今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。
今回は障害福祉サービスのグループホームの法人を立ち上げるための法人格が必要ですが、初めて法人化するのって何をどうしていいか分からないですよね。この記事ではNPO法人の設立するための流れについて詳しく解説していきます。
グループホームがどういった施設なのか興味がある方、今後グループホーム事業を行っていきたいと考えている方に参考にしてもらえたらと思います。
NPO法人とは
「NPO」(Non Profit Organization)とは、さまざまな社会貢献活動を行ない、団体の構成員に対し収益を分配することを目的とし ない団体の総称です。収益を目的とする事業を行なうこと自体は認められますが、事業で得た収益は、さまざまな社会貢献活動に充てることになります。
このうち、「特定非営利活動法人」つまり「NPO法人」とは、 特定非営利活動促進法にもとづき法人格を取得した法人です。
NPO法人のメリット
NPO法人のメリットについて7つ上げていきます。
①社会的信用の増加
NPO法人は、定款や登記簿謄本などによって個人と法人の会計が明確に区分されており、所轄庁へ毎年、決算書類の提 出が求められているので、財務面・活動面ともに透明性が高いとい えます。
さらに、社会的信用が高いため、任意団体や個人事業よりも採用の面でも有利といえ、優秀な人材を集めやすいというメリットがあ ります。
②団体名による契約や登記が可能
任意団体の場合、団体名では契約も登記もできません。その結果、 団体名で事務所を借りられなかったり、銀行口座がつくれなかったり、電話などの公共料金の契約ができないため、契約は代表者個人名で行なうことになりますが、NPO法人の場合は団体名で銀行口座がつくれたり、不動産の所有など、法人名で財産を所有することができるので、お金のトラブルを防ぐことにもつながります。法人口座にすることで、個人が団体の資金を勝手に流用することも防ぎやすくなります。
③組織を永続的に維持できる
任意団体では、代表者が管理している財産は法律上、代表者個人のものとなってしまうので、代表者本人が死亡すると、その任意団 体の財産はすべて代表者に関する相続の対象となり、本来の持ち主である任意団体には帰属しません。しかし、NPO法人であれば、代表者は理事長でも、すべての財産は法人に属するため、万一、代表者である理事長が死亡しても他の理事を代表に選任すれば問題はありません。
④経費の認められる範囲が広い
NPO法人とすることで、個人の支出とNPO法人とし ての支出が明確に区分されるため、任意団体や個人事業では認められない経費でも認められることになります。
⑤官公署から事業委託・補助金を受けやすい
通常は、行政からの事業の委託や補助金は、責任の所在を明確にするために、対象者を法人に限定しています。
⑥金融機関からの融資も可能
NPO法人向けの金融機関融資も行なわれはじめています。融資により、個人では不可能な資金量を調達できるようになります。
⑦税金面で有利に
任意団体や個人事業の場合、売上による収入は所得税の課税対象となり、累進課税なので所得の額 (売上から原価や経費を差し引いた額)が高くなればなるほど税率もアップします。一方、NPO法人の場合、収益事業をしない団体であれば、税金の減免申請を毎年行なえば税金はまったくかからないので、会費や 寄附金を中心に事業を運営している場合には、税金面では有利といえます。
NPO法人設立の流れ

NPO法人を立ち上げる際の流れを確認していきましょう。
「設立発起人会」を開催する
まず、法人の設立メンバー(=発起人)が集まり、設立の趣旨、 NPO法人の活動目的、そして役員や会費など、どのような法人に するのかを協議し、「設立趣旨書」「定款」「事業計画」「収支計画」 などの原案を作成します。
具体的に協議する内容は、以下のとおりです。
●社員(正会員)を10名以上集める
●役員(理事・監事)のメドをつけておく
●設立代表者を決定する
●法人名を決定する
●法人設立の目的をまとめておく
●事業内容・活動内容を決定する
●主たる事務所(従たる事務所)の場所を決定する
●会員の種類を考え、入会金・会費の額を決定する
●事業年度を決定する
●法人の運営方法を決定しておく
●活動を行なうためにどれぐらいの資金が必要か計算する
「設立総会」を開催する
発起人会でどのような法人にするかが決まったら、設立当初の社員全員で設立総会を開催して法人設立の意思決定を行ない、発起人会で作成した定款等について決議します。任意団体からNPO法人化する場合には、任意団体の財産等を新法人に承継することも確認しておきます。
申請書類を作成する
設立総会の決議が終わったら、役員の就任承諾書や宣誓書など、 申請に必要な正式書類を作成します。必要な書類については後述し ます。
設立認証の申請を行なう
必要書類を作成したら、所轄庁へ設立認証申請書類を提出します。 「 認証申請に必要な書類は、以下のとおりです。
①設立認証申請書
②定款
③役員名簿(役員の氏名・住所または居所・各役員についての 報酬の有無を記載した名簿)
④各役員の就任承諾および誓約書の謄本
⑤各役員の住所または居所を証する書面(住民票の写し、外国 人登録原票記載事項証明書など)
⑥社員のうち10人以上の者の名簿
⑦確認書(宗教・政治・選挙活動を目的とする団体、暴力団等 の統制下にある団体でないことの確認書)
⑧設立趣旨書
⑨設立についての意思の決定を証する議事録
⑩設立当初の事業年度および翌事業年度の事業計画書
⑪設立当初の事業年度および翌事業年度の活動予算書
公告・縦覧と所轄庁による審査を受ける
2か月以内に、所轄庁による審査が行なわれ、認証・不認証が決定されます。
登記の申請を行なう
NPO法人は、登記して初めて法人として成立します。認証書が到達した日から2週間以内に、事務所の所在地を管轄する法務局に行って、登記手続きを行ないます。なお、株式会社や一般社団法人等と同様に、登記を申請した日が NPO法人の設立日になります。
各種の届出書を提出する
主たる事務所の所在地で設立登記が完了したら、遅滞なく所轄庁に「設立登記完了届」を提出しなければなりません。なお、従たる事務所がある場合は、主たる事務所での登記日後2 週間以内に、従たる事務所の所在地での設立登記を完了させる必要があります。
まとめ
今回はグループホームをNPO法人として立ち上げる流れについてご紹介しました。NPO法人とすることでボランティアや任意団体とは違いしっかりとした会社であると認識されます。税助成などのメリットもある分、設立には厳しい条件がありますので設立する際は専門家である行政書士に相談することをお勧めします。
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