今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。
今回は障害福祉サービスのグループホームを開設する流れについて記事を書きたいと思います。
グループホームがどういった施設なのか興味がある方、今後グループホーム事業を行っていきたいと考えている方に参考にしてもらえたらと思います。
グループホーム=共同生活援助とは
まず障害のグループホームは共同生活援助と呼ばれています。その共同生活援助は、障害者の夜間において、共同生活を営むべき住居において行われる相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の必要な日常生活上の援助を行うサービスです。主に居住支援として利用されます。
サービス内容
障害者グループホームでは、利用者に対し、日常生活を送る上で必要な様々な支援を行います。世話人がおり、食事や掃除などの家事から金銭管理や服薬管理、外出支援など様々な日常生活の支援を受けれます。
障害者グループホームのサービス内容の例
- 食事提供
- 掃除(共有部)
- 見守り
- 夜間巡回(夜間人員配置)
- 金銭管理
- 服薬管理
- 通院同行、外出同行
- 相談対応
サービスの対象となる人
共同生活援助は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者などが対象です。原則として18歳以上(必要に応じて15歳以上)の方が利用でき、身体障害者の場合は65歳前日までに障害福祉サービスやこれに準ずるものを利用した方が対象になります。基本的に障害者種別で区別はされませんが、障害者グループホーム事業所の方針や生活環境整備の状況によって入居できる障害者の種別が決まっていることがあります。
戸建て型障がい者グループホーム
一番多くあるのが戸建て型障がい者グループホームです。戸建て型のグループホームは一戸建ての建物で集団生活するタイプの施設です。介護スタッフの支援を受けながら、共同生活します。スタッフの手厚い援助を受けたり、共用スペースが多い、複数スタッフが交代制で対応してもらえるなどといった特徴があります。個室は就寝するときに使用しますが、居間や食堂、水回りなどのスペースは共用です。
戸建て型障がい者グループホームは消防法によって「寄宿舎」として位置付けられており、一般的な戸建て住宅では運営できません。障がい者グループホームとして運営する場合は、法によって定められた設備の追加工事が必要です。
アパート型障がい者グループホーム
アパート型障がい者グループホームは、利用者が完全に独立するタイプの施設です。一般的なアパートとほとんど同じ、一人暮らしのような生活を送れます。基本的に日常生活は1人で送り、共用スペースがあるため他の利用者とも交流も可能といった特徴があります。一人暮らしをしているかのように自由度が高い形態です。一方で、他の入居者とも自由に交流できるため、単身生活の練習としてもおすすめ。自立の一歩前の段階として、入居する人もいます。
デメリットとしてはスタッフのサポートが少ない点です。「栄養バランスを考えた食事ができているか」「服薬が必要な場合、忘れずに飲めているか」などの確認がおろそかになることがあります。
サテライト型障がい者グループホーム
サテライト型障がい者グループホームは、戸建てタイプとアパートタイプの間をとった施設です。戸建て住宅のような共同生活を送りながらも、一人暮らしのように自由な経験ができます。
サテライト型グループホームは、将来的な自立を目指し、グループホーム本体の居間や食堂で食事やレクリエーションに参加しながら、近くの民間アパートなどで一人暮らしに近い生活を送る施設です。
利用者は、単独生活が可能と認められた方が対象で、原則3年以内に一般の住宅へ移行する目標をもって生活します。他のグループホームがシェアハウスのような共同生活であるのに対し、サテライト型は個室で生活するため、より自立した暮らしが叶えられます。グループホームの一部であるため、必要に応じて本体の世話人から支援も受けれます。

グループホーム開設の流れ
障害者グループホームを設立する流れについて、解説していきます。障害者グループホームの設立は、大きく分けて下記の7ステップで進んでいきます。
- 法人を設立する
- 資金を調達する
- 物件の確保と設置基準を満たす
- 人員配置を満たす
- グループホームの指定申請をする
- 運営準備を行う
- 営業を行う
それぞれのステップを同時に動かしていくことになります。各ステップを解説します。
1.法人を設立する
まずは法人を設立します。障害者グループホームは、個人では運営できません。
グループホームの運営は、法人格を持った株式会社や社会福祉法人でなければならないというルールがあるので、必ず法人化しておきましょう。法人が開設出来たら、開業届や青色申告などの税務関係の手続きをしておきましょう。




2.資金を調達する
法人が出来たら資金調達から開始しましょう。施設は賃貸で考えている場合でも、運転資金を含めて用意しておく必要があります。調達する資金の目安は800~1,000万円です。自己資金が足りない場合には、調達する資金の3分の1〜4分の1を用意し、残りは融資を受けましょう。





