今回の記事も、相続にまつわる民法の知識について記事を書きたいと思います。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今後とも宜しくお願いいたします。
ではさっそくですが、今回は相続時における遺留と遺留分侵害額請求権について説明していこうと思います。相続は原則として自由ですが、相続人の遺産承継の期待を裏切り社会的にも不都合が生ずる結果にならないために被相続人にたいして遺産の一定割合については確保しなければなりません、その一定割合を遺留分といいます。今回はその遺留分と遺留分が侵害された場合の遺留分請求権について記事を書いていきます。
遺留分とは
生前に遺言でどのような財産処分をしようと基本的には自由です。しかし、これを無限に認めてしまうと相続人の遺産承認の期待を裏切る結果となってしまい、社会的にも不都合を生じることになります。そこで、被相続人に属する遺産の一定割合については、兄弟姉妹を除く一定の相続人のために確保されなければならないとされています、この遺産の一定割合のことを遺留分といいます。
遺留分を算定するための財産の価格に①直系尊属のみが相続人のときはその3分の1、②それ以外の場合にはその2分の1を乗じた額です。遺留分権利者が複数人いるときは、全体の遺留分の率に、それぞれの遺留分権利者の法定相続分の率を乗じたものがその者の遺留分となります。
言葉では難しいため実際に計算してみましょう。
相続人が配偶者Aと子B・C・Dであれば Aの遺留分は1/2×1/2=1/4となり、子のB・C・Dは各々1/2×1/2×1/3(子の人数)=1/12となります。
遺留分の算定について
遺留分の算定について詳しく説明します。
総体的遺留分
遺留分の算定するための財産の価額とは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額です。
まず遺贈された財産は、被相続人が相続開始時に有していた財産に含まれますから被相続人が全財産を遺贈したのであれば、その遺贈額のすべてが遺留分を算定するための財産の価額として算入されます。また、生前贈与も算入されます。
相続人以外の者に対する贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り遺留分を算定するための財産の価額に算入できます。一方相続人に対する贈与は、原則として相続開始前の10年間にされたものについて、婚姻もしくは養子養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与、特別受益に該当する価額に限り算入されます。
個別的遺留分
各相続人は、総体的遺留分のうえに、各自の法定相続分に応じた権利を有することになります。したがって個別的遺留分は総体的遺留分に相続人各人の法定相続分を乗じて算出します。
遺留分侵害額請求権
遺留分を侵害する贈与や遺贈も原則として無効ではありません。しかし、遺留分権利者は、受遺者または受贈者に対し遺留分侵害額に相当する金額の支払いを請求することができます。この権利を遺留分侵害額請求権といいます。遺留分侵害額の請求は必ずしも裁判上で請求する必要はなく、相手方に対する裁判外の意思表示による行使も可能です。一般的には内容証明郵便を相手方に送付することでも可能です。
受遺者または受贈者の負担の順序
受遺者または受贈者が複数ある場合には、それらの者がどのような順序・割合で侵害額債務を負担するかですが、①受遺者または受贈者が複数ある場合は受遺者が先に負担となる。②受遺者が複数または受贈者が複数ある場合に、その贈与が同時にされた場合は、その目的の価額の割合に応じて負担する。③は②以外で受贈者が複数あるときは、後の贈与から順次前の贈与に係る受贈者が負担すると定められています。
遺留分の消滅時効
遺留分侵害額請求権は遺留分権者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年で時効消滅します。また、相続の開始の時から10年を経過した時も消滅します。
遺留分の放棄
相続開始前に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可を受けなればなりません。家庭裁判所での許可があれば遺留分の放棄をすることが可能ですので、相続開始前に放棄することも出来ます。この点は相続の開始前に相続放棄が出来ないことと違いがありますので注意が必要です。共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません。つまり、共同相続人のうちの1人が遺留分を放棄しても、被相続人の処分し得る部分が増加するのであって、他の共同相続人の遺留分が増加するわけではありません。
まとめ
今回は相続について、遺言などで相続がもらえなかったとしても、遺留分が認められ、その侵害がされていれば遺留分額侵害請求権という制度が認められています。ただし、相続人のためにも侵害請求できる期間は知った時から1年であるため、注意が必要です。時効を過ぎれば請求出来なくなりますので、相続人も相続額を確定して安心できますね。
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