行政書士試験合格に必要な知識の中から皆さんの日常生活にかかわり合いのある民法についてご紹介していけたらと思います。行政書士は争いのある法律行為は行えませんが、様々な法律を駆使した権利義務に関する書類の作成や事実証明に関する書類の作成を行います。その中で民法とは一般私法であり、人間の社会生活における個人の財産関係や家族関係を規律するルールの役割があります。
債権債務について様々なルールについて説明してきましたが、今回は債権が消滅する時について説明していきたいと思います。みなさんは債権が消滅する時はどんな時をイメージしますか??債権を履行した時、すなわち弁済をした時をイメージするのが一般的です。弁済とは「債務者が債務を実行すること」を指します。この弁済について深堀してみようと思います。
この記事は、法律に興味がある方、行政書士試験の合格を目指す方などに参考になる内容になっています。
債権の消滅とは
まずは債権とは給付内容の実現を目的とする権利のため、給付が実現すればその目的を達成し消滅します。これを弁済と言います。逆に目的の給付が実現不可能になった場合にも債権は消滅しますが、債権不履行に基づく損害賠償等が発生します。その他にも、代物弁済、供託、相殺、更改、免除、混合、時効があります。
弁済
まずは弁済のルールについて説明します。
①特定物の引き渡しには契約に適合した物を引き渡します。なお品質を定めていない時は、引き渡しすべき時の現状で渡します。
②弁済の場所は特約や慣習が優先されますが、債権発生時に物の存在していた場所です。その他の場合は債権者の現住所となります。
③弁済の費用は債務者が負担します。ただし、債権者の理由で費用が増加した時は債権者の負担になります。
弁済の方法は①現実の提供と口頭の提供があります。口頭の提供とは民法で出てくる概念です。
口頭の提供:債権者があらかじめ受領を拒んだ場合(受領期日の延期、契約の解除の拒絶)、に弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告する方法のことです。債務者の受領しない意思が明確な時は口頭の提供さえも不要です。この口頭の提供を行うことで、債務者は履行遅滞を逃れることが出来、不履行責任を負いません。この口頭の提供時にはその債務が履行できる状態をその都度行わなければなりません。(売り物を渡す債務の場合、催告する度に売り物を持参しなければなりません。)
弁済者が本人であれば問題ないのですが、弁済を第三者が行った時、または受領権者としての外観を有する者に弁済した場合という問題があります。
第三者弁済
民法では第三者弁済を認めています。しかし、債務の性質上許されない場合(指定した画家に絵をかいてもらう)、当事者が反対の意思を表示した場合、債務者または債権者の意思に反して弁済した場合は有効な弁済となりません。
受領権者としての外観を有する者に対する弁済
基本は受領権のない者に対して弁済が行われても有効な弁済とは認められないのが原則ですが、弁済をした者が善意であり、かつ過失がないときに限り有効になります。誰がどう見ても受領権者らしい者に弁済した債務者を保護するためです。例えば、銀行預金の通帳と印鑑を持参している泥棒であっても、善意無過失に預金を支払った場合は有効になります。
代物弁済
代物弁済とは本来の給付に代えて、他の物の給付をもって債権を消滅させる契約です。例えば借金をしており、返済の代わりにその金額に見合った高級な時計を渡し、債務を消滅させることを言います。
供託
供託とは、金銭や有価証券などを国の機関である供託所に提出して、その管理を委ねる制度です。例えば、相続人が不明な場合や、債務者が債権者に支払いをする場合などがあります。供託された財産は、最終的には供託所がその取得者を決めて渡します。
相殺
相殺とは債権者と債務者が相互に同種の債務を有する場合に、一方的意思表示により双方の債務を対等額において消滅させることをいいます。相殺できない債務は①抗弁権がある債務(同時履行の抗弁等)、②相殺制限特約、③不法行為や人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(加害者側が相殺を申し出ることは禁止)④差押禁止債権(債権成立時に注意)があります。
更改
更改とは、給付の内容の重要な変更、又は債務者若しくは債権者の交替いよって、新債務を成立させるとともに、旧債務を消滅させる契約のことを言います。例えば100万円の金銭債権がある場合、債権者と債務者の合意により車1台の給付に切り替えることを言います。
免除
免除とは、債権を無償で消滅させる債権者の単独行為を言います。連帯債務の場合、免除されれば支払いから逃れることが出来ます。しかし、他の債務者が支払った場合は求償されますので注意が必要です。
混合
混合とは、債権と債務者が同一人に帰属することを言います。例えば、父が子供に100万円を貸していたとして、父が亡くなり子どもが相続した場合には債権者と債務者が同じになり債権が消滅します。
時効による消滅
消滅時効とは法律上は権利を行使することが出来るにも関わらず、権利者が権利を行使しない状態が一定期間継続した場合にその権利を消滅させます。詳しくは過去投稿時効消滅をご覧ください。
まとめ
債権を消滅させる方法は弁済だけでなく、民法にはさまざまな方法が決められています。状況によって弁済するだけでなく、別の物に変えたり、他の方法で弁済したり消滅を待ったりすることによっても債権が消滅します。債務を実行するだけの方法だけでなく、自分の状況にあった方法を債権者と交渉してみましょう。
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