今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。
今回は障害福祉サービスのグループホームの法人を立ち上げる際に必要となる定款作成について詳しく解説していきます。
グループホームがどういった施設なのか興味がある方、今後グループホーム事業を行っていきたいと考えている方に参考にしてもらえたらと思います。
法人設立の流れ(株式会社の場合)
まずは法人格取得のため、株式会社を例として流れを確認してみましょう。
発起人の決定・基本事項の決定
株式会社は発起人(最初の株主)を募集する。会社の基本事項である、会社名・目的・本店住所・資本金額・発起人(株主)の数とその割当て・営業年度・役職・発行可能株式総数などを決めておく必要があります。
法務局で類似商号の調査・目的確認
本店の所在地を管轄する法務局で、類似商号がないか、目的の言い回しが合っているか等を調査確認
会社代表印の作成・関係者個人印鑑証明書の入手
類似商号が済んでから会社代表印を作成します。
定款の作成
決定した会社概要(商号、本店、会社の目的など)を記載します。
公証役場において定款の認証
本店所在地がある都道府県内の公証役場で認証を受けます。
銀行預貯金口座に資本金の払込
代表発起人の個人口座へ、各発起人が資本金を振込み・振込み時、発起人の名が表示されるように振込み。発起人がひとりでも代表者も同じ場合は窓口又はATMでの資本金額入金で設立は可能です。
法務局に設立登記申請
この申請日が会社の設立日となります。(登記申請に関しては、司法書士が行います)
登記が完了し、会社が設立される
法務局において、登記事項全部証明書(謄本)を入手、銀行に謄本を持参すると、会社名義の預金口座が出来ます。個人口座から会社口座へ資本金を移動させて事業開始です。
諸官庁への届出
税務署、都道府県税事務所、市役所、社会保険事務所、ハローワークなどに届出書を提出
定款とは

法人格を取得する際に定款が必要となります。定款は、会社を経営していくための基本的なルールをまとめた、会社の設立や運営において重要な書類です。会社の憲法と呼ばれることもあり、会社法によって会社設立時には定款を作成することが定められているため、どのような会社でも定款を作成しています。
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はじめに作成される定款を原始定款といい、作成した定款は必ず公証人役場で公証人の認証を得る必要があります。
公証人の認証のない定款を添付して、株式会社の会社設立登記を申請しても受理されません。
定款には、会社の目的、商号、本店所在地、その他重要事項が記載され、定款の内容を変更するには後に株主総会の特別決議が必要となります。
原始定款の必要記載事項
会社法施行後の会社設立の原始定款に絶対に記載しなければならない事項は次のとおりです。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名(個人)又は名称(法人)、及び住所
障害福祉サービスの定款記載事項
特定非営利活動法人、一般社団法人、株式会社等(社会福祉法人や医療法人は下へ)
居宅介護重度訪問介護
同行援護
行動援護
療養介護
生活介護
短期入所
重度障害者等包括支援
自立訓練
就労移行支援
就労継続支援A型
就労継続支援B型
就労定着支援
自立生活援助及び共同生活援助は
事業目的に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」と表記します。
また、社会福祉法人社会福祉法人については、
「障害者支援施設の経営」
「障害福祉サービス事業の経営」
「一般相談支援事業の経営」
などのように表記しましょう。
行政書士が行える会社設立業務

グループホームの法人格を取得するための準備を円滑に行うためには、行政書士のサポートがあれば有スムーズに進みやすくなります。会社を設立するための書類に少しでも漏れやミスがあると、設立者は再度作成し直したり申請をやりなおしたりしなくてはなりません。またグループホームを始めるためには指定申請業務もあり、グループホームの開業準備が忙しい中自分達で手続きを作成するのは困難です。このような時に行政書士が法人格の取得と指定申請のサポートを受けれたら、かなりの負担は軽減されるでしょう。
ここで注意していただきたいのが、行政書士には法務局に申請する書類の作成については代理権を認められていません。もし行政書士事務所が会社設立業務を全てお任せでしている場合は、司法書士と業務提携をしており、「定款の作成業務」については行政書士、「登記の申請代理」については司法書士が行っていると考えていいでしょう。
場合によっては法務局には依頼者が自分で書類を持って行ってもらう、という業務の進め方をしているかもしれません。会社設立を行政書士に依頼する際には、自分が法務局の窓口に行く必要があるのかを確認した方がいいかもしれません。
まとめ
今回はグループホームの法人格を取得するために必要な定款作成についてご紹介しました。定款を作成し公証役場で認証を受けるなど専門的な手続きもあるため、専門の行政書士に相談することでスムーズな開設が可能となります。