障害福祉サービス事業所の廃止・休止・再開手続きとは?届出期限や必要書類を行政書士が解説

大阪・泉州地域を中心に、障害福祉サービス事業所の立ち上げや運営をサポートする「くまがい行政書士事務所」です。
くまがい行政書士事務所では、元地方公務員として障害福祉サービスに関する業務に携わった経験と、精神保健福祉士としての視点を活かし、事業所様の開業から運営まで伴走支援しています。
障害福祉サービス事業所を運営していると、
- 人員を確保できなくなった
- 経営上の理由から事業を終了したい
- 一時的に事業を止めたい
- 休止していた事業所を再開したい
- 多機能型事業所の一部サービスだけを廃止したい
といった状況が生じることがあります。
しかし、障害福祉サービス事業所は、事業者の判断だけで、突然サービスを停止できるものではありません。
廃止または休止をする場合は、原則として所定の期限までに指定権者へ届け出るとともに、利用者が必要なサービスを継続して受けられるよう、引継ぎや関係機関との連絡調整を行う必要があります。
この記事では、障害福祉サービス事業所の廃止・休止・再開手続きについて、届出期限や必要書類、手続きの流れ、注意点を分かりやすく解説します。
※この記事は2026年7月時点の制度および大阪府・大阪市の取扱いを参考にしています。提出方法や必要書類は指定権者によって異なるため、実際の手続きでは事業所所在地を管轄する指定権者へご確認ください。
✅この記事を読んでわかること
この記事では、次の内容について解説します。
- 廃止・休止・再開の違い
- 廃止・休止時に必要となる利用者の引継ぎ
- 再開時に確認される人員・運営体制
- 行政から指摘されやすい注意点
1.廃止・休止・再開の違い

まずは、「廃止」「休止」「再開」の違いを整理しておきましょう。
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 廃止 | 指定を受けている事業を終了すること |
| 休止 | 将来の再開を前提として、一時的に事業を停止すること |
| 再開 | 休止していた事業を再び開始すること |
| 辞退 | 障害者支援施設などが指定を終了する際に行う手続き |
廃止とは
廃止は、指定を受けている障害福祉サービス事業を終了する手続きです。
事業所を廃止すると、その指定に基づいてサービスを提供することはできなくなります。
その後、同じ法人が同じ場所で事業を再び始める場合でも、原則として新たな指定申請が必要です。大阪府の取扱いでも、廃止後に事業を再開するときは、新規指定申請が必要と案内されています。
なお、事業所の「廃止」と法人の「解散」は別の手続きです。
一つの事業所を廃止しても、法人が他の事業を継続する場合は、法人そのものを解散する必要はありません。
休止とは
休止は、事業を完全に終了するのではなく、将来の再開を前提に一時的にサービス提供を停止する手続きです。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- サービス管理責任者を確保できなくなった
- 必要な職員が急に退職した
- 建物の改修工事が必要になった
- 一時的に事業の継続が難しくなった
- 運営体制を立て直す必要がある
休止は、単に「しばらく営業しない」という手続きではありません。
休止届を提出する際には、休止の理由だけでなく、再開に向けてどのような取組を行うのかを説明する書類が必要になることがあります。
再開とは
再開は、休止していた障害福祉サービス事業を再び開始する手続きです。
再開するためには、原則として、人員基準・設備基準・運営基準を改めて満たしている必要があります。
休止前と職員、運営規程、事業所所在地、設備などが変わっている場合は、再開届だけでなく、変更届や別途の手続きが必要になることがあります。
2.廃止・休止・再開の届出期限はいつまで?

