【遺言書検認とは:手続きから注意点まで徹底解説!】~行政書士試験合格者が解説~

「遺言書は、遺産が充分にある家で書くものだ…。」と思われているかもしれませんが、最近では遺言について興味を持たれている方が増えているように感じます。

実際、2025年2月に、60歳~79歳までの男女2,000人を対象に実施した、「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」では、全体の64.1%の方が「遺贈」の言葉を認知しているという結果が出ました。

高齢化社会の影響もあり、遺言についての広告を目にしたことがある方が増えているのではないでしょうか。今回は遺言書が効果を発揮する際に必要となる検認についてご紹介します。

 今回ご紹介する検認数は毎年増えており、司法統計では以下のような結果が出ています。

  • 令和5年の検認数は22,314件
  • 令和4年は20,500件
  • 令和3年は19,576件

検認は死後に行われる手続きのため1年間に作成された総数とは言えません。ただし、検認数は10年前の16,708件と比較しても約1.34倍に増加しています。

この記事を読むことで分かること
・検認とは何か
・検認が必要な理由
・検認を不要にするにはどうすればいいのか

この記事を読むことで遺言書の効果を発揮するために必要な手続きである検認について知ることができます。また、検認を不要にする方法もご紹介します。

目次

自筆証書遺言や秘密証書遺言が発見されたとき、家庭裁判所に相続人が集まって内容を確認し、遺言書のそのときの状態を保存します。これは遺言書の発見者が勝手に遺言書の改ざんをさせないために行います。つまり、開封は家庭裁判所で行うため、「自宅などで勝手に開封してはいけない」ということです。検認を終えると家庭裁判所から「検認済証明書」を発行してもらえます。

家庭裁判所では「検認」について,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

と解説されています。ここで特に注意する所が検認は「遺言が有効である」という意味ではない点です。

遺言書の検認は、あくまで「遺言書の存在と今の状態」を確認するものです。これにより、それ以降の偽造・変造を防ぐことができ、相続登記などの手続きに使えるようになります。

検認が必要な理由

検認を受けないと相続手続きが行えず、検認なしで相続を行うとペナルティを受ける可能性があります。

①相続手続きに必要

遺言書の検認証明書がない場合、被相続人の銀行口座や証券の名義変更・解約、相続登記等の手続きが行えません。また、遺言書を検認していなければ、「相続放棄」や「遺留分侵害額請求」の判断もできません。

②違法行為として過料を科される可能性がある

検認が必要な遺言書を発見した相続人が、検認を経ずに勝手に開封した場合、5万円以下の過料を科される可能性があります。遺言書を見つけて開封する場合には、家庭裁判所で検認するというルールがあるので、従うようにしましょう。

遺言書の検認を受ける際の流れを確認しましょう。検認を申し立ててから検認期日までの期間は、だいたい1~2カ月程度かかります。また検認の申し立てのためにはたくさんの戸籍謄本類が必要となるので、準備を含め1カ月程度を見込みましょう。

家庭裁判所にて検認の申し立てをします。申立先の家庭裁判所は「遺言者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所」で行います

申し立てに必要な書類

  • 検認申立書
  • 遺言者の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
  • 相続人全員分の戸籍謄本

検認の申し立てにかかる費用

  • 収入印紙800円
  • 連絡用の郵便切手

申し立てた後、数週間から1カ月後ぐらいに、申立人のもとに電話があり、検認期日(検認を実施する日時)の日程調整を行います。日程が確定すると、相続人全員に郵便で「検認期日通知書」と「出欠回答書」が送られます。

検認期日には家庭裁判所に行き、申立人・立ち会う相続人・裁判所の職員が揃って遺言書を開封します。申立人には遺言書の発見状況などについて質問されるケースがあります。

検認期日当日の持ち物

  • 開封前の遺言書(原本)
  • 裁判所から送られてきた「検認期日通知書」など一式
  • 身分証明書(運転免許証など)
  • 印鑑(認印)
  • 収入印紙150円分(「検認済証明書」を発行するための手数料)

検認の出席については申立人は必ず出席しなければなりませんが、申立人以外の相続人が出席するかどうかは任意です。高齢や遠方などの事情があれば出席しなくても問題ありません。

検認が終わったら、家庭裁判所に「検認済証明書」を申請して遺言書に添付してもらいます。検認済証明書がついていないと不動産の登記や銀行での預金払い戻しなどに応じてもらえないので、必ず申請しましょう。なお検認済証明書をつけてもらうには150円の手数料がかかります。

検認が不要になるケース

先ほどまで検認についてご紹介してきました。この検認手続きは戸籍を集めたり、家庭裁判所に行くなど手続きを踏まなければなりません。この検認手続きは、遺言書の自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言と主に3種類の内、遺言が自筆証書遺言と秘密証書遺言だった場合、家庭裁判所による検認が必要になります。

しかし、公正遺言書や法務省管轄の「自筆証書遺言書保管制度」を利用した場合は不要になります。これは発見者が改ざんするおそれが無いからです。

「公正証書遺言」とは、遺言者が公証役場で公証人と立ち会い、作成される公正証書

自筆証書遺言を法務局に預け、画像データ化して保管する制度

まとめ

今回は遺言書を発見した際に行わなければならない検認についてご紹介しました。家族などが亡くなり悲しみの中、相続に関する手続きをすることは非常に負担となります。残した遺言書の手続きを円滑にするためにも自筆証書遺言を法務局に預けたり、公正遺言書を作成するなどして残された親族が安心できるよう備えておきましょう。

くまくまさん
この記事を書いた人

泉州地域の現役福祉地方公務員が障害福祉に関連する知識を収集し、情報提供するブロガー
【資格】
・精神保健福祉士
・行政書士試験合格(R5年度)
【略歴】
・大阪泉州在住
・病院CWを経て、地方公務員に従事
・福祉専門の行政書士として開業準備中!!
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