【精神障害者地域移行特別加算:地域移行支援について】

長らく、日本では精神疾患のある方が長期にわたり入院を続ける状況が問題視されてきました。「本当は退院できる状態なのに、地域に移るための準備が整わない」ことで入院が長期化してしまうことも少なくありません。

そこで病院ではなく、地域で自立して生活することをめざす人たちのために、「地域移行支援」が重要視されるようになりました。

地域移行支援の対象者は、病院に1年以上の長期入院者、本人や家族が退院を希望している、病状が安定していて主治医の退院許可が出ている人です。しかし、退院許可が出ていても、これまで長く病院で過ごしてきた方にとっては、地域で生活すること自体が不安であり、「誰かが見守ってくれている」という安心感が欠かせません。

「病院から地域へ」というプロセスは、制度的にも心理的にもハードルが高いものですが、丁寧な支援を積み重ねること必要になります。

そう言った長期入院の退院を促進するために、創設されたのが「精神障害者地域移行特別加算」となります。この加算があることで、地域からの協力を得ることに繋がります。

この加算は、障害者グループホームで長期入院患者の退院支援を行った場合の加算です。障害者グループホームは、障害者の夜間において、共同生活を営むべき住居において行われる相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の必要な日常生活上の援助を行うサービスです。主に居住支援として利用されます。

障害者グループホームでの加算があることで、長期入院者の居宅を受け入れてもらいやすくなります。

この記事を読んで分かること

・精神障害者地域移行特別加算の要件
・「精神障害者地域移行特別加算」を取得する注意点
・精神障害者の地域移行支援とは何か

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目次

精神障害者地域移行特別加算とは

精神科病院等に1年以上入院していた精神障害者に対して、地域で生活するために必要な相談援助や個別支援等を行った場合に加算をすることが可能です。

300単位/日

対象者の要件

  • 精神科病院に1年以上入院していた精神障害者であって、精神科病院を退院してから1年以内の方
  • 運営規定に定める主たる対象とする障害者の種類に精神障害者を含んでいること。
  • 指定障害福祉サービスの規定により指定共同生活援助事業所等に置くべき従業員のうち社会福祉士、精神保健福祉士又は公認心理師等である従業者を1人以上配置していること。
  • 社会福祉士、精神保健福祉士又は公認心理師等である従業者が、対象となる方に対して、共同生活援助計画等を作成するとともに、地域で生活するために必要な相談援助や個別の支援等を行うこと。

※地域生活移行個別支援特別加算を算定している場合には算定できません。

支援の内容は以下のようになります。

  • 社会福祉士、精神保健福祉士又は公認心理師若しくは心理に関する支援を要する方に対する相談、助言、指導等の援助を行う能力を有する方である従業者による、本人、家族、精神科病院その他関係者から聞き取りによるアセスメント及び地域生活に向けた個別支援計画の作成
  • 精神科病院との日常的な連携(通院支援を含む)
  • 対象利用者との定期及び随時の面談
  • 日中活動の選択、利用、定着のための支援
  • その他必要な支援

【提出書類】

  • 変更届出書(変更届の場合)
  • 体制等状況一覧表
  • 加算届出様式
  • 資格証の写し
  • 勤務体制表
  • 運営規定

精神障害者地域移行特別加算の算定注意点

障害者グループホームで「精神障害者地域移行特別加算」を算定するときに、気を付けるポイントがありますので確認しておきましょう。

加算対象者について

・退院日から1年以内しか算定できない
・退院直後から算定しなくて期間が経っても算定できる(※ただし退院日から1年以内まで)

支援内容の記録について

・精神病院との日常的な連携の記録
・加算対象利用者との定期的なまたは随時の面談
・日中活動の選択や利用、そして定着に関する支援

併給での加算はできない

・地域生活移行個別支援特別加算:犯罪者に対する支援への加算670単位/日と併給はできません

以上3つの点を注意し算定しましょう。

地域移行支援とは

地域移行支援とは、精神障害などを抱えながら施設や精神科病院などに入所、入院している方に対して、退所や退院後の住居の確保や地域生活をスムーズに行っていくことができるような支援や援助を行います。

地域移行支援の必要な理由は冒頭でも述べていますが、病院に1年以上の長期入院者、本人や家族が退院を希望している、病状が安定していて主治医の退院許可が出ている人が、これまで長く病院で過ごしてきた方にとっては、地域で生活すること自体が不安であり、「誰かが見守ってくれている」という安心感が欠かせません。

「病院から地域へ」というプロセスとして、地域移行支援が必要となります。利用希望者の話を聞いたうえで、彼らに必要な地域移行支援の計画を立て、現在入所や入院している施設や病院とも連携を図りながらサポートをします。支援期間は、原則として6ヶ月となっています。

地域移行支援のサービスの支援

地位移行支援では、利用者が退院退所後に地域での生活を送ることができるよう、次のようにサービスを行っていきます。

STEP
地域移行計画作成会議を行い、地域移行計画の作成

利用者が具体的にどのように地域移行支援サービスを利用したらよいかの会議を開き計画を立てます。

STEP
訪問相談

利用者の入院入所先に訪問し、本人とスタッフから退院に向けた今後の話をします。

STEP
同行支援

退所退院後の生活の場や日中活動を行う際に、必要となるサービスの市役所などでの手続きに同行しサポートします。

STEP
関係機関との連絡調整

医療機関や、障害福祉サービス、地域などとの連絡調整を行います。

STEP
体験利用・体験宿泊

地域生活開始に向けて、利用することとなる障害福祉サービスなどの体験利用や、アパートやグループホームたどの体験宿泊を行うサポートをします。

地域移行支援の利用料金

利用者は料金を無料で利用できます。
地域移行支援でサービス計画作成でかかった費用などは、事業所側に対して地域移行支援給付金が支払われます。
ただし、サービス利用に伴う、食事代や外出時の交通費などは自己負担です。

よくある質問

精神障害者地域移行特別加算についてよくある質問をまとめました。

精神障害者地域移行特別加算の算定期間は、「入居してから1年間」なのか、それとも「退院・退所してから1年間」なのか、どちらを基準に判断しますか?

算定期間は「退院・退所してから1年間」で判断します。

精神障害者地域移行特別加算は、地域生活移行個別支援特別加算と同時に算定できますか?

精神障害者地域移行特別加算は地域生活移行個別支援特別加算と評価の内容が重複するため、地域生活移行個別支援特別加算を算定する場合は精神障害者地域移行特別加算を算定することはできません。

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まとめ

障害者グループホームで長期入院患者の退院支援を行った場合の加算「精神障害者地域移行特別加算」をご紹介しました。

「本当は退院できる状態なのに、地域に移るための準備が整わない」ことで入院が長期化してしまうことも少なくありません。そのための支援の方法として、障害者グループホームで長期入院患者の退院支援が重要となります。

地域移行は、病院から退院へ押し出す力と地域から引っ張る力の両方が必要となります。

くまくまさん
この記事を書いた人

泉州地域の現役福祉地方公務員が障害福祉に関連する知識を収集し、情報提供するブロガー
【資格】
・精神保健福祉士
・行政書士試験合格(R5年度)
【略歴】
・大阪泉州在住
・病院CWを経て、地方公務員に従事
・福祉専門の行政書士として開業準備中!!
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