今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。今回からの記事を読んでいただくことで、福祉事業の手助けになればと思います。今回は発達障害の障害者雇用について障害の特性も含めてご紹介します。
発達障害とは
発達障害のそれぞれの種類について解説します。発達障害の種類は、それぞれが個別に存在するといより、特性が重なり合って出ることが多いものです。つまり「ADHD」だけの特性を持つ人もいるけれど、「ADHD」の特性と「ASD」の特性を併せ持つ、あるいは「ADHD」と「ASD」、そして「LD(学習障害)」を併せ持つこともあるということ。それぞれがどれくらいの比率でかけ合わさるのかは人によるし、そもそもの障害の特性の濃い薄いも人によります。つまり、一口に「発達障害」と言っても、特性の現れ方はひとりひとり違い、それが「発達障害」の理解を難しくしている原因のひとつでもあります。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)は、ほかの人との気持ちの共有や会話のやりとりが難しい、表情から気持ちが読み取れないなどの「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と常同的な行動や、特定の音や光など感覚刺激への偏った反応など「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。
ADHD(注意欠如多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)は、話を集中して聞けない、作業が不正確、なくしものが多いなどの「不注意」、体を絶えず動かしたり離席する、おしゃべり、順番を待てないなどの「多動性」「衝動性」の特性がみられ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。
LD(学習障害)
LD(学習障害)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。
発達障害者も障害者雇用促進法上の雇用義務の対象
障害者雇用促進法第43条第1項では、一定数以上の労働者を雇用する事業主に、障害者を一定数雇用することが義務付けられています。
事業主の雇用義務を満たすために雇用すべき障害者には、身体障害者・知的障害者・精神障害者などさまざまなタイプが存在しますが、そのなかには発達障害者はその他に含まれることが、法律上明記されているのです(同法第2条第1号)。
身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者
したがって、事業主は発達障害者を雇用することによって、同法所定の障害者雇用義務を履行することが可能となります。
発達障害の方の就職・転職活動のポイント
発達障害の方が一般企業で働く際には、主に「一般雇用」と「障害者雇用」の2種類の働き方があります。障害者雇用については前回の記事を参考にしてください。
一般採用枠での就業
一般採用枠は、健常者も障害者も対象の雇用枠です。障害についてオープンにする場合とクローズにする場合がありますが、どちらも障害者当人にとっては障害への配慮を受けにくいとされています。
障害者採用枠での就業
障害者採用枠は、障害がある方のための雇用枠です。障害者手帳を持っていることが条件とされて、身体障害者、知的障害者、発達障害を含む精神障害者が対象となります。企業側の障害への理解があるため、合理的配慮やサポートを受けやすいことが大きなメリットであるとされています。
発達障害者に向いている仕事
発達障害者には、得意分野を活かせる仕事が適しています。以下はその一例です。
- 繰り返し作業やルーチンワーク(ADHDの集中力を活かせる場合)
- 分析やリサーチ業務(ASDの特性が強みになるケース)
- 正確なデータ入力やチェック業務(細かい作業に向いている場合)
発達障害者の強みを引き出すため、特性に応じた役割を検討することが重要です。
発達障害者を雇用する上での合理的配慮
発達障害者の職場適応には合理的配慮が求められます。
- 業務の指示方法を工夫し、マニュアルや指示書を明確にする
- 静かな作業環境を提供し、集中を妨げない職場づくり
- 定期的なフィードバックやカウンセリングを実施し、悩みを聞くサポート
これらの配慮があることで、発達障害者のスムーズな業務遂行が可能になります。仕事のボリュームの調整やメンターとの面談、業務のマニュアル化、イヤホン着用などの配慮することで長期的な就労につながります。
まとめ
今回は発達障害と雇用についてご紹介しました。発達障害は非常に分かりにくい障害です。そのため、仕事が上手く続かないなど悩んでいる方もいるかもしれません。今までの就労経験を振り返り、どのような仕事・職場環境が良いのかを考えていきましょう。
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