今回の記事から現在業務で行っている福祉関係の知識と、行政書士としての知識を組み合わせ、福祉についての知識を記事にしていきたいと思います。福祉業務を専門としている行政書士は数がまだ少ないと聞いています。理由としては、福祉知識の難しさが挙げられています。
障害者グループホームを運営するにあたって、福祉事業であっても収支を安定させることは必須条件です。そのために必要な会計処理について今回は記事となります。
グループホームがどういった施設なのか興味がある方、今後グループホーム事業を行っていきたいと考えている方に参考にしてもらえたらと思います。
賃貸借対照表と損益計算書
財務諸表の主なものは貸借対照表と損益計算書です。この2つの基本的な読み方を押さえておきましょう。
貸借対照表は左側に資産の一覧、右側に債務の一覧と資産と債務の差額である純資産を記載します。貸借対照表から把握すべきことは沢山ありますが、第一に資金繰りが挙げられます。預金の残高や将来入金される売掛金の残高、資金の調達源泉等の財務状態は 貸借対照表から把握します。
一方、損益計算書は、収益から費用を引いて利益がいくらになるかを計算したものです。業績の良し悪しはこの損益計算書で把握します。そのため には損益計算書を現金主義ではなく発生主義で作成する必要がありま す。推移表、部門別、昨年対比、予算対比と様々な角度から損益計算書を分析することが法人の業績を正しく把握する近道です。
障害グループホームの主な収入と費用
グループホームの収入は「報酬」として国から支払われます。
報酬の計算方法
単位数(基本サービス費+加算)×地域ごとの1単位の単価(地域区分)=報酬の総額
グループホームの主な経費は以下になります。
・人件費:管理者兼サービス管理責任者、世話人、生活支援員
・営業代・雑費:利用者獲得のための交通費等や広告費などが必要になってきます。
・光熱費等:光熱水費は利用者が負担するためほぼ一緒か若干のマイナスになると予想されます。
障害グループホームでの勘定項目(一部)

収益と経費に分けて勘定項目を確認しましょう。
収益
障害福祉サービス等事業収益
・自立支援給付費収益:障害者総合福祉法に基づくサービス(地域生活支援事業を除く)の提供にかかる収益。「(特例)介護給付費収益」「(特例)訓練等給付費収益」等
・利用者負担金収益:各給付費にかかる利用者の負担による収益
介護保険事業収益
・利用者等利用料収益:施設サービス利用料収益:利用者が選定したサービスに係る理美容料、日常生活サービス料等、居宅介護サービス利用料収益:利用者が選定したサービスに係る送迎費、おむつ料、日常生活サービス料等、食費収益:特養、短期入所、通所介護、GH等の利用者が支払う食費(公費・一般)居住費収益:特養、短期入所等の利用者が支払う、家賃(公費・一般)その他の利用料収益:前記のいずれにも属さない利用者等からの利用料の収入の合計
費用
・人件費:役員報酬、職員給与、職員賞与、非常勤職員給与、派遣職員費、退職給付、法定福利費等支出等の合計
・給食費:食材および食品の支出。給食業務を外部委託している場合は、委託契約中の材料費
・水道光熱費:利用者に直接必要な電気、ガス、水道、燃料等の使用料
・業務委託費:洗濯、清掃、夜間警備および給食(材料費除く)等施設の業務の一部を他に委託するための支出(労務費および保守料を除く)
・修繕費:建物、器具および備品等の修繕または模様替えの支出。ただし、建物、器具および備品を改良し耐用年数を延長させるような資本的支出を含まない
・地代家賃:土地・建物等の賃借料
障害福祉サービスの請求処理方法に注意

障害福祉サービス事業所は、利用者に対してサービス提供を行い、その対価として介護給付費や訓練等給付費等の9割を国保連合会を通じて市町村に請求し、審査及び支払いを受けます。利用者負担がある場合は、残りの1割を利用者に対して請求します。なお、事業所が請求から国保連合会が処理し支払いまで、2か月程度かかります。
障害福祉サービスの請求業務の流れを説明します。
当月末日に利用実績を確定
サービスを提供した当月1日から末日までの利用実績を、サービス提供実績記録票に基づいて簡易入力システムや請求ソフトに入力し、確定します。
利用者負担上限額管理結果票を確認
当該利用者の利用者負担額が上限額を超えないよう調整し、翌月6日までを目安に、利用者負担上限額管理結果票を作成し、他事業所へ提出、または受け取ります。
翌月10日までに国保連に請求データを送信
簡易入力システムや請求ソフトを使用して請求に必要な書類(請求データ)を作成します。具体的には下記の3つです。
- サービス提供実績記録票
- (上限額管理事業所の場合)利用者負担上限額管理結果票
- 介護給付費・訓練等給付費等請求書・明細書
請求データの作成が完了したら、国保連の電子請求受付システムにインターネット経由で送信します。
利用者へ利用料を請求
利用者の自己負担額が記載された請求書を発行し、利用者に渡します。利用料の支払い方法として、現金での集金、口座振込、口座振替などで受け取ります。
まとめ
事業所運営には切っても切り離せないお金の話となりました。会計処理をしっかり行うことで事業を安定して運営することができますので、是非今一度確認してみましょう。
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