障害福祉サービスで利用者を支援する際に必要になる個別支援計画ですが、障害福祉のノウハウがないとどのように書類を作成していいのか分からない方もいると思います。
また、障害福祉の仕事を経験した人であっても、サービスの種類が違う職場であったり、実際に自分がサービス管理者として作成しようとしたときに、どうしたらいいのか分からなくなることもあるかもしれません。
就労継続支援B型で個別支援計画書を作成していない、作成手順が不正であると30%~50パーセントの減算となってしまいます。このようなことが起きれば事業所としては赤字になるかもしれません。
そうならないためにも今回は、就労継続支援B型で個別支援計画を作成する手順と、どのようなことを書けばいいのか記入例を含めてご紹介します。
この記事を読んで分かること
・個別支援計画の作成手順
・就労継続支援B型の支援にあった個別支援計画の方
・令和6年度の法改正を含めた注意点
個別支援計画とは

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準」の中で個別支援計画書の作成が義務付けられています。正しく作成されていない場合は、報酬の減算や行政指導の対象となってしまう場合もあります。
そのため就労継続支援B型のサービス提供する際に、必ず作成するのが個別支援計画書です。個別支援計画書は、利用者に対してどういったサービスを提供するのかを示した計画書です。個別支援計画は事業所のサービス管理者が作成する必要があります。
個別支援計画書の意義は、利用者一人ひとりのニーズに合わせて支援の内容や目標、実施方法を具体的に記載することで、対象者にとって効果的なサポートを行えるようするための計画書の役割もあります。また、事業所の職員全員が利用者に対して同じ目的をもって支援を行うための情報共有と認識を一致させる役割もあります。
参考様式
・個別支援計画参考様式
・【別添】生活介護における個別支援計画書参考様式[18KB](出典:厚生労働省)
・個別支援計画会議録(エクセル:24KB)(出典:宮城県)
個別支援計画作成までの流れ

個別支援計画の作成の手順は決められており、間違った手順で作成すると不正とみなされてしまいます。例えば、サビ管以外の職員が作成する、サービス管理者が一人で作成する、個別支援計画を作成したが利用者に署名をもらっていない、個別支援計画の更新がされていないなど作成手順の不正や不備の可能性があるため、どのように個別支援計画を作成していくのかを確認しましょう。
➀アセスメント
利用者と面談し、聞き取りをします。原則、 サービス管理責任者が面談します。見学 体験時に行う場合もあります。本人の障害特性を把握し、現状の課題や本人、家族のニーズを整理します。
➁個別支援計画の原案
アセスメントを元に、個別支援計画原案を作成します。利用者の生活に対する意向や総合的な支援の方針、生活全般の質を向上させるための課題、提供するサービスの目標と達成時期、サービスを提供する上での留意事項などを盛り込みます。独自のフォーマットを使用しても構いませんが、必ず記載しなければならない内容がいくつかあります。
- 利用者や保護者の希望や、考える課題
- 短期目標と長期目標(GHであれば、健康面・衛生面・経済面など。就労系であれば作業面・対人関係や社会生活面など)利用者に頑張ってもらうことなど
- 具体的な支援内容(利用者が思う支援してもらいたい内容などを含む)
- 支援期間
- 優先順位
上記が挙げられますが、市町村によっては「こういう内容を入れてください」と指摘されることもあります。詳細は市町村に問い合わせてみたほうが間違いないでしょう。
③サービス担当者会議
施設職員で作成した個別支援計画の原案の内容について担当者会議を行います。アセスメントと現状のずれがないかを把握し、話し合いを元に、短期目標、長期目標など計画の詳細な内容を作成します。
➃計画の修正、利用者の同意と署名
担当者会議を元に修正した計画を、実際の計画書を示しながら利用者に説明、交付した上で、同意と署名を貰います。押し印が慣例となっていますが、自治体によっては署名のみという自治体もあるようです。
➄サービス提供(モニタリング)
個別支援計画に基づき、サービスを提供します。また、経過をモニタリングとして記録しておきます。
⑥個別支援計画書を相談支援事業所へ交付し共有
完成した個別支援計画書を相談支援事業所へ交付し、内容を共有します。※令和6年度改正で必須となりました。
⑦更新
6か月以内に、 個別支援計画を更新します。更新の際にも、同意と署名が必要です。
就労継続支援B型の個別支援計画

