にて定められている、児童福祉関係の施設や事業のうち、対象となるのは以下の施設・事業です。
肢体不自由児施設又は重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関(国立高度専門医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定するもの) |
児童発達支援 |
放課後等デイサービス |
障害児入所施設 |
児童発達支援センター |
保育所等訪問支援 |
障害者総合支援法関係の施設・事業
障害者総合支援法にて定められている、障害福祉サービス関係の施設や事業のうち、対象となるのは以下の施設・事業です。
短期入所 |
障害者支援施設 |
療養介護 |
生活介護 |
共同生活援助(グループホーム) |
自立訓練 |
就労移行支援 |
就労継続支援 |
福祉ホーム |
日中一時支援 |
地域活動支援センター |
在留資格「育成就労」の要件
在留資格「育成就労」には就労開始時点の日本語能力に関する要件があります。就労前に日本語能力A1相当以上試験に合格(日本語能力試験N5レベルの日本語能力)または相当の日本語学習を受講することが定められています。
入管法(出入国管理及び難民認定法)における変更点としては、在留資格「技能実習」は廃止になります。新しく創設される在留資格「育成就労」が、在留資格「技能実習」に代わるため、同じような条件になると予想されます。
企業が受け入れるための要件
育成就労の外国人を企業が雇用するための要件は、国で決められた「特定産業分野」に該当する業種・職種であることです。それ以外についてはまだ詳細はわかっていません。受け入れ見込み人数に関しては、対象分野ごとに受け入れ人数を設定し、受け入れ上限数として運用する予定です。
また、技能実習制度で求められていた受け入れ企業の要件である国際貢献に由来する要件は撤廃されますが、昇給や日本語能力向上のための要件が求められることになります。現在の特定技能制度における分野別協議会への加入などの要件も、受け入れ企業には求められる見込みとなっています。
まとめ
技能訓練制度は元々は外国の技術発展のために日本で技術を学ぶ制度でしたが、実際は人材不足を補うことが目的になってきており、制度変更が行われることになりました。そのため日本語の修得条件や受け入れ企業の分野が拡大するなどの予定となっています。今後制度が確定していくと思われますので確認しておきましょう。
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