大阪府および大阪市では、基本的な届出期限は次のように案内されています。
| 手続き | 届出期限 |
|---|---|
| 廃止届 | 廃止日の1か月前まで |
| 休止届 | 休止日の1か月前まで |
| 再開届 | 再開後10日以内 |
| 指定辞退届 | 原則として辞退日の3か月前まで |
廃止・休止届は、予定日の1か月前までに提出する事前届出です。
例えば、7月31日をもって事業所を廃止する場合、大阪府所管の事業所では、原則として6月30日までに廃止届を提出します。
一方、再開届は再開後10日以内とされています。
ただし、届出期限が再開後であっても、人員基準を満たしているか、設備や運営体制に問題がないかを確認する必要があるため、実際には再開前に指定権者へ相談しておくことが重要です。大阪市でも、事前予約のうえ再開手続きを行うよう案内されています。
3.障害福祉サービス事業所を廃止する場合

廃止手続きの基本的な流れ
廃止を決めた場合は、一般的に次の順番で準備を進めます。
まず、最終のサービス提供日と正式な廃止日を決めます。
廃止届は原則として1か月前までに提出する必要があるため、届出期限から逆算してスケジュールを立てなければなりません。
廃止を決定する前後のできるだけ早い段階で、指定権者へ相談します。
特に、次のような場合は早めの確認が必要です。
- 多くの利用者が在籍している
- 他の受入れ先が見つかっていない
- 多機能型事業所の一部だけを廃止する
- 処遇改善加算を算定している
- 廃止後も別サービスを継続する
- 行政処分や運営指導への対応中である
利用者や家族に対して、廃止日、廃止理由、今後の支援について説明します。
一方的に廃止を通知するだけではなく、利用者の希望や状況を確認し、相談支援専門員、市町村、他のサービス事業所などと連携して引継ぎを進めます。
廃止後もサービスの利用を希望する方については、継続して必要な支援を受けられるよう、他事業所との連絡調整などを行います。
この引継ぎについては、利用者一覧表や引継ぎ状況報告書の提出を求める指定権者があります。
大阪府が案内している主な廃止届の提出書類は、次のとおりです。
- 廃止届出書
- 指定書の原本
- 利用者一覧表
- 各利用者の引継ぎ状況報告書
- 業務管理体制に関する変更届
- 指定権者が定める連絡票など
必要書類は指定権者やサービスの種類によって異なります。大阪市では、利用者の引継ぎ状況に加えて、最終月の個人ファイル、支援記録、実績記録票、国保連請求データなどの確認を行う取扱いが示されています。
4.障害福祉サービス事業所を休止する場合

休止が認められるのは一時的に事業を止める場合
休止は、事業継続の意思があり、一定期間後の再開を予定している場合に行う手続きです。
「いつ再開できるか分からない」「再開する予定がほとんどない」という場合は、休止ではなく廃止を検討すべき場合があります。
休止届で求められる主な書類
大阪府が案内している主な休止届の書類は、次のとおりです。
- 休止届出書
- 指定書の写し
- 利用者一覧表
- 各利用者の引継ぎ状況報告書
- 再開に向けた取組状況を記載した書類
- 指定権者が定める連絡票など
再開に向けた取組状況には、例えば次の内容を記載します。
- 職員の採用活動
- サービス管理責任者の確保状況
- 建物や設備の改修予定
- 再開予定時期
- 再開後の人員体制
- 利用者への案内方法
大阪府・大阪市の取扱いでは、休止期間は原則として6か月以内とされており、6か月以内の再開に向けた取組状況を提出することが求められています。地域によって取扱いが異なる可能性があるため、必ず所管の指定権者へ確認してください。
休止中はサービス提供や請求ができない
休止期間中は、その指定事業所として利用者へサービスを提供することはできません。当然ながら、休止期間中のサービス提供実績について、介護給付費や訓練等給付費を請求することもできません。一時的な職員不足が生じたからといって、届出をせず、実態としてサービス提供を停止した状態を長期間続けることは避けなければなりません。
5.休止していた事業所を再開する場合

