入院していた方が退院し日中活動の場として就労継続支援B型を選ばれることはよくあると思います。
通所依頼の段階で、病院や支援者からの情報で少年院や刑務所を退所した人や医療観察法の対象となる人の支援を依頼される可能性があるかもしれません。
今回は、そういった少年院や刑務所を退所した人や医療観察法の対象となる人の支援を行った場合に算定できる社会生活支援特別加算と、対象者の医療観察法の制度について概要をお伝えします。
この記事を読んで分かること
・社会生活支援特別加算の算定方法
・医療観察法の概要と支援


社会生活支援特別加算とは

少年院や刑務所を退所した人や医療観察法の対象となる人などが事業所を利用した場合の加算です。対象となる人と事業所の体制どちらにも要件があり、どちらも満たす場合に算定できます。
利用者側の要件
以下の1または2のどちらかを満たしている利用者が加算の対象になります。
- 医療観察法にもとづく通院決定または退院許可決定を受けてから3年未満
- 矯正施設・更生保護施設(少年院や刑務所など)を退所などしたあとに3年を経過しておらず、保護観察所または地域生活定着センターとの調整で事業所を利用することになった
矯正施設からの退所等の後、一定期間居宅で生活した後3年以内に保護観察所又は地域生活定着支援センターとの調整により、指定自立訓練(機能訓練)等を利用することになった場合、指定自立訓練(機能訓練)等の利用を開始してから3年以内で必要と認められる期間について加算の算定対象となる。
事業所側の要件
事業所は以下の4つすべてを満たす必要があります。
- 従業者の配置
人員配置基準に定める従業者の数に加え、平成18年厚生労働省 告示第556号第9号に定める厚生労働大臣が定める者の受け入れ に当たり、当該利用者に対する適切な支援を行うために必要な 数の生活支援員を配置することが可能であること。参考:厚生労働大臣が定める者 - 有資格者による指導体制
①社会福祉士、精神保健福祉士又は公認心理師の資格を有する者が配置されていること
②指定医療機関等との連携により、社会福祉士、精神保健福祉士又は公認心理師の資格を有する者を事業所に訪問させていること
①②のいずれかを選択すること - 研修開催
従業者に対する研修会については、原則として事業所の従業者全員を対象に、加算対象者の特性の理解、加算対象者が通常有する課題とその課題を踏まえた支援内容、関係機関の連携等について、医療観察法に基づく通院決定又は退院許可決定を受けた対象者及び矯正施設等を出所等した障害者の支援に実際に携わっている者を講師とする事業所内研修、既に支援実績のある事業所の視察、関係団体が行う研修会の受講等の方法により行うものとする。 - 協力体制
保護観察所、更生保護施設、指定医療機関又は精神保健福祉センターその他関係機関との協力体制が整えられていること。
支援内容 加算の対象となる事業所については、以下の支援を行うものとする。
ア 本人や関係者からの聞き取りや経過記録、行動観察等によるアセスメントに基づき、犯罪行為等に至った要因を理解し、再び犯罪行為に及ばないための生活環境の調整と必要な専門的支援(教育又は訓練)が組み込まれた、個別支援計画の作成
イ 指定医療機関や保護観察所等の関係者との調整会議の開催等
ウ 日常生活や人間関係に関する助言
エ 医療観察法に基づく通院決定を受けた者に対する通院の支援
オ 日中活動の場における緊急時の対応 カ その他必要な支援
手続きの流れ

手続きの流れ
事業所による申出 加算の算定を行おうとする事業所の管理者は、区保健福祉部に対し「社会生活支援特別加算の算定開始に係る申出書」 及び 「個別支援計画(又は当該計画案)」の提出を行うこと。
参加者や議事録など、要件を満たす内容であることがわかるもの
「社会生活支援特別加算 届出書」などで指定権者のWebサイトを検索し、それぞれのルールに従って提出してください。
算定のための書類
- 特別な支援に対応した個別支援計画
・アセスメントに基づいて犯罪行為などに至った要因を理解した上で作成している
・再び犯罪行為に及ばないための生活環境の調整と、必要な専門的支援(=就労支援)の内容を組み込んでいる - 研修を実施した記録
・参加者や議事録など、要件を満たす内容であることがわかるもの - 届出書類
・「社会生活支援特別加算 届出書」など
医療観察法とは

医療観察法とは「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」が正式名称です。精神障害のある人のうち刑事責任を問えない状態で重大な傷害、強盗、放火、強制わいせつなどの対象行為を犯してしまった人を対象とし、「その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的」となっています。
医療観察制度の流れ
責任能力に問題があり不起訴や無罪、減刑になった場合、検察官は、原則として、地方裁判所に対して、対象者の処遇を決定するよう申し立てを行います。
検察官の申立てがあれば、地方裁判所の裁判官は、対象者の陳述を聞いた上で鑑定入院命令を発します。
その結果、対象者は医療機関に入院し、精神科医の鑑定を受けることになります。入院期間は2か月以内ですが、最長で1か月延長されることがあります。
鑑定が終わると地方裁判所で審判が開かれます。審判では、裁判官1名と精神保健審判員と呼ばれる精神科医1名の合議によって決定が出されます。裁判所によって出される決定は以下の3種類です。
①入院決定
②通院決定
③医療観察法による医療を行わない旨の決定(通院も入院もなし)
裁判官と精神保健審判員以外に対象者、対象者の付添人である弁護士、検察官も審判に出席します。他に以下の方が審判に参加したり、傍聴することがあります。
医療観察法の入院
裁判所の審判で入院決定が出された場合、対象者は医療機関に入院し治療を受けなければなりません。入院する医療機関は対象者が自分で選べるわけではなく、厚生労働大臣があらかじめ定めた指定入院医療機関から厚生労働大臣によって選ばれます。
入院期間はおおむね18か月です。指定入院医療機関の管理者は、入院継続の必要があると判断した場合は、6か月ごとに、地方裁判所に対して、入院継続の確認の申立てをしなければなりません。
裁判所によって退院が許可されると退院できますが、通常は、完全に自由になるわけではなく、引き続き医療観察法による通院をしなければなりません。
医療観察法の通院
医療観察法の通院期間は、通院決定の日から3年です。ただ、裁判所は2年の範囲で通院期間を延長することができます。延長期間が通算で2年を超えていなければ、複数回にわたり延長することもできます。この通算で2年間の通院期間が上記の社会生活支援特別加算の利用者となります。
医療観察者の相談先
保護観察所には対象者の社会復帰をサポートする専門職員がいます。この職員を社会復帰調整官といいます。社会復帰調整官は精神保健福祉士の資格を有しているのが通常です。この社会復帰調整官が医療観察対象者の通院指導や日常の生活の助言等を行っていますので、支援に困った場合には相談できる専門職となります。

まとめ
今回は、少年院や刑務所を退所した人や医療観察法の対象となる人の支援を行った場合に算定できる社会生活支援特別加算と、対象者の医療観察法の制度について概要をご紹介しました。
医療観察法による入院していた方が退院し日中活動の場として就労継続支援B型を選ばれることはよくあると思います。そうなった際に適切な支援を行えるよう医療観察法についての知識や支援体制を整えておくことが重要となります。
医療観察対象者の支援をする機会は少ないかもしれまんせんが、支援体制の質の向上のため医療観察者の対応方法なども知っておくことが重要かもしれませんね。
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