行政書士試験合格に必要な知識の中から皆さんの日常生活にかかわり合いのある民法についてご紹介していけたらと思います。行政書士は争いのある法律行為は行えませんが、様々な法律を駆使した権利義務に関する書類の作成や事実証明に関する書類の作成を行います。その中で民法とは一般私法であり、人間の社会生活における個人の財産関係や家族関係を規律するルールの役割があります。
今回ご紹介するのは権利移転型契約と呼ばれ、民法で規定されている贈与契約について説明します。贈与契約とはみなさんどの様な出来事を思い浮かべますか??贈与とはプレゼントすると言うことです。プレゼントされる事なんて普段はないと思いますが、祖父から子へ、親から子へと相続前に贈与することもあります。相続については今回は説明を省きますが、贈与契約と贈与についての税金の一般的な部分について説明していきたいと思います。なお、行政書士試験では税金部分は問題に出ませんのでご注意ください。
この記事は、法律に興味がある方、行政書士試験の合格を目指す方などに参考になる内容になっています。
贈与契約とは
贈与契約とは当事者の一方(贈与者)がある財産を無償で相手方(受贈者)に与える契約です。お互いに贈与する側と受け取る側の意思を必要とします。
書面によらない贈与
書面によらない贈与がされた場合は各当事者はその贈与契約を解除することが出来ます。もっとも、履行が終わった部分については解除することが出来ないとされています。履行の終わった部分とは、物の引渡しや不動産の登記を備えた時には履行が終わったと判断されます。
書面による贈与
書面による贈与が行われた場合は、各当事者で解除することは出来ません。贈与の意思が書面に記されることによって明確になっているからです。
贈与者の担保責任
贈与者は贈与の目的物である物・権利を贈与の目的として特定した時の状態で引渡し、又は移転することを約したものと推定され、原則として担保責任を負わないとされています。
負担付き贈与については、贈与者はその負担の限度において、売主と同じく担保の責任と負うことになります。
なお、担保責任とは贈与契約の目的物に契約不適合がある場合や移転した権利に契約不適合がある場合に贈与者が受贈者に対して負う責任をいいます。目的物の不適合の場合は、①追完請求権②代金減額請求権③損害賠償・解除権を行えます。
特殊贈与
①定期贈与
定期的な給付を目的とする贈与を言います。贈与者は受贈者の死亡によってその効力を失います。
②負担付贈与
贈与に際して受贈者も何らかの給付義務を負担することを言います。この負担付贈与はその性質に反しない限り、双務契約に関する規定が準用されます。そのため同時履行の抗弁・危険負担・解除の規定の適用があります。
③死因贈与
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与はあくまで贈与契約であって、単独行為である遺言による遺贈とは別にされています。実際は相続と類似した性質を有するので、死因贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます。
贈与税
上記贈与が行われた時に贈与税を計算し基礎控除等を差し引いて税金を納付する必要があります。贈与税は1月1日~12月31日に贈与された財産の合計額を元に計算します。
贈与税の計算
贈与財産として①贈与によって取得した財産(土地、建物、株式、預貯金など)②みなし贈与財産(生命保険、低額譲渡、借金免除)があります。この贈与価格から基礎控除110万円を引き、税率を掛けることになります。税率は一般贈与財産用と特定贈与財産用(祖父母や父母など)をかけ、さらに控除額を引くことで贈与税額が計算されます。
①課税価格-110万円×税率-控除額=贈与税額
一般贈与財産用
特例贈与財産用
特例
贈与税には特例があり、特定の贈与者へ特定の目的の贈与に関しては非課税の措置が行われています。
①配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合は、基礎控除の他に最高2000万円まで配偶者控除が出来ます。
②相続時精算課税制度
原則60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に、合計2500万円まで贈与税がかかりません。この制度を利用した場合、贈与者が亡くなったときの贈与税には相続財産にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算して計算されます。
(課税価格-2500万円)×20%=贈与税額
③教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度
2026年3月31日までの間に30歳未満の人が教育に充てる資金を直系尊属(父母や祖父母など)から贈与され、金融機関に預け入れ等した場合その一定額が非課税となります。1人につき上限1500万円(うち学校等以外への支払いは500万円が限度)
④結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度
2025年3月31日までの間に18歳以上50歳未満の人が、結婚や子育てにあてる資金を直系尊属(父母や祖父母など)から贈与され、金融機関に預け入れ等した場合その一定額が非課税となります。上限1000万円(うち結婚費用は300万円が限度)
贈与税の申告と納付
贈与税の1年間の合計が基礎控除110万円以下である場合は申告は不要ですが、特例を受ける場合は納税額が0円でも申告が必要です。翌年の2月1日~3月15日までに受贈者の住所地の所管税務署に提出する必要があります。金銭を一括納付しますが、一定の条件を満たしたときには5年以内の延納することが出来ます。
延納の条件①贈与税の納付額が10万円を超えている②金銭一括納付が難しい③申告期限までに延納申請書を提出④原則、担保を提供することで延納することが出来ます。
まとめ
今回は贈与契約と贈与契約を行った時の税金計算についてご紹介しました。贈与契約はただ単純にプレゼントするだけでなく、負担した後に贈与してもらったり、死亡前に贈与することで相続税の軽減をはかったりと様々あります。贈与税の特例は期限があり、国の施策として今後も特例による控除がされると可能性があるため、要確認が必要ですね。
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