【相続放棄 手続きと注意点について徹底解説】~行政書士試験合格者が解説~

相続とは突然やってきます。身近な親族が亡くなった場合は、少し心の準備を出来ることもありますが、それでも負担は計り知れません。

相続というと財産をもらえるイメージが強いかも知れませんが、マイナスの財産がある場合は負債を抱える可能瀬も出てきます。この相続が発生した場合は、何もしないでいると相続を受けることになってしまいます。

そうならないためにも相続を放棄する手続きが必要になります。相続放棄すると初めから相続人ではなかったことになります。この相続放棄の手続きは家庭裁判所で行うことになります。

今回は相続放棄の手続きと注意点について解説したいと思います。

この記事を読んで分かること
・相続放棄とはどんなことか
・相続放棄の手続き
・相続放棄のメリット・デメリット

目次

相続放棄とは

まず、相続とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた財産や権利・義務を、相続人が引き継ぐことを指します。
遺産として引き継がれる財産には、以下のようなものが含まれます。

  • プラスの財産:現金、預貯金、不動産、株式などの有価証券、車、貴金属などの動産
  • マイナスの財産:借入金などの債務
  • その他の権利:賃借権、特許権、著作権など

相続放棄とは、相続の権利を放棄して遺産を一切受け取らないことをいいます。「一切の相続を受け取らない」ということは、プラスの財産(現金や不動産など)マイナスの財産(借金など)の両方を一切受け取らないということを意味します。

相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、他に相続人がいればその人たちだけで遺産を分け合うことになります。

相続放棄は他の相続人にその意思を伝えるだけでは手続きとして不十分です。相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し出なければなりません。相続があったことを知ったときとは、通常、被相続人の死亡日と同じであるため、死亡日から3か月以内と覚えておくとよいでしょう。

この3か月という期間は、遺産を相続するか放棄するかを考える熟慮期間とされています。この期間で故人の遺産や借金の額を調査して、相続するか放棄するかを判断することになります。

民法
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

相続放棄の手続き

相続放棄を行うためには、次のような手順が必要です。

  1. 財産調査
    被相続人が残した財産や負債を確認し、相続放棄をするかどうかを判断します。プラスの財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナス財産も確認が必要です。
  2. 家庭裁判所への申述
    被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。申述には、被相続人の戸籍や住民票除票、申述人(相続人)の戸籍謄本などが必要です。
  3. 照会書への回答
    家庭裁判所からの照会書に回答することで手続きが進行します。手続きが認められると、相続放棄が正式に成立します。
  4. 申述受理通知書の受領
    相続放棄が認められると、家庭裁判所から「申述受理通知書」が送付されます。これにより手続きが完了します。

相続放棄の費用

相続放棄自体に大きな金額はかかりません。

  • 収入印紙代:800円
  • 郵便切手代:裁判所によって金額が異なる

相続放棄の手続きを専門家に依頼する場合は、司法書士であれば3万円程度、弁護士であれば5万円程度かかります。

相続放棄に必要な書類

相続放棄に必要書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申し立てる人の戸籍謄本

相続放棄申述書は、裁判所のHPからもダウンロード可能です。

相続放棄の注意点

相続放棄の手続きが分かったと思いますが、相続放棄には注意点がありますので、確認しておきましょう。

生前に相続放棄をすることはできない

家族が多額の借金を抱えていたり相続でトラブルが予想されたりする場合は、前もって相続放棄をしたいというニーズもあるでしょう。しかし、生前に相続放棄をすることはできません。これは事前に相続を他の親族に放棄を強要される可能性があるためです。

遺産を処分した場合は相続放棄はできない

家庭裁判所に相続放棄を申し出る前に、遺産となっている預貯金を使ったり不動産の名義変更をしたりなど遺産を処分した人は相続放棄ができません。これは相続があったことを知りながら遺産を使うことは遺産を自分のものにしようとする意図があるため、法的には単純承認をしたことになります。

相続放棄は原則として撤回できない

家庭裁判所に相続放棄が認められると撤回することはできません。ただし、家庭裁判所に認められる前であれば相続放棄の申し出を取り下げることができます。

相続放棄した人の子は代襲相続できない

相続放棄した場合は最初から相続人でなかったことになるため、その人の子が代襲相続することはできません

代襲相続とは、本来遺産を相続するはずの法定相続人が死亡等の理由で相続できない場合に、その人の子供が代わりに遺産相続する制度のことです。

相続放棄をしても受け取れるものがある

相続放棄をした人は遺産を一切受け取ることができませんが、死亡保険金、死亡退職金、遺族年金などは受け取ることができます。これらは故人の遺産ではなく相続の対象ではないからです。

相続放棄のメリット・デメリット

相続放棄の注意点で分かるかもしれませんが、相続放棄のメリット・デメリットを整理してみました。

メリット① 負債を相続しなくて済む

相続放棄のメリットとして、借金を受け継ぐ必要がなくなります。マイナスの資産がプラスの資産を上回っている場合、相続するとマイナスの財産のみが残ってしまいます。相続放棄をすることで被相続人の借金を消すことも可能になります。

メリット② 遺産相続から解放される

相続トラブルから解放されます。遺産はお金が絡むことのため、親族間でも争いになりがちです。そんなとき、自分が相続放棄すれば、法律上は最初から相続人として存在しなかったことになり、遺産争いや親族とのトラブルに巻き込まれずに済みます。

デメリット① 新たな相続人への負担

相続放棄のデメリットとしては、相続放棄することで、その相続権が他の親族に引き継がれます。その場合、相続権が引き継がれた相手にに相続放棄のことをしっかり話していないとトラブルになることがあります。

デメリット② プラスの遺産まで放棄される

相続放棄とは遺産と負債、どちらも放棄することです。よって、プラスの遺産も放棄しなければなりません。相続財産の調査を行い検討する必要があります。

まとめ

今回は相続が発生した際に行う、相続放棄についてまとめてみました。相続を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければ自動的に相続をしてしまいます。家庭裁判所での手続きも複雑であるため、急になれない手続きに不安になるかもしれませんが、家庭裁判所で確認をしながら進めていきましょう。

くまくまさん
この記事を書いた人

泉州地域の現役福祉地方公務員が障害福祉に関連する知識を収集し、情報提供するブロガー
【資格】
・精神保健福祉士
・行政書士試験合格(R5年度)
【略歴】
・大阪泉州在住
・病院CWを経て、地方公務員に従事
・福祉専門の行政書士として開業準備中!!
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