災害が起こった際の企業への被害を最小限にとどめ、事業継続を図るために策定する「BCP(事業継続計画)」といいます。
日本は自然災害が多い国であり、近年は新型コロナウイルス感染症による大きな影響もあり、BCPの重要性が明確化されました。
令和6年度の障害福祉サービスの報酬改定ではBCPが未作成の場合は減算項目が作成され、障害福祉事業所は必ず作成しなければならなくなりました。
今回はBCPとは何か、どのように作成するのかをご紹介します。
この記事を読んで分かること
・BCPの意味とは事業継続計画を指す
・BCP作成のポイント
・BCP未作成減算の概要
BCPとは

BCPは、「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉です。単語ごとの意味は以下の通りです。
日本語では「事業継続計画」と訳されます。その名の通り、緊急時における事業継続のための方針・体制・手順などをまとめたもので、被害の最小化と早期復旧、企業活動の安定を図ることを目的としています。
よく防災計画との違いを質問されますが、防災計画では、災害を「未然」に防ぎ「利用者の命や企業の経営資産を守る」「早期復旧を目指す」ことに主軸を置いています。それに対し、BCPは「災害後」の速やかな復旧による「事業継続」を目的としていることが特徴です。
BCPの構成要素
BCPは以下のような要素で構成されます。
- 総則:BCPの基本方針や目的を明確に。
- リスクの把握:施設が直面する可能性のあるリスクを特定し、ハザードマップなどを用いて把握します。
- 優先業務の選定:非常時に優先して実施すべき業務を決定します。
- 推進体制:BCPの推進体制を整備し、具体的な役割分担を決めます。
- 資源の確保:必要な資源(職員、防護具、消毒液など)の確保と管理を行います。
- 訓練と評価:BCPの有効性を確保するために、定期的な訓練と評価を実施します。
以上6つの内容を含めた計画書を作成しましょう。計画書の雛形は
参考:大阪府 「超簡易版BCP『これだけは!』シート (自然災害対策版)」
BCPの種類と作成手順

BCPは大きく分けて、感染症対策BCPと自然災害対策BCPの2種類に分類されます。それぞれの作成手順について説明します。
感染症対策BCP
- リスクアセスメント:
- インフルエンザウイルスなどの感染症の流行を想定し、施設が直面するリスクを特定します。
- 保健所や医療機関と連携し、感染症の発生状況を把握します。
- 業務の優先順位付け:
- 感染症流行時に優先して行うべき業務(例:食事の提供、排泄介助など)を決定します。
- 感染者発生時の対応手順を明確にし、必要な職員数を確保します。
- 資源の確保:
- 感染防止のための資源(マスク、手袋、消毒液など)を通常時から確保しておきます。
- 職員の健康管理を徹底し、感染予防策を実施します。
- 推進体制の整備:
- 感染症対策チームを設置し、役割分担を明確にします。
- 訓練と評価:
- 感染症発生を想定した訓練を定期的に実施し、対応手順を確認します。
- 訓練結果を基にBCPを見直し、改善点を反映させます。
自然災害対策BCP
- リスクアセスメント:
- 地震、台風、洪水などの自然災害を想定し、施設が直面するリスクを特定します。
- ハザードマップや自治体が提供する被災想定を基に、具体的なリスクを把握します。
- 業務の優先順位付け:
- 自然災害発生時に優先して行うべき業務(例:避難誘導、安否確認など)を決定します。
- ライフラインの停止を想定し、必要な資源(水や非常食など)を確保します。
- 資源の確保:
- 非常時に必要となる資源を通常時から備蓄しておきます。
- 推進体制の整備:
- 自然災害対策チームを設置し、役割分担を明確にします。
- 自治体や地域の関係機関との連携体制を整備し、協力体制を構築します。
- 訓練と評価:
- 自然災害発生を想定した訓練を定期的に実施し、対応手順を確認します。
- 訓練結果を基にBCPを見直し、改善点を反映させます。
定期的な訓練や見直しを実施する
BCPを作成したら、定期的な訓練や見直しを実施することも重要です。訓練や研修をすることで職員・利用者の一人一人が自身の行うべき行動を認識できるだけでなく、現状のBCPの課題点も把握できます。
BCPを見直すタイミングとしては、以下のケースが想定されます。
- 防災に関する法令や指針ガイドラインの改正
- 他地域での自然災害発生
- 新たな感染症リスクの発生たな感染症リスクの発生
- 年度の切り替
- 運用メンバーの変動
- 防災訓練の実施前
定期的な見直しや改善を図り、よりスピーディーで実効性のあるBCPにしていくことが重要です。
業務継続計画未策定減算の要件

基準を満たしていない場合に減算が適用されます。
- 業務継続計画を策定すること
感染症と自然災害、どちらの内容も作成しなければいけません。片方しかない場合は減算になります。 - 作成した業務継続計画に従って、必要な対応を行うこと
なお計画の周知や研修、訓練、定期的な見直しなどは、実施していなくても減算にはなりません。
減算の単位数
業務継続計画未策定減算が適用されると、利用者全員分の基本報酬が減算になります。サービスによって減算になる単位数が違うので注意しましょう。
共同生活援助…基本報酬の3%を減算
就労継続支援B型…基本報酬の1%を減算
となります。減算されるのは月の初日からであれば当月から、月の途中からであれば翌月から、解消された月まで減算になります。
業務継続計画未策定減算とは、業務継続計画を策定していない施設を対象として基本報酬から差し引かれるものです。業務継続計画未策定減算によって、大幅に施設の収益性が低下する可能性もあります。減算されないためにも、施行される前に余裕をもって業務継続計画を策定しておきましょう。
まとめ
日本は自然災害が多い国であり、近年は新型コロナウイルス感染症による大きな影響もあり、BCPの重要性が明確化されました。
令和6年度の障害福祉サービスの報酬改定ではBCPが未作成の場合は減算項目が作成され、障害福祉事業所は必ず作成しなければならなくなりましたが、災害が起こった際の企業への被害を最小限にとどめ、事業継続を図るために策定する「BCP(事業継続計画)」を作成するのは事業所としては利用者の安全と社会のための責務と言えます。
BCPを作成し、定期的に見直しと訓練を続けて感染・災害に強い事業所を作っていきましょう。
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