就労継続支援B型の経営で重要になるのが工賃をどうするかです。工賃が高く設定できると、事業所の収益が増加し、利用者の集客率も上がる可能性があります。
しかし、就労継続支援B型は工賃が安くなってしまう事業所がほとんどで、中々工賃アップを図れないのが現状だと思います。近年では12,000円から少し上昇し、17,000円代の事業所も増えてきました。

しかし、現実的には少ない工賃と言わざる得ないでしょう。また、利用者によって作業の出来る量や質、利用年数などもさまざまです。利用者の工賃が全員一緒だと利用者のモチベーションに影響を与えかねません。それは会社員でも同じことが言えますよね。
たとえば、会社員で昇給がない会社で働き続けることって難しいでしょう。給料の不満により会社員同士の揉め事や会社自体への不信感により、転職を考えるきっかけになってしまいます。
そこで、今回は就労継続支援B型で利用者の工賃の決め方についてご紹介します。利用者の工賃を適正に分配することで、利用者のモチベーションを上げることになり、事業所全体の売上が上がる可能性が出てきます。
なお、利用者の平均工賃が上がると事業所の給付金も増加するので、事業利益があがります。利用者の満足度を上げ、収益も上がれば事業として安定します。
(一) 平均工賃月額が4万5千円以上の場合( 837単位 )
(二) 平均工賃月額が3万円5千円以上4万5千円未満の場合( 805単位 )
(三) 平均工賃月額が3万円以上3万5千円未満の場合( 758単位 )
(四) 平均工賃月額が2万5千円以上3万円未満の場合( 738単位 )
(五) 平均工賃月額が2万円以上2万5千円未満の場合( 726単位 )
(六) 平均工賃月額が1万5千円以上2万円未満の場合( 703単位 )
(七) 平均工賃月額が1万円以上1万5千円未満の場合( 673単位 )
(八) 平均工賃月額が1万円未満の場合( 590単位 )
就労継続支援B型がどういった施設なのか興味がある方、今後就労継続支援B型の事業を行っていきたいと考えている方、現在就労継続支援B型を経営されている方に参考にしてもらえたらと思います。

この記事を読んで分かること
・工賃を決めるポイント
・工賃規定の作成例
・就労継続支援B型の売り上げアップの方法
工賃の決め方
工賃を決めるためにまずは工賃の売り上げ総額を算出しましょう。
財源総額を算出
まずは1か月分の工賃の財源となる金額を算出します。収入や経費も1か月分で計算しましょう。
工賃財源の計算方法
工賃の財源総額 = 生産活動の収入 - 生産活動に係る経費
人数や期間/時間等で割る
次は、工賃形態に合わせて、1人1単位あたりの金額を算出していきます。
工賃形態は「時給」「日給」「出来高」が、作業や通所の意欲を刺激できるのでおすすめです。
工賃形態の種類
例:時給、日給、月給、出来高
特に出来高制には「生産性アップの促進」「利用者間の不満軽減」などのメリットがあります。可能なら取り入れましょう。工賃形態は、複数を組み合わせても構いません。作業内容ごとに工賃を変えても問題ありません。
「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」第201条第2項
平均工賃は月額3,000円以下NG
就労継続支援B型では、平均工賃が月額3,000円(程度)以下は認められていません。あくまで「平均工賃」であり、平均が月額3,000円を超えていれば、工賃が月額3,000円以下の利用者が一部にいても問題ありません。
工賃規程をしっかりつくろう
工賃規程とは、利用者に工賃を支払う際のルールをまとめたものです。
「工賃の金額・計算方法・支払方法」など、事業者独自の工賃ルールを策定し、初回契約時や工賃ルールの変更の際に利用者から同意を得ておく必要があります。
工賃規程の作り方
工賃規程とは、利用者に工賃を支払う際のルールをまとめたものです。
- 目的「この規程は〇〇(事業所名)が行う障害者総合支援法に基づく、就労継続支援B型事業の利用者に対して、支給する工賃についての基準を定めるものとする。」などと書きます。
- 定義「工賃とは何か?」の定義を書き、工賃によってどんな支援につながるか「利用者が自立した日常生活または社会生活を営むことを支援するために支給する」などと書きます。
- 作業の範囲作業時間や休憩時間の取扱について書きます。例「1日の所定作業時間は、原則午前9時~午後4時までとし、午前12時~午後1時までは昼休憩とする」。例外もあれば書いておきましょう。
- 工賃の支給額具体的な工賃の金額やその決め方(計算方法等)について書きます。わかりやすく表などを用いるとよいでしょう。
- 工賃の計算期間および支払日いつからいつまでの工賃をいつ支給するか書きます。例「工賃は毎月1回、前月の1日から前月末までの分を翌月末日に支払する」。支給日は15日、20日、25日、月末が多いようです。支給日が休日の場合はどうなるかも書きましょう。
- 工賃の支払い方法手渡しか銀行振り込みかなど決めて書きます。手渡しの場合は、工賃を支給する際、本人(または代理人)に捺印してもらうことでトラブルを避けられます。
- 工賃計算の単位「工賃計算の単位は円とし、1 円未満は切り捨てすることとする。 」などと書きます。
最後に「附則 この規程は、令和〇年〇月〇日から施行する。」と記載しておきます。
能力性を採用

就労継続支援B型の工賃は、成果物の数量などに応じた「出来高制」による能力給は一般的に問題ないとされていますが、「評価表」による能力給を取り入れる際は、各自治体に確認を取ってください。
就労継続支援事業利用者に関する留意事項
就労継続支援事業を利用するにあたり、各事業の利用者に対して、次の点に留意されたいこと。(中略)
ア 利用者の出欠、作業時間、作業量等が利用者の自由であること。
イ 各障害者の作業量が予約された日に完成されなかった場合にも、工賃の減額、作業員の割当の停止、資格剥奪等の制裁を課さないものであること。
ウ 生産活動において実施する支援は、作業に対する技術的指導に限られ、指揮監督に関するものは行わないこと。
エ 利用者の技能に応じて工賃の差別が設けられていないこと。
引用元:厚生労働省「就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について」
就労継続支援B型の利用者は、一般企業のように能力によって賃金(工賃)に差をつけてはならないというわけです。
利用者の意欲を上げる工夫

「作業意欲の向上」や「利用者間の不満の軽減」のために、直接の評価や能力給以外でできる工夫をしましょう。
作業内容ごとに工賃に差をつける
「作業の質」による工賃の差別はできませんが、作業内容ごとに工賃の金額を変えましょう。
賞与や手当をつける
B型事業所では、作業工賃のほか、手当や賞与(ボーナス)を利用者に与えることができます。
手当や賞与【例】
・皆勤手当
・施設外作業での特別手当
・業績に応じた賞与
先ほどの「事業所の工賃向上計画策定に関するガイドライン」では、工賃による「基本給」に上乗せする形で、以下の「実績給(加算制度)」も紹介されています。

まとめ
今回は就労継続支援B型での利用者工賃の決め方についてご紹介しました。就労継続支援B型の工賃を適切に利用者へ分配することによって、利用者のモチベーションがあがり、利用者の増員に繋がる可能性があります。
また、利用者のモチベーションがあげれば事業所の取り扱える作業も増え、工賃アップも見込めるなど良いことづくめと言えます。
工賃を決めている事業所であっても今一度工賃の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
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