就労継続支援B型事業所は、障害者の就労支援において重要な役割を担っていますが、近年その数が急増し、「増えすぎ」という声も聞かれるようになりました。
厚生労働省のデータによると、就労継続支援B型事業所数は2019年3月10,724箇所だった事業所数は、2022年3月には13,117箇所と大幅に増加しています。
測定時点の違いなどで若干数字の違いがありますが、「厚生労働省 社会福祉施設等調査」の結果では、就労継続支援B型事業所数は以下のように推移しています。(各年10月1日現在)
調査年 | 事業所数(箇所) |
---|---|
令和3年(2021年) | 14,407 |
令和4年(2022年) | 15,588 |
令和5年(2023年) | 16,713 |
これだけ需要がある就労継続支援B型ですが、2021年の福祉医療機構の調査によると、就労継続支援B型の赤字事業所の割合は35%におよび、1/3以上の事業所は経営に苦しんでいます。

就労継続支援B型の安定した運営を行うためには、一般の会社と同様に収支の把握し、適切な事業運営を行う必要があります。
今回は、事業所の運営に必要な財務会計について焦点を当てたいと思います。
就労継続支援B型がどういった施設なのか興味がある方、今後就労継続支援B型の事業を行っていきたいと考えている方、現在就労継続支援B型を経営されている方に参考にしてもらえたらと思います。
賃貸借対照表と損益計算書
財務諸表の主なものは貸借対照表と損益計算書です。この2つの基本的な読み方を押さえておきましょう。
貸借対照表は左側に資産の一覧、右側に債務の一覧と資産と債務の差額である純資産を記載します。貸借対照表から把握すべきことは沢山ありますが、第一に資金繰りが挙げられます。預金の残高や将来入金される売掛金の残高、資金の調達源泉等の財務状態は 貸借対照表から把握します。
一方、損益計算書は、収益から費用を引いて利益がいくらになるかを計算したものです。業績の良し悪しはこの損益計算書で把握します。そのため には損益計算書を現金主義ではなく発生主義で作成する必要がありま す。推移表、部門別、昨年対比、予算対比と様々な角度から損益計算書を分析することが法人の業績を正しく把握する近道です。
就労継続支援B型の主な収入と費用
就労継続支援B型の収入は「報酬」として国から支払われます。
報酬の計算方法
基本報酬は単位数×単価×人数×日数で計算します。例えば、職員配置が6:1で平均工賃月額が1万円以上1,5万円未満の事業所で利用者人数が20名、全員が15日間勤務した場合の計算をすると、
単位673点×10.57円(堺市は地域区分5級)×20人×15日=2,134,083円が基本報酬となります。
その他、加算は、サービス費の算定に当たり、基本報酬に加えて算定することが出来ます。加算には様々な種類がありますが、種類によって単位数も異なっています。
就労継続支援B型でかかる費用としては人件費、設備費、物件の家賃、光熱水費、通信費、車両費といったところでしょうか。
就労継続支援B型の会計ポイント

収益と経費に分けて勘定項目を確認しましょう。指定就労継続支援B型事業者は、指定就労継続B型事業所ごとに経理を区分するとともに、指定就労継続支援B型の事業の会計をその他の事業の会計と区分しなければならないとされています。
そのため、就労支援B型を福祉会計と同じサービス区分で会計を行う場合、「就労支援事業収益」「就労支援事業費用」を用い、明確に会計を区分できるようにしないといった複雑な会計事務ですが、ポイントをいくつかあげるとすれば以下のようになります。
「指定事業所ごと」「サービスごと」に経理区分しているか。
法人が複数の就労系サービス事業所を運営している場合、各事業所ごとに就労支援別事業活動明細書などの関係書類を作成。
「就労支援事業の会計」と「福祉事業の会計」に区分する
- 就労支援事業会計とは、「生産活に係る会計」のことをいい、利用者の生産活動による売上や当該生産活動に係る経費(原材料費等)が対象となります。就労支援事業会計(生産活動に係る会計)には、訓練等給付費や各種助成金などは含めません。
- 福祉事業に係る会計とは、「訓練等給付費に係る会計」のことさします。訓練等給付費は利用者に支払う工賃や賃金に充てることはできません。
③「生産活動の種類ごと」に会計を区分する
生産活動の種類が複数ある場合、その種類ごとに収入、経費を区分する必要があります。
④共通経費は適正な方法で按分されているか。
- 複数の生産活動に共通する経費がある場合は、適正な方法を用いて按分し、経費を分ける必要があります。
⑤事業に係る経費を「製造原価」と「販売管理費」に区分する
就労支援事業製造原価明細書に計上するもの
- 製造に係る経費(材料費等)
- 製造に携わる利用者の賃金 など
就労支援事業事業販管費明細書に計上するもの
- 製品の販売に係る経費
- 販売に携わる利用者の賃金 など
就労支援事業の年間売上高が5,000万円以下であって、多種少額の生産活動を行う等の理由により、製造業務と販売業務に係る費用を区分することが困難な場合は、「就労支援事業明細書」の作成のみで足ります。

まとめ
今回は就労継続支援B型の財務会計についてご紹介しました。障害福祉の事業といっても会社には変わりないため、会社としての会計処理が必要になります。
就労継続支援B型では利用者の収益と事業所の収益を分けて考えないといけないため、会計としては複雑になります。
しかし、会計処理を通して、事業所自体の売り上げを知ることで事業所の運営を安定させることに繋がりますので、事業所自体の収支も確認・分析してみましょう。
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