行政書士試験の法律について勉強していると民法で委任契約について勉強します。
この委任契約は実際の業務でとても重要になります。行政書士業務は委任契約を行い、受任者になります。委任者と受任者という関係になります。受任者としての役割をしっかりと理解していないと業務に支障をきたしてしまうことになります。
そうならないためにも、委任契約について整理し理解を深める必要があります。今回は契約行為の中でも役割が混同されがちな委任契約、受任者の役割と重要性について解説したいと思います。
この記事を読んで分かること
・受任者の役割、受任のメリット
・受任する流れ
・試験に役立つ委任受任の権利義務のポイント
・契約書に記載する業務委任契約事項

受任者とは

まず「受任」とは、ある仕事や責任を引き受けることを指します。特に法律やビジネスの契約行為で使われ、特定の業務や役割を委託された際に用いる言葉です。この言葉は、委任者からの依頼を受任することであり、受任は責任感や義務感を伴う行為です。
受任者は「業務委託契約」で委任された者を指します。業務委託契約とは、委託者が受託者に対して業務を委託し、受託者がこれを受託する契約です。業務委託契約の特徴は、委託者と受託者が互いに対等な立場で締結する点が特徴です。
受任者の役割
このように受任者は委任者の事務処理を責任をもって引き受ける役割があります。
業務委託契約のメリット
委任者のメリット
①委任者の必要な業務だけ発注できる
必要な分だけ業務を発注できるので、無駄な人件費を抑えられます。雇用契約とは異なり、会社として社会保険料を負担する必要もありません。
②外部の専門的人材やノウハウを活用できる
自社だけでは対応が困難な業務についても、受託者側の専門的人材やノウハウを活用して、効率的かつ適切に対応できます。
受任者のメリット
仕事の進め方を自由に決められる
委任者の細かな指示に拘束ない。仕事の進め方や時間配分などを自由に決められる。
民法での【委任者・受任者の権利義務】

民法で委任契約について確認しましょう。
民法 第644条の2(復受任者の選任等) 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。 2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。 第648条(受任者の報酬) 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。 2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。 3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。二 委任が履行の中途で終了したとき。 第648条の2(成果等に対する報酬) 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。 2 第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。 第649条(受任者による費用の前払請求) 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。 第651条(委任の解除) 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。 2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。 |
「委任契約の概要/委任者・受任者の権利義務」ポイント
民法で抑えるべき委任契約のポイントを確認しておきましょう。
- 委任とは、本来は本人が行うべき法律行為を代わりに行うよう他者に依頼することである
- 法律以外の事務処理の委託を「準委任」という
- 受任者は、特約がなければ、委任者は報酬を請求する権利を有しない
- 委任者には、事務処理にかかる費用を受任者に支払う義務がある
- 受任者は、委任者の請求があるときや委任終了後に、事務処理の状況や経過・結果を報告する義務を負う
- 委任契約は、両当事者がいつでも解除できる
- 委任者または受任者が死亡または破産した場合、委任契約は終了する
受任の流れ

受任者の役割が分かったと思いますが、受任するための流れを整理してみましょう。
委任先から依頼の連絡を受けます。受任するためには、公募や照会などさまざまな情報発信を行いましょう。
委任の依頼があれば、業務内容や報酬などの契約条件を協議し、双方が納得できるよう交渉します。必要であれば、この段階で見積書を作成し、提出した上で協議するとスムーズです。
業務内容など契約条件に双方の合意が得られれば、業務委託契約書を締結します。あらかじめ用意してあるテンプレートを使用、または新規で業務委託契約書を作成し、委託先に送付して締結しましょう。
契約方法は、紙または電子契約です。締結した業務委託契約書は会社法上10年間の保存が必要であり、電子契約の場合は電子帳簿保存法に従って保存します。
業務委任契約事項
業務委任契約に決まった形式はありませんが、一般的には下記項目を記載するといいでしょう。
- 委託業務の内容
委託する業務内容を具体的に記載します。
- 委託料
報酬の支払い条件や単価を記載する項目です。成果報酬型・成功報酬型の場合は算定方法について定めがあるか、材料費や交通費などの経費が報酬に含まれるかも明記します。
- 支払い条件・支払い時期
報酬が納品後に支払われるのか、着手金の有無や支払い金融機関に条件があるかを記載します。支払い方法やタイミング、手数料の扱いについても明記しましょう。
- 契約期間
業務の開始日と終了日を明確に記載します。あわせて、自動更新の有無やその方法も記載します。
- 秘密保持
秘密保持が必要な場合に記載します。秘密保持とは、業務において委託者と受託者の間で共有した情報を第三者に知らせてはならない取り決めです。
- 成果物の権利
成果物の権利の帰属先を記載します。権利が受託者から委託者に移る場合には、そのタイミングも明記します。
- 契約不適合責任
成果物が契約内容に適合していないことが発見された場合、成果物に対してどう対応するかを記載します。「修正または代替品を納品する」「委託者が被った損害を受託者に賠償する」といった内容が一例です。
- 禁止事項
委託者が受託者に対して業務を行う上で原則禁止する事柄を記載します。契約後は具体的な指示ができないため、禁止事項を記載します。
- 再委託
再委託とは、受託者が自分自身では業務を行わず、第三者に委託することです。再委託する場合は、その要件や範囲を記載します。
- 契約解除
委託者及び受託者の責任おいて、契約を解除できる条件を記載します。賠償責任にも関わる重要な規定であり、無条件で契約解除ができる条件や期間、一般的な解除条件などを記載します。
- 損害賠償
契約解除や契約違反があった場合の損害賠償有無や補償額の有無を記載します。訴訟になる場合、第一審の裁判所がどこになるかも記載するといいでしょう。
- 有効期間
「締結日より1年間」など、当該契約の有効期間を記載します。自動更新される場合には、いつから自動更新になるのか、それ以降も自動更新があるのかも記載します。
偽装請負に気を付ける
業務委託契約では、委託者は受託者に対して契約外の業務を委託したり、具体的な指示を下したりすることは禁止されています。業務委託契約の範囲を超えた労働をさせると「偽装請負」とみなされ、違法行為として罰則の対象となりますので、注意しましょう。
まとめ
今回は委任契約のうち、受任者に焦点をあてて説明しました。受任契約を上手く活用することで委任者側にも受任者側にもメリットを得ることができます。
しかし、業務委託契約をしっかり結んでいないとトラブルが起きた際に揉める元になります。今回の記事を参考に注意点を確認し契約書を作成してくださいね。
また、行政書士試験の民法にも委任契約は出題される可能性もあります。委任契約に似たものとしては、請負契約などあるため、違いも整理しておくといいでしょう。
業務委託契約を上手く活用し、業務のせいかを上げていきましょう。
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