再開前に人員・設備・運営体制を確認する
事業所を再開するためには、再び指定基準を満たした状態に戻す必要があります。
特に確認したいのは、次の項目です。
- 管理者を配置しているか
- サービス管理責任者を配置しているか
- 必要な直接支援職員を確保しているか
- 資格証や実務経験証明書がそろっているか
- 勤務形態一覧表が実際の勤務予定と一致しているか
- 設備や備品が使用できる状態か
- 運営規程が現在の体制と一致しているか
- 各種加算の算定要件を満たしているか
再開届の主な必要書類
大阪府・大阪市では、再開時の主な書類として、次のものが案内されています。
- 再開届出書
- 指定書の写し
- サービスごとの付表
- 組織体制図
- 従業者の勤務形態一覧表
- 新たに配置する職員の資格証
- 運営規程
- その他、休止理由に応じて指定権者が求める書類
再開時に職員や営業時間、定員、所在地、運営規程などが変わっている場合は、再開届とあわせて変更届が必要になることがあります。
再開日を決める前に行政へ相談する
再開届の提出期限が「再開後10日以内」だからといって、行政への相談をせずに事業を再開するのは避けた方がよいでしょう。
再開日に人員基準を満たしていなかった場合、基準違反や減算、報酬返還につながる可能性があります。
再開予定日が決まった段階で、勤務形態一覧表や資格証などを整理し、指定権者に必要な手続きを確認しておくことが重要です。
6.廃止・休止時に必要な利用者の引継ぎ

障害福祉サービス事業所を廃止または休止する場合、最も重要なのが利用者への対応です。
指定障害福祉サービス事業者には、廃止または休止後もサービスの利用を希望する方に対し、必要なサービスが継続的に提供されるよう、他事業者や関係機関との連絡調整などを行うことが求められています。
引継ぎで確認したい内容
利用者ごとに、次の内容を整理します。
- 廃止・休止後もサービス利用を希望するか
- 利用者・家族が希望する地域や事業所
- 相談支援専門員の有無
- 他事業所の空き状況
- 必要な支援内容
- 医療的ケアや行動障害などの特別な支援
- 送迎の必要性
- 新しい事業所の利用開始予定日
- 引継ぎ先が決まっていない場合の対応状況
「他の事業所を紹介しただけ」では不十分な場合がある
単に近隣事業所の電話番号を利用者へ渡すだけでは、十分な引継ぎとは評価されない可能性があります。
利用者や家族の意向を確認したうえで、相談支援専門員、市町村、他のサービス事業者などと連絡を取り、継続利用につながるよう調整した経過を記録しておくことが重要です。
利用者への継続的なサービス提供のための便宜を行わなかった場合、勧告や命令の対象となることがあり、勧告に従わない場合は指定取消し等につながる可能性も示されています。
7.廃止・休止時に忘れやすい手続き

廃止届や休止届を提出すれば、すべての手続きが終わるわけではありません。
①国保連への最終請求
廃止月のサービス提供実績について、請求漏れがないか確認します。返戻となった請求や過誤申立てが必要な請求が残っている場合は、廃止後も対応が必要になることがあります。
確認したい内容は次のとおりです。
- 最終月の利用実績
- サービス提供実績記録票
- 加算・減算の適用
- 利用者負担額
- 上限額管理
- 返戻や過誤の有無
- 未請求分の有無
②処遇改善加算の実績報告
処遇改善加算を算定している場合、事業を廃止した後も実績報告書の提出が必要です。
大阪市は、事業所を廃止した場合でも、最終の加算の支払いがあった月の翌々月末までに実績報告書を提出する必要があると案内しています。提出期限や提出先は指定権者によって異なるため、必ず確認しましょう。
③業務管理体制の変更届
事業所の廃止により、法人が運営する指定事業所数や事業所情報が変わる場合は、業務管理体制に関する変更届が必要になることがあります。
業務管理体制の届出先は、事業所が所在する都道府県や市町村の範囲によって異なります。大阪府の廃止手続きでも、業務管理体制変更届出書が提出書類として案内されています。
④職員に関する手続き
職員の退職や配置転換が発生する場合は、雇用契約や社会保険、雇用保険などの手続きも必要です。
これらは社会保険労務士などの専門分野となるため、早めに担当者へ相談しておきましょう。
⑤賃貸借契約や設備の処理
事業所が賃貸物件である場合は、解約予告期間を確認します。
廃止日の1か月前に行政へ届け出ても、賃貸借契約では3か月前や6か月前の解約通知が必要となっていることがあります。
送迎車両、パソコン、請求ソフト、電話、インターネット、複合機などの契約も整理が必要です。
⑥法人自体を解散する場合の手続き
すべての事業を終了し、法人自体も解散する場合は、廃止届とは別に法人の解散・清算手続きが必要です。
税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所などへの届出が必要になるため、司法書士、税理士、社会保険労務士などとの連携が必要になります。
8.廃止・休止・再開手続きでよくある間違い