3.物件を探す

グループホームとなる物件を探しましょう。ただし、障害者グループホームとなる物件については、通常の建築基準法等の条件はもちろんのこと、障害者グループホームのために必要な条件を満たしている必要があります。また条件は自治体によっても異なっているため、まずは自治体に条件を確認の上、自身の目的とするグループホームに適した物件を探すようにしましょう。
グループホーム用の物件で満たすべき要件(自治体によっても基準が異なるため、必ず自治体に確認)
・居室面積:収納設備等を除き、7.43平方メートル以上
・消火器の設置
・スプリンクラーの設置
・自動火災報知設備の設置
・誘導等の設置


4.人員配置を満たす

グループホームには必要な職種や人数が決まっています。そのため各事業所ごとに必要な人数が変わります。
理者 | ・常勤 1人配置 ・兼務可(ただし管理業務に支障がない場合) ・資格要件なし |
サービス管理責任者 | 一人以上配置。サービス管理責任者の資格を持つもの(30人につき1人) |
世話人 | 利用者の人数により配置数が異なる。資格要件なし。資格要件なし。 |
生活支援員 | 兼務可。利用者の人数と区分により配置数が異なる。資格要件なし。外部サービス利用型は配置不要 |
どのような媒体を利用して採用活動をするか検討しましょう。無事採用となれば雇用契約の締結や社会保険の手続きが必要となります。また、シフトや研修の調整も行うことになります。




5.グループホームの指定申請をする
グループホームの指定申請をおこないます。障害者グループホームで事業者指定を受けるためには、事前協議を経て都道府県に対して指定申請手続きを行います。(※都道府県によって必要となる書類が変わる場合があります)
書類名 | 内容 |
---|---|
指定申請書 | 申請者(運営法人)・法人代表者・事業所の場所・開設日等の情報 |
付表 | 事業所場所・人員配置などのデータ |
法人の定款 | 運営法人の定款 |
法人の登記簿謄本 | 履歴事項全部証明書 |
勤務形態一覧表 | 開業月のシフト表 |
組織体制図 | 開業時の人員体制 |
管理者の経歴書 | 職務経歴 |
サービス管理責任者の経歴書 | 職務経歴・保有資格・研修終了の証明 |
サービス管理責任者の資格証明書 | 保有資格の証明 |
サービス管理責任者の実務経験証明書 | 以前の職場の証明書 |
運営規程 | 運営に関する取り決め |
平面図 | 基準上の設備が整っているか |
居室等の面積一覧 | 居室の広さの適合 |
設備・備品等一覧 | 必要備品の整備 |
誓約書 | 欠格事由に該当しないこと |
役員名簿 | 法人役員及び管理者 |
協力医療機関契約内容 | 利用者の傷病に備えた連絡可能な医療機関 |
介護給付費等算定届 | 報酬請求に関する届 |
事業等開始届 | 行政以外のものが福祉議場をおこなう際に必要な届け |
苦情処理に関する措置の概要 | 利用者から苦情があった際の対処法 |
事業計画書 | 法人の概要・居室数・施設の場所・開業予定日・開業動機 |
収支予算書 | 開業後1年間の収支予算を作成 |
賠償責任保険に関する書類 | 「共同生活援助」「障害福祉サービス事業」のいずれかであること |

6.運営準備を行う

障害福祉の事業には様々なマニュアル(虐待防止・感染症対策・非常災害・緊急時対応)や入居者との契約書類(契約書・重要事項説明書・個人情報同意書・個別支援計画・金銭管理・)、業務日報など書類が必要となってきます。





7.営業を行う
まずはコンセプト・ターゲット設定をします。グループホームの利用にあたっては、障害支援区分や障害種別といった制限がありません。「誰にどんなサービスを提供するか」というコンセプトとターゲットを明確にしましょう。
その上で、利用者確保するための営業ツールを作成し、営業回りや地域の連絡協議会・研修会に参加して横の繋がりをつくっていきましょう。内覧会の開催や見学、体験利用を進めていきます。最近ではSNSの活用やインターネット対策も重要となっています。




まとめ
グループホームを開設するためには最短でも6ヵ月かかると言われています。その6カ月間の中にも様々な手続きや準備で大忙しな状況となるはずです。スケジュールを立て行動することが重要となります。準備が遅くなればなるだけ、経費も嵩むため計画的に行いましょう。
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