就労継続支援B型での個別支援計画書の記入事項をご紹介します。
①就労継続支援B型の支援目的を考える
まずは就労継続支援B型の役割を考えてみましょう。
就労継続支援B型は障害や体力などの理由から、企業と雇用契約を結んで働くことが難しい方が生産活動(仕事)を通して就労の機会を得て、働くスキルを維持向上することができるほか、日中に安心して過ごすための居場所という役割があります。
②利用者の情報を確認する
対象者の基本情報として、名前や年齢、障害の種類、支援の目的などを明記します。この基本情報は、計画を作成する際に必要な背景を把握するための基盤となります。例えば:
- 氏名: くまくまさん
- 年齢: 30歳
- 障害種別: 知的障害
③支援目標を設定する
支援目標には短期および長期の目標を設定します。
短期目標として「毎週2回作業所へ通う」など就労継続支援B型の利用目的とその利用者の現状に合わせて短期的にできる目標を掲げます。
長期目標として「1年後に就職活動を開始する」が考えられます。利用者がどうなっていきたいのかを含めて長期木業をたてましょう。
このように具体的な数値や期間を示すことで、進捗確認が容易になります。
④具体的な支援内容
支援内容については、どういった具体的な手段を取るかを整理します。。以下はその一例です:
- 作業訓練 :毎日3時間、作業訓練を行う。週1回のスキルアップトレーニングを実施する。
- 生活支援:週3回、食事準備や掃除などの日常生活スキル向上。
➄評価方法も記載する
評価時期も必要があります。記入例としては、「3か月ごとに進捗を評価し、目標達成度を確認する」といった形です。
⑥支援にあたるスタッフの名前や役割も記載する。
支援にあたるスタッフの名前や役割も記載し、担当者の明確化をします。具体的には「作業については○○支援員(職業指導員)」「生活能力向上については○○相談員(生活支援員)」というように、支援チームのメンバーを明記することで、利用者が誰に相談すれば良いかが明確になります。
このように、就労継続支援B型の計画書には、対象者の情報、支援目標、具体的な支援内容、評価方法、支援スタッフに関する情報が盛り込まれます。
実際の記入例

具体的な記入例を示すことで、個別支援計画の作成がスムーズになります。以下に具体例を紹介します。
ケース
基本情報:
- 氏名: くまくまさん
- 年齢: 34歳
- 障害種別: 知的障害
支援目標:
- 短期目標::週2回以上通所できるようにする。
- 長期目標:1年後に就職活動を開始する
具体的な支援内容:
- 毎日3時間、作業訓練を行う。週1回のスキルアップトレーニングを実施する。
- コミュニケーション能力向上トレーニング(月2回)
- 週3回、食事準備や掃除などの日常生活スキル向上。
このケースでは、くまくまさんが通所するための生活リズムを作り、就労を目指すためのサポートを計画されています。

まとめ
今回は就労継続支援B型の個別支援計画作成方法を具体例を交えてご紹介しました。
就労継続支援B型で個別支援計画書の作成手順が不正であると30%~50パーセントの減算となってしまいますので、手順をしっかりと踏んで作成しましょう。
また、障害福祉サービスで利用者を支援する際に必要になる個別支援計画ですが、障害福祉のノウハウがないとどのように書類を作成していいのか分からない方もいると思います。今回ご紹介した記入例を参考に、実際の利用者の状況を確認し就労継続支援B型の特色を踏まえて作成していきましょう。
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