①届出を出せば、すぐに事業を終了できると思っている
廃止届・休止届は、原則として予定日の1か月前までに提出します。「今日から営業をやめます」と届け出ても、適切な手続きとは認められない可能性があります。
②利用者への説明が遅い
届出期限だけを意識し、利用者や家族への説明が遅れるケースがあります。新しい事業所を探すためには時間が必要です。特に医療的ケア、強度行動障害、送迎などの支援が必要な方は、受入れ先が限られることがあります。
③休止すれば何年間でも指定を残せると思っている
休止期間の取扱いは指定権者によって異なります。
大阪府・大阪市では、原則として6か月以内の再開を前提とした取扱いが示されています。長期間の休止を予定している場合は、廃止を求められることがあります。
④廃止後に同じ指定番号で再開できると思っている
廃止すると、その指定に基づいて事業を再開することはできません。
再び事業を始める場合は、新規指定申請が必要になります。
⑤再開届だけを提出すればよいと思っている
再開時に職員、所在地、設備、営業時間、運営規程などが変わっている場合は、変更届や事前協議が必要になることがあります。
⑥処遇改善加算の実績報告を忘れる
事業所を廃止した後も、加算の実績報告や修正対応が残る場合があります。
法人や事業所の担当者が退職してしまうと、賃金台帳や加算額の確認が難しくなるため、廃止前に必要資料を整理しておくことが重要です。
⑦書類をすべて処分してしまう
廃止後であっても、運営記録や請求関係書類について保存が必要となる場合があります。
廃止したからといって、個別支援計画、サービス提供記録、請求書類などを直ちに廃棄しないよう注意しましょう。
よくある質問(Q&A)

まとめ

障害福祉サービス事業所を廃止・休止・再開する場合は、期限までに届出書を提出するだけではありません。
特に重要なのは、次の点です。
- 廃止・休止届は原則として予定日の1か月前までに提出する
- 廃止・休止後も利用者がサービスを継続できるよう引継ぎを行う
- 休止は将来の再開を前提とした手続きである
- 再開時には人員・設備・運営基準を満たしていることを確認する
- 処遇改善加算、国保連請求、業務管理体制などの手続きも確認する
- 提出書類や受付方法は指定権者によって異なる
廃止や休止の準備が遅れると、利用者や職員だけでなく、関係する相談支援事業所、市町村、他のサービス事業者にも大きな影響を与えます。
廃止や休止を検討し始めた段階で、早めに指定権者や専門家へ相談することが大切です。
障害福祉サービス事業所の廃止・休止・再開でお困りの方へ
障害福祉サービス事業所の廃止・休止では、届出書の作成だけでなく、利用者の引継ぎ、指定書の返却、業務管理体制の変更、処遇改善加算の実績報告など、さまざまな手続きが必要になります。
「廃止届をいつまでに提出すればよいか分からない」
「利用者の引継ぎ状況をどのようにまとめればよいか分からない」
「休止していた事業所を再開できるか確認してほしい」
このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
くまがい行政書士事務所では、元地方公務員として障害福祉サービスに関する業務に携わった経験と、精神保健福祉士としての視点を活かし、廃止・休止・再開届の作成から、指定権者への確認、変更届、処遇改善加算など、事業所の状況に応じたサポートを行っています。




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