今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。今回は障害者雇用の法律である障害者雇用促進法についてご紹介したいと思います。
障害者雇用の制度とは
「障害者の雇用の促進等に関する法律」によって定められており、障害のある方が安定して働き続けることを目的としています。障害のある方ひとり一人の特性に合わせた働き方ができるように、企業や自治体などが障害のある方を雇用する制度のことです。
第一条 この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。
雇用義務制度
事業主は、雇用している従業員の一定割合以上の障害者を雇用する必要があります。この一定割合は、障害者法定雇用率とよばれており、現在の法定雇用率は以下のようになっています。この法定雇用率は、5年ごとに見直されることになっています。法定雇用率は、下記の法定雇用率の算定式によってだされています。
事業主は常時雇用している労働者の数に一定の率を乗じて得た数以上の障害者を雇用することが義務づけられています。 例えば民間企業における法定雇用率は、令和6年4月より「2.5%」となっています。(国、地方自治体等については2.7%)
【例】 常時雇用している労働者130人の企業
120人✕2.5%=3.25人⇒3人(小数点以下切捨て)となり、3人以上の障害者を雇用する義務があります。
障害者の算定方法
障害者の算定方法は次のとおりです。
障害者雇用状況報告書
障害者雇用状況報告書は、毎年6月1日現在の障害者雇用状況について、ハローワークへ提出する必要があります。 また提出日が「6月1日」と決められていることから、「ロクイチ報告」や「6/1報告」とよばれることもあります。 障害者雇用状況報告書の提出は事業主の義務です。 そのため、提出を怠ったり嘘の報告をした場合、障害者雇用促進法により30万円以下の罰金となることがあるので、注意してください。
障害者雇用納付金制度
障害者雇用は、事業主が相互に果たしていく社会連帯責任の理念に立ち、事業主間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図っています。そのため、障害者雇用率に達していない分を、障害者雇用納付金として納めることになっています。雇用率未達成の企業は、障害者の不足1人につき、月額5万円が徴収されます。適用対象は、常用労働者100人超の企業です。
集められた納付金は、企業が身体障害者、知的障害者又は精神障害者を雇用する場合の作業設備や職場環境を改善するための助成金や、特別の雇用管理や能力開発等を行うなどの経済的な負担を補填するため、雇用を多くしている企業への調整金などに活用されます。
障害者雇用調整金は、雇用率達成した事業主を対象に、1人につき月額2万7千円が支給されます。調整金の適用対象は常用労働者が100人超の企業となっており、100人以下の事業主については報奨金制度があります。
差別の禁止
障害者であることを理由として、そのほかの人と不当な差別的取扱いをすることが禁止されています。 例えば、募集・採用や賃金、配置や昇進、教育訓練など雇用に関するあらゆる局面で、障害者であることを理由に排除することや不利な条件を設けること、反対に障害のない人を優先することなどは、障害者であることを理由とする差別に該当します。
合理的配慮の提供
合理的配慮とは、障害のある人から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。障害のある人が、職場で受けている合理的配慮の例では以下のようなものがあります。
- 障害のある人と意思を伝えあうために絵や写真・タブレット端末を利用する
- 障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更を行う
- バリアフリー・ユニバーサルデザインの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備 など
苦情処理・紛争解決援助
事業主は、障害者に対する差別や合理的配慮の提供に関することで、苦情の申出を受けたときは、自主的な解決を図るよう努める必要があります。解決できない場合には、個別労働紛争解決促進法の特例を設け、都道府県労働局長からの助言、指導又は勧告を受けることになります。
まとめ
今回は障害者雇用についてご紹介しました。障害者雇用の法律である、障害者雇用促進法に基づいて様々な対応が必要になっています。法改正によって人員基準や報告義務も変わってきますので、適宜確認していきましょう。
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