【就労継続支援B型】就職が決まっても喜ぶのは早い?「就労移行支援体制加算」6ヶ月ルール

こんにちは。 「くまくま相談事務所」です。
就労継続支援B型事業所において、利用者を一般就労へと送り出すことは支援の最大の成果です。そして、その実績を評価し、事業所の売上に大きく貢献してくれるのが「就労移行支援体制加算」です。
しかし、多くの事業所が「就職して退所したから、来年は加算が取れる!」という勘違いをしています。ここに、運営指導の罠が潜んでいます。
✅ この記事を読んでわかること
- 【算定の絶対条件】 単なる「就職」ではなく「6ヶ月の定着」が必須であることと、休職からの復職等の具体的なカウント基準
- 【令和8年(2026年)改正】 「定員上限」と「過去3年間算定者の除外」という、今後の事業計画を左右する厳格化ルール
- 【加算の仕組みと具体例】 1人の定着実績がもたらす売上インパクト(モデル計算)
「就職」ではなく「6ヶ月の定着」がカウントの絶対条件

就労継続支援B型を経て企業等に就労した後、当該企業等での雇用が継続している期間が6ヶ月に達した者(就労定着者)が前年度にいる場合、「利用定員」「平均工賃月額」に応じた所定単位数に前年度の就労定着者の数を乗じて得た単位数を加算します。
通常の事業所に雇用されている者であって「労働時間の延長」or「休職からの復職」の際に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とする者が、就労継続支援B型のサービスを受けた場合、そのサービスを受けた後、就労を継続している期間が6ヶ月に達した者も「就労定着者」と取り扱われます。具体的には、
- 「就労時間の延長」の場合、就B終了日の翌日
- 「休職からの復職」の場合、実際に企業に復職した日
を1日目として6月に達した者が、「就労定着者」となります。
就労移行支援体制加算は、就労継続支援事業所から一般企業へ就労し、6ヶ月以上継続して就労できるように支援したことを評価される加算です。前年度の実績により評価される加算で、1年間を通して通所した利用者全員に算定される加算です。
転職したらリセット?「1ヶ月特例」を繋ぐ支援記録の罠
もし利用者が就職後3ヶ月で退職し、すぐに別の会社へ再就職した場合はどうなるでしょうか?原則はリセットですが、厚労省のQ&A(問5)において、以下の3つを満たせば「期間を通算できる特例ルール」が示されています。
- 労働条件改善のための転職支援等を実施した結果であること
- 離職後「1ヶ月以内」に再就職していること
- 最初の就職から起算して就労継続期間が「6ヶ月」に達していること
最も注意すべきは「①事業所が転職支援を実施した結果であること」です。 「本人が勝手に別の会社に転職していた」という場合は通算できません。監査官は、「事業所が利用者の労働条件を改善するために、どのような相談・調整を行ったのか」が記された『支援記録』を厳しくチェックします。この記録がなければ特例は適用されず、全額返還の対象となります。
令和8年(2026年)6月改正!加算の厳格化による経営リスク

さらに、就労継続支援B型(およびA型)の事業主様にとって、経営計画を根底から覆すほど重大なルール変更が目前に迫っています。
これまで、この就労移行支援体制加算については、一部で本来の趣旨とは異なる使われ方(A型事業所と一般企業の間で意図的に離転職を繰り返し、その都度加算を取得するなど)が見受けられました。 こうした不適切な受給(いわゆる加算の使い回し)を防ぐため、【令和8年(2026年)6月】から以下の厳しい制限が追加されます。
ルール①:算定上限は「定員数」まで
加算の対象として1年間にカウント(算定)できる就職者数の上限が、「その事業所の定員数まで」に制限されます。定員20名の事業所から年間30名が就職・定着したとしても、加算に反映されるのは20名分までとなります。
ルール②:「過去3年間の算定実績者」は原則対象外
これが最も痛手となるルールです。「過去3年間で、すでに就労移行支援体制加算の算定対象となったことがある利用者」は、原則として算定不可となります(※本人の状況等により、市町村長が適当と認めた例外ケースを除く)。
つまり、「一度就職して加算を取った利用者が、すぐに辞めて戻ってきて、また別の会社に就職した」という場合、向こう3年間は「事業所の加算実績」としてはカウントできなくなるのです。
就労移行支援体制加算 モデルケース計算

- 就労継続支援B型(Ⅰ)従業者配置6:1
- 定員: 20人
- 前年度の就労後6ヶ月以上継続勤務した者: 2名
- 平均工賃月額が4万5千円以上4万8万円未満(A): 93単位(令和8年6月以降の基準)
- 地域区分: 10.34円(6級地)
【1人あたりの単価計算】 93単位 × 10.34円 = 961.62円 → 961円(※端数切り捨て)
【定着者数(2名)を掛けた1日あたりの加算額】 961円 × 2名 = 1,922円
【1ヶ月あたりの加算総額(15名の利用者が20日通所した場合)】 1,922円 × 15名 × 20日 = 576,600円/月
【1年間の加算総額】 就労移行支援体制加算は毎年4月から翌年3月までの1年間算定できますので、 576,600円 × 12ヶ月 = 6,919,200円/年
よくある質問(Q&A)

まとめ:その1人の書類と記録が、事業所の1年間の売上を決める

就労移行支援体制加算は、たった1人でも「6ヶ月定着」の実績を作ることができれば、翌年度の事業所全体の売上を大きく底上げしてくれる強力な加算です。
しかし、その裏には「6ヶ月の壁」「証明書類の義務」、そして「支援記録」という運営指導の罠が隠れています。 「多分続いているはず」「1ヶ月以内に転職したから大丈夫だろう」というどんぶり勘定が、数年後の実地指導で発覚した時の代償は計り知れませんので、しっかりと整備しましょう。




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