今回は障害福祉サービスの従業員の士気を上げるために必要な給料を向上に繋がる処遇改善加算についてご紹介します。
就労継続支援B型に限らず福祉業界は常に人材不足と言われています。そのための施策として障害福祉サービスには処遇改善加算という加算があります。
この加算は職員の給料に反映させるといった変わった加算です。
今回ご紹介する処遇改善加算を活用しと人材不足の解消に繋がればと思います。
就労継続支援B型がどういった施設なのか興味がある方、今後就労継続支援B型の事業を行っていきたいと考えている方に参考にしてもらえたらと思います。
処遇改善加算とは
処遇改善加算は、障害福祉サービス事業所などで働く職員の賃金向上や職場環境の改善などを目的とした加算です。
処遇改善加算は、旧3加算の要件や加算率を組み合わせた上でⅠ~Ⅳの4区分に分かれています。※加算額は、計算システムで自動計算されます。

新処遇改善加算では職種による配分ルールが廃止され、「福祉・介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある障害福祉人材に重点的に配分することとするが、事業者の判断で福祉・介護職員以外の職種への配分も含め、柔軟な配分を認める」とされています。
「障害福祉処遇改善加算」は、障害福祉サービスに従事する職員の処遇を改善するための制度です。この加算を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります:
- 職員のキャリアパス要件や月額賃金改善要件を満たすこと。
- 職場環境の改善を図ること。
が必要となります。
月額賃金改善要件Ⅰ
月額賃金改善要件Ⅰは新加算の区分Ⅳで得られる処遇改善加算の報酬のうち、1/2以上を基本給または決まって支払われる手当などで支給することが必要です。
月額賃金改善要件Ⅱ
月額賃金改善要件Ⅱに関しては「旧処遇改善加算を取得していたが、旧ベースアップ等支援加算は算定していなかった」事業所が対象です。
具体的には以下の条件を満たす場合です。
- 令和6年5月31日時点ですでに旧処遇改善加算を算定している
- 旧ベースアップ等加算を算定していない事業所
- 令和8年3月31日までの間に、新規に新加算を算定する場合

キャリアパス要件Ⅰ
次の3つすべての基準を満たす
- 福祉・介護職員の任用における職位、職責または職務内容等の要件を定めている。
- 職位、職責または職務内容等に応じた賃金体系を定めている。
- 就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知している。
キャリアパス要件Ⅱ
福祉・介護職員の資質向上の目標と、研修機会の提供や能力評価、職員の資格取得の仕組みを事業所が整備し、このことを全ての福祉・介護職員に周知している。
キャリアパス要件Ⅲ
福祉・介護職員について、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組みまたは、一定の基準に基づき定期昇給を判定する仕組みを設け、全ての福祉・介護職員に周知している
キャリアパス要件Ⅳ(賃金改善後の賃金額)
経験・技能のある障害福祉人材のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であることが必要です。
ただし、創業初期などの小規模事業所で加算額全体が少額の場合や、職員全体の賃金水準が低く一人だけ引き上げることが困難な場合などは適用が免除されます。
経過措置として、令和6年度中は年額440万円以上の代わりに、新加算の加算額のうち旧特定加算に相当する部分による賃金改善額が月額8万円以上の場合でも算定可能です。
キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)
介護福祉士等が算定要件となる特定事業所加算または福祉専門職員等配置加算を算定していることが条件となります。最上区分であるⅠの取得には必須です。

職場環境等要件について
処遇改善加算を取得するためには、職場環境等要件の6区分のうちから1区分を選び、そのうちの1つ以上を賃金改善期間中(当該処遇改善加算を取得する期間)に取り組む必要があります。
1.入職促進に向けた取組
入職促進に向けた取組としては以下の4件が定められています。なお、従来の特定処遇改善加算で定められていた取組から変更はないため、過去算定していた場合はその取組を活かすことが可能です。
・法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
・事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
・他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可)
・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施
2.資質の向上やキャリアアップに向けた支援
入職促進に向けた取組としては以下の4件が定められています。なお、従来の特定処遇改善加算で定められていた取組から、ユニットリーダー研修・ファーストステップ研修が追加されているので確認しておきましょう。
・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
・エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
・上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保
3.両立支援・多様な働き方の推進
両立支援・多様な働き方の推進としては以下の4件が定められています。なお、従来の特定処遇改善加算で定められていた取組から大きな変更はないため、過去算定していた場合はその取組を活かすことが可能です。
・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
・有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標(例えば、1週間以上の休暇を年に〇回取得、付与日数のうち〇%以上を取得)を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている
・有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている
4..腰痛を含む心身の健康管理
腰痛を含む心身の健康管理としては以下の4件が定められています。
・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施
・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
5.生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組
生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組としては以下の8件が定められています。
・厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会の活用等)を行っている
・現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している
・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている
・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている
・介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入
・介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入
・業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う
・各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施
6.やりがい・働きがいの醸成

やりがい・働きがいの醸成としては以下の4件が定められています。
・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供
処遇改善加算取得の流れ
①処遇改善計画書の作成
②処遇改善計画書の内容を全職員に周知
③処遇改善計画書の提出(2025年4月15日締切)
④計画書に沿った施策の実行(2025年度中)
➄実績報告書の作成(2026年4月~)
⑥実績報告書の提出(2026年7月)

まとめ
今回は職員の給料を底上げできる処遇改善加算についてご紹介しました。処遇改善加算を取得するためには事業所の就労環境を整える必要があります。
職員の就労環境がよくなり、職員の支援の質が上がれば利用者への良い支援にも繋がります。職場の改善とともに加算を取得し、職員の質の向上を図りましょう。
処遇改善加算の取得には就業規則の変更など必要になる事もあるため、専門家に相談の上進めていきましょう。
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