【法定相続ってなぁに??】~行政書士試験合格者が解説~

民法

今回から行政書士試験の民法の知識に加え、実務で使えることを記事にしていこうと思います。当初よりこのブログはインプットした知識をアウトプットする場と考えていました。
今回行政書士試験に合格したため、行政書士としての実務を勉強し、その知識を記事に残していければと考えています。今月は行政書士試験の中でも出題の多い、相続について記事にしていきたいと思います。
今回からの記事は、行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今後とも宜しくお願いいたします。
ではさっそくですが、今回は相続における法定相続について説明していこうと思います。

法定相続

被相続人は遺言により、共同相続人の相続分を指定し、あるいはその指定を第三者に委託することが出来ます。その場合、共同相続人は原則として指定通りの割合で相続分を取得することになります。また遺言により民法で定められた相続人以外の者に財産を与える事もできます。
しかし、このような遺言がないとき、民法の規定に従って相続人及び相続分が決定されます。これを法定相続といいます。
法定相続のうち、相続人が1人しかいない場合は単独相続、相続人が複数ある場合を共同相続といいます。単独相続の場合は、その1人の相続人が遺産をすべて承継取得するため相続関係に問題は生じません。
しかし、共同相続の場合は、その間の関係が多少ややこしくなります。そこで①相続人は誰かを確定し、②各相続人の相続分はどれだけかと判断していかなければなりません。

相続財産の共有

共同相続の場合、遺産に属する個々の財産が現実に誰に属するかは、遺産分割の手続きを経て定めます。そのため遺産分割の手続きが終了するまでは、相続財産は、各共同相続人の共有に属することになります。つまり、遺産分割までの過渡的な状態として共同相続人は各自の相続分に応じて相続財産を共有することになるわけです。
物の共有所有については各共同相続人は自己の相続分に相当する持ち分の範囲で遺産分割前に遺産を処分することができ、また分割前の遺産の管理等については共有の規定に定めることにより処理されることになります。
例えば遺産についての全部の処分は変更行為として共同相続人全員の同意を必要とし、管理については各共同相続人の相続分の価格に従い、その過半数の同意を必要とするなどです。

さまざまな財産

①金銭(現金)
遺産分割が決定されるまでの間は相続開始時にある金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることは出来ません。
②普通預金・定期預金
共同相続人の準共有状態となります。預貯金の引き出しには共同相続人全員の合意が必要になりますが、葬儀代が必要になることから預貯金債権額の3分の1に各共同相続人の相続分を乗じた一定額(上限150万円)を各相続人が単独で引き出すことができます。
③不動産の賃料
遺産分割前であっても、各相続人がその相続分に応じて分割債権として取得します。

法定相続人

法定相続人は誰が相続人になるかを民法の規定により確定させることです。

①配偶者は常に相続人となります。(全部)

②次に相続人の子が相続人となります。子は配偶者と並び最優先で相続人となります。この場合、実子か養子かは問いません。非摘出子も相続人となります。(配偶者2分の1、子2分の1)
また子が相続の開始以前に死亡し、または相続の欠格事由に該当するとき、もしくは廃除によって相続権を失ったときはその物の子が(孫)が相続人となります。これを代襲相続といいます。

被相続人の直系尊属(両親、祖父母)は子に次いで第2順位の相続人となります(配偶者3分の2、直系尊属3分の1)

被相続人の兄弟姉妹は第三順位の相続人となります(配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1)
先順位の者がある場合は、後順位の者は相続人とならないため注意が必要です。
まとめると、被相続人に子がない場合は、配偶者と直系尊属が相続人となり、直系尊属もいない場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。

補足①代襲相続と再代襲相続
代襲相続とは、相続人となるべき者が相続開始時に相続権を失っていた場合に、その直系尊属がその相続分を相続する制度です。例えば、子の子と兄弟姉妹の子です。子の子は直系卑属に、兄弟姉妹の子は傍系卑属になります。
また、代襲者が子の子である場合、その子(子の子)はさらに代襲することが出来ます。これを再代襲相続といいます。これに対して兄弟姉妹の子の子は再代襲相続が出来ないので注意が必要です。
相続人が相続放棄をした場合には、代襲相続は生じないため注意が必要です。

補足②胎児
胎児には①相続②遺贈③不法行為に基づく損害賠償については、すでに生まれたものとしてみなされます。これは胎児の両親、祖父母等が生まれる前に亡くなり、兄弟姉妹には相続権が生じるが出生の時期が多少遅かっただけで相続権や損害賠償権がないのは兄弟姉妹に比べ不公平が生じるため、胎児の権利保護のため認められています。
つまり、胎児が出生したときは親族が亡くなった時に遡って相続権や損害賠償権が認められるため、他の相続人に対して遺産の再分配等を請求することが出来ます。

補足③非摘出子
認知とは嫡出でない子と父(又は母)との間に意思表示又は裁判所により親子関係を生じさせる制度をいいます。認知すると親子関係が成立するため戸籍上の身分を取得します。認知した子が相続人になることができます。

補足④養子縁組
養子縁組により縁組の当事者間で養親子関係が生じます。縁組の日から養親の摘出子の身分を取得することになるため、縁組の日以前に遡りません。
これは、相続の際に養子になる前の子と養子になった後の子で相続の対象が変わることになるため注意が必要です。
養子になる前に子がいる場合は、相続の対象になりません。しかし、養子になった後に子が出来た場合は血族関係があるため養親の相続対象になります。また、養子は実親との関係が継続するため、実親と養親の双方の相続人になります。

補足⑤同時死亡時の推定
災害、事故などにより相続人間に複数の死亡者が出た場合に、その死亡時期の先後が明らかにならないときは、それらの者は同時に死亡したものと推定されます。そうすると、代襲相続の要件に該当することになります。別々の場所で死亡した複数の者の死亡時期の先後が明らかでない場合にも適用されます。

まとめ

今回は法定相続について説明しました。相続の順位や相続分の計算が必要になり、代襲相続という概念もややこしくさせていますね。その他、子供に対する補足もいくつかあげましたので参考にしてください。次回は相続人の対象にならない場合と、相続の承認・放棄について説明